なぜ、御社の若手社員は気がきかないのか?
2017年4月 6日更新
言われたことはするけれども、気がついて自ら取り組む、あるいは上司や周りに配慮して何かをすることはない。そんな若手社員にイライラする人が増えています。なぜ気がきかない社員が増えてきているのでしょうか?
「気がきかない若手社員」に困惑する上司が増えている
皆さんの周りに「気がきかない若手社員」が増えてきていませんか?
先日、訪問した先で管理職の方からお聞きしたお話です。部下の同行での外出時に、提案のための資料やサンプル商品などの荷物をたくさん持っていても、「私がお持ちしましょうか?」と声をかけてくることはありません。「これ持って」と言えば、「はい!」と元気よく返事をして持ってくれるようです。
言われたことはするものの、言われていないことはできない、気づかない人が増えているのです。上司の立場からすると、「ここまで指示しなくても、わかるだろう。一歩先を読んで気をきかせて動いてくれ」「空気を読んでくれ」と言いたいところです。
若手社員の育ってきた環境を知る
しかし、若手社員は、気をきかせる必要のない環境のなかで育っているということを、世代の違う側としては理解しておきたいところです。その上で、気がきかないのは当たり前という前提に立ち、一つひとつ丁寧に教えていくことが大切です。
なぜ、今の若手社員がなぜ気がきかないのか――そこには、大きく二つの環境要素があります。一つは、学校のサービス産業化、そして文明や科学技術の発展です。
まず、学校のサービス産業化が進んでいるといわれるなかで、学生はお客様扱いされてきました。学生が学校を休むと先生が資料を配ってくれます。登校時には先生が校門に立って、先に挨拶や声かけをしています。上司世代の人は、授業で板書内容をノートに書き写し、ラインマーカーで線を引いて、自分なりに工夫をして勉強をした経験があると思います。しかし今の学生のなかには、スマホで板書の写真を撮って済ませている人もいます。社会人になって仕事でメモをとるように言っても、何をメモしたらよいかがわからない人がいるのは、こうした彼らの学生時代に起因しているのです。
また、今は参考書のための参考書があり、テストの対策本も市販で売られています。すべて必要なものは周りに揃っています。子どもの数が少なくなっていることもあって、親も学校の送迎等、いろいろと気をつかってくれます。
こうして今の若手社員は学生時代、何かをしてもらうことに慣れ、それが当たり前という感覚で過ごしてきました。周りから気をつかってもらうことはあっても、自ら気をつかったり、考えたり、創意工夫をしたりという経験は希薄です。こうした背景を受けとめて、彼らと接していくことが大切でしょう。
「気をきかせる」視点はコミュニケーションから
文明や科学技術の発展ということで言いますと、何でも自動化されてきた、スイッチ一つ押すだけで日常生活が豊かに暮らせるようになったところにも、今の若手が気がきかなくなっている要因が潜んでいると思われます。
例をあげますと、一家に一台しかTVがなかった時代には、兄弟姉妹でチャンネルの譲り合いをしながら自分の見たい番組を観るなど、周りに配慮し気をきかせる環境が家庭のなかにもありました。ところが、今ではTVはスマホで観ることができて、しかも一人一台の時代。1つのものを譲ったり譲られたり、誰かと共有することがないため、他者に気をつかったり、相手の立場に立つという視点が育ちません。
さらに上司世代の人は、わからないことがあれば先輩や上司に聞いたり、図書館で調べたりしていましたが、今の若手社員はネット検索ですぐに答えや情報を得ます。自分で考える、本を読む、相談する等をしなくても、「キーワード」さえ入力すれば簡単に欲しい情報が得られてきたのです。
「気をきかせる」ための視点は、多くの人とコミュニケーションを十分に取るなかで培われるもの。ところが、今の若手世代は、人との関わりよりネットと関わる時間の方がはるかに長くなっているのです。このような環境の中で、だんだんと気がきかない、創意工夫をしない人が増えてきているのでしょう。
若者は気がきかないのが当たり前、という前提に立つ
そんな若者に、上司はどう接するべきでしょうか。結論から言いますと、これまでは家庭や学校で教わってきたこと、自然に身につけてきたことも、今は会社で一から教育しなければならなくなっているということです。気をきかせる、周りに配慮する、といったあたりまえのことも、その一つです。
ただ、今の若者は甘やかされていていいところがないのか、というと、そうではありません。彼らはとても素直なので、きちんと教えればできるようになるのです。
まずは、「若手社員が気がきかないのは当たり前」と考えてください。その上で彼らと向き合うと、接し方が変わります。次回から、具体的にどのように教育していくのかを解説していきます。
増谷淳子 (ますたに・じゅんこ)
株式会社ソフィアパートナーズ 代表取締役。日本航空(株)の客室乗務員として培ってきたおもてなしの心とコミュニケーション力を活かし、企業の人材教育企画、指導、育成に従事。2006年、株式会社ソフィアパートナーズ設立。「人間力教育」により「使命感」「気配り」「感謝の心」を育み、組織に貢献できる社員に導くことを使命とする。教育に関する問題解決のため、「ひと」のマインド&スキルアッププログラム提案、カスタマイズされた誠実な教育には定評があり、リピート依頼も多数。