チームワークで組織の力を高めるには? 中堅社員に伝えたい仕事の原理原則
2023年3月14日更新
個人のスキルや能力がいくら優れていても、チームワークが取れていない状態では、組織での仕事で大きな力を発揮することはできません。メンバー全員が意思の疎通を図り、個々の責務を果たしながら全員で補い合うことによって、その組織は大きく発展していけるのです。リーダー候補である中堅社員に考えさせたい、チームで仕事をするための原理原則について解説します。
会社の仕事はチーム活動
会社・組織は基本的にチームで活動するものです。複数の人で1つの仕事をする場合はもちろん、日常の業務は個人で動いている場合でも、必ず社内の誰かと連携している部分があるはずです。複数の人たちが共に働き、連携している限り、それはチームとして仕事をしていることになります。
チーム活動においては、「チームの目的を達成する」ことが最優先です。そのためには、「全メンバーが目標や情報を共有する」ことが非常に重要になります。連携を円滑にするためには、コミュニケーションを充実させるのはもちろん、相互の「気配り」も大切です。仕事の意図を確実に「後工程」に伝えるとともに、感謝の心を伝え合うことで、チームの連携力を高めていきたいものです。
基礎的な活動ができるチームとは
基礎的な活動ができているチームには、次のような状態が形成されているはずです。
- メンバー同士で気心が知れていて、仲が良い
- 仕事上で必要なことは連絡し合っている
- お互いに仕事のことを相談し合っている
- 一人ひとりが自分の職務に責任を持って取り組んでいる
このようなチームをつくることは決して簡単ではありませんが、チームのあるべき姿としてイメージし、積極的にコミュニケーションを取るよう心がけていくことが大切です。
役割を超えた活動ができるチームとは
役割を超えた活動ができているチームには、次のような状態が形成されているはずです。
- 自分の役割以外の突発的な仕事を、みんなで引き受けている
- 担当外のことにも見て見ぬふりをしない
- 新しいことに対して、みんなが積極的に取り組んでいる
- 誰の役割でもない事柄を放っておかない
突発的・偶発的に「役割と役割との隙間の仕事」が発生することを想定して、そのようなときどう対処するのかを、あらかじめ話し合っておくことが大事です。「隙間の仕事」を押しつけ合うのではなく、交代制にするなど、やり方をよく相談しておきましょう。
創造的な活動ができるチームとは
厳しい競争に打ち勝って発展していくためには、チーム全体の実力を常に底上げしていかなければなりません。そのためには次のような取り組みが重要になります。
- それぞれの知識や経験を発信し、学び合っている
- 互いの情報交流によって、新たな課題をつくっている
- アイデアをぶつけ合い、新たなものを生み出している
- 改善のための意見交換に、みんなが積極的に参画している
チームワークを高めて協力し合うとともに、互いに学び合い、新しい価値を生み出していけるようになれば、そのチームは大きな力を発揮できるようになるでしょう。
事例:クレームにチームで対応する大切さ
例えば顧客から「注文した商品の納品が遅れています。いつ納品してもらえますか。担当のAさんの携帯電話がつながらないんです」という電話が会社に入り、それをBさんがとりました。Aさんはその日、別の取引先でプレゼンをしていて、しばらく電話に出られない状況でした。このときBさんは「自分の役割を超えて」次のように対処しました。
1)顧客に対して、状況を確認してすぐに折り返し連絡しますと伝えた。
2)出荷担当者に連絡をとり、いつその商品が届けられるかを確認したうえで、そのとき可能な対応を検討・指示した。
3)顧客に電話をして、何日の何時までに注文の商品を何個届けられるかを伝えるとともに、会社を代表してお詫びの言葉を述べた。
4)一連の状況をチームおよび社内で周知するとともに、Aさんにもできるだけ早く伝え、その後の顧客のフォローをしてもらった。
5)なぜ納品が遅れたのかについて、チームでしっかりと話し合い、同じことが今後起こらないように全員で業務の改善に努めた。
これは一例に過ぎませんが、何らかの状況に対してチームワークを発揮し、たとえ個々のメンバーの担当外のことであっても、適切かつ迅速に処理していくことが大切です。
私の仕事・他者の仕事・私たちの仕事
職場には、「私の仕事」と「他者の仕事」と「私たちの仕事」があります。一人ひとりが「私の仕事」に一生懸命に取り組むのがまず基本です。その一方で、誰の担当でもない「私たちの仕事」に対しては、どうしても意識が希薄になりがちです。特に忙しいときなど、「誰かがやってくれるだろう」と思って、ついやり過ごしてしまうこともあるでしょう。
しかし「私たちの仕事」とは「私たち全員の仕事」であり、メンバー全員が、チームの目的達成のために、そのときやるべきことをやらなければなりません。チームワークとは「協働」のことであり、「私たちの仕事」に全員がしっかりかかわっていくことで、高いチーム力が発揮できるのです。若手社員・中堅社員に、こうした意識を持ってもらうことでより強い組織をつくっていくことができるでしょう。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『[新版]中堅社員パワーアップコース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『[新版]中堅社員パワーアップコース』
自分自身の役割を正しく認識し、その役割を広げ、周囲と協働して問題解決する手法を学びます。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。