中堅社員の「管理力」を高めるには? 目標達成のための管理の方法論
2023年3月28日更新
中堅社員ともなると、日々の業務についてはかなりの経験を積んでいます。これに加えて、何らかの目標に向けて業務や組織をコントロールする管理力を身につけると、仕事力がさらにパワーアップします。ここでは、中堅社員研修の必須項目である管理能力の高め方について具体的な方法をご紹介します。
そもそも「管理」とは?
「管理」とは、「あるべき姿に近づけるすべての活動」だといえます。例えば会社の業務においては、販売管理、生産管理、財務管理、人事管理、在庫管理、品質管理など、さまざまな管理が行われています。これらはいずれも「それぞれの業務があるべき姿で行われているかどうかをチェックし、あるべき姿でないものをあるべき姿に近づけ、それを維持していく活動」だと定義づけられるでしょう。中堅社員ともなれば、それぞれの職場で何らかの「管理」を担う機会もあるはずであり、管理する力を高めていくことが大切です。
管理の対象となる「3つの目標領域」
「管理」を「あるべき姿に近づけるすべての活動」と定義するのであれば、「あるべき姿」とは「目標」といい換えてもいいでしょう。目標は、内容によって「業務目標」「改善・改革目標」「自己啓発目標」の3つに分けて考えることができます。
(1)業務目標
業務目標とは、現実の職務の中で何に重点をおき、どのくらいのレベルまで引き上げるかを明確にしたものです。例えば営業担当者が「現金回収率を50%にする」という目標を掲げたとします。つまり「現金回収率が50%に到達している状態」が「あるべき姿」であり、それに近づけるための方法を考え、実行し、目標を達成していくわけです。
(2)改善・改革目標
改善・改革目標とは、一つには、上記の「業務目標」をさらに発展させた目標を設定し、それを「あるべき姿」として、必要な改善・改革を行っていくという意味があります。もう一つは、「未来のあるべき姿」を想定し、それに向けて「新たに何をやっていけばいいか」を考え、その目標実現に向けて改革・改善に取り組んでいくという意味です。
(3)自己啓発目標
個人の能力について、「あるべき姿」としての目標を設定し、それに向けて取り組んでいくことも「自己を管理」していることになります。仕事にかかわる専門知識・関連知識を学んだり、資格を取得したりするなどして、将来に向けて能力を高めていきたいものです。
目標達成までのプロセスを管理する
設定した目標に確実に到達するためには、到達までのプロセスをしっかりと管理しなければなりません。ここで重要となるのが「逆算思考」です。到達目標を起点にして、何をどれだけやれば実現に至るかを「逆算」し、現在からゴールまでの行動計画を練るということです。
この行動計画に沿って日々実行し、時折進捗状況を確認します。その時点で行動計画通りに到達できそうな場合はそのまま進めていきます。もしも予定通りに到達するのが難しいと思われた場合、改めて到達目標から逆算して、行動計画を見直します。これを繰り返すことで、着実に目標に到達できるように日々の行動を管理していくわけです。
目標を行動計画に落とし込むポイント
行動計画を立てるうえで、次の6つのポイントを押さえておくことが大切です。
(1)時間がかかる仕事は「全体の流れ」を把握しておく
ある程度長い期間がかかる目標の場合、最初に全体の大まかなスケジュールを立ておきます。そしてそれに基づいて一日の間に何をやればいいのかを把握します。
(2)優先順位を明確にする
日数がかかる目標に取り組む際、一日の間に行う別の仕事も含めて優先順位を決めておきます。その際、自分にとっての優先順位だけでなく、職場における優先順位も勘案します。
(3)必要な資料・道具・材料を準備する
これから取り組む課題に必要な資料や道具、材料などは、始める前に用意しておくことが重要。その仕事を始めてから途中で資料を探したりすると、効率が下がってしまいます。
(4)上司の予定を把握する
途中で上司に相談をしたり、何かの決裁をもらったりしなければいけないことがある場合、上司の長期出張等、いつが不在なのかを把握し、遅滞なく進められるようにします。
(5)チームで行う場合、内容ごとに期日を細分化する
チームで進めるにあたっては、他のメンバーのスケジュールを把握したうえで、仕事の内容ごとに業務を分割し、個々の完了期日を明確にして、役割を割り振るようにします。
(6)負荷をコントロールする
仕事によって繁忙期や閑散期があることも多いものです。突発的なことが起きて、スケジュール通りに進まないこともあります。そのためあまり負荷をかけすぎず、前倒しで進められるときは進めておき、多少遅れてもあとで取り返せるようにコントロールしましょう。
計画に沿って行動することが管理の基本
6つのポイントを押さえて行動計画を立てたら、決めたことを計画通りに確実に進めていくことが重要です。「まだ時間的に余裕があるから後でやろう」といった態度が習慣になると、遅れがだんだん累積してしまい、やがて余裕がなくなって、突発的な状況に対応できなくなる危険性もあります。その結果、期日通りに終わらせることができなかったとしたら、それは「管理の失敗」といわざるを得ません。そうならないように、折々に柔軟に見直しを図りながらも、決めたことを日々着実に進めていくことが管理の基本といえます。
進捗管理には「PCDAサイクル」
仕事の進捗や成果を確実に把握するためには、よく知られている「PDCAサイクル」を回していくことが非常に有効です。しっかりとした計画(Plan)を立て、日々実行(Do)し、定期的に点検(Check)しながら、その都度改善(Action)し、目標達成に向けて進んでいくのです。
何か途中でうまくいかなかったことがあれば、「この方法のどこが悪かったのか」「あの段階で詳しい確認をすべきだったのではないか」「あのときなぜこれは必要ないと判断したのか」といった反省をし、プロセスを振り返るようにします。反省と振り返りによって、仕事の全体像への理解が深まり、それが経験値となって、管理力を高めていくことにつながるのです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『[新版]中堅社員パワーアップコース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『[新版]中堅社員パワーアップコース』
自分自身の役割を正しく認識し、その役割を広げ、周囲と協働して問題解決する手法を学びます。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。