新入社員に教えたいコミュニケーションの3つの基本姿勢
2017年11月27日更新
新入社員が職場で良好な人間関係を築くためには、コミュニケーションの3つの基本姿勢を身につけることが求められます。導入研修や職場実習の場でぜひ教えておきたい、その具体的な内容を、PHPゼミナール「新入社員研修」の講師がご紹介します。
最近の若者は本当にコミュニケーションが苦手なのか?
「最近の若者はコミュニケーションが苦手」という声をよくききますが、彼らが使っているSNSでのコミュニケーションを見ると、「苦手」とひとくくりにできないような気がします。ただ、学生のときには、気の合う同世代とのコミュニケーションがほとんどです。新入社員になると、世代も立場も違う多くの人とのコミュニケーションが求められます。ビジネスの世界で通用するコミュニケーションスキルをしっかりと身につけ、間違いや誤解のない情報の共有を行い、良好な人間関係を構築ができる人になってもらいたいと思います。
良好なコミュニケーションには場数が必要
ビジネスパーソンとしてある程度経験を積んだ方々向けのコミュニケーション研修のなかで、言葉遣い、特に敬語について確認したことがあります。すると、人とよく会う仕事をしている方々は敬語の遣い方をきちんと修得されていましたが、あまり人と会わない仕事の方々は、正しい敬語で話すのがなかなか難しい状態でした。
つまり、新入社員だから、若いから敬語が遣えないということではなく、日頃からどれくらい言葉遣いを意識しているか、話す機会があるかによって差がつくわけです。回数、場数を踏むことが上手くなるヒケツです。
そこで新入社員には、最初は間違うことがあるかもしれませんが、遣っているうちに上手くなると信じて、話す機会を与えるとよいでしょう。そのためにも、上司や先輩は、彼らに積極的に声をかけて話しやすい雰囲気をつくり、自らお手本にもなってもらいたいものです。
コミュニケーションは人間関係を良好にする
また、仕事は一人でするものではありません。チームとして多くの人々が関わってはじめて成果が上がります。仕事を上手く進めるためには良好な人間関係が必要であること、そしてチームワーク形成には仲間とのコミュニケーションが欠かせないということを、早い段階で教えてほしいと思います。上司や先輩が、次にあげる「3つの基本姿勢」を実践すると新入社員に伝わりやすくなります。
(1)相手の話を聴く
コミュニケーションにおいては、相手の話をしっかりと聴くことが重要です。相手の話に興味関心をもち、自分の意見や考えと違っていても、最後まで話を聴いて相手のことを受けとめます。それによって相手は「受けとめてくれている」と安心感を持ちます。話を聞くと、相手の人柄がわかり、コミュニケーションが取りやすくなります。それを繰り返すことで、信頼関係が構築できるのです。上司や先輩が手本をみせることで、新入社員に体得させてほしいものです。
(2)相手の立場に立って考える
組織には様々な人がいます。学生時代と違い、好き嫌いで人を選ぶことができません。相手の考えや立場を理解しようとすることで、人柄を理解できる可能性も高くなります。自分のことばかりを優先するのでなく、相手の立場を考え、相手を優先して考える姿勢が身につくと、良好な人間関係が築けるのです。
ですので、名前を呼んで相手を承認し、相手のことを理解して、相手に思いやりをもって対応することを、入社後、早い段階で実践できるように指導したいところです。
私はPHPゼミナール「新入社員研修」の一日の最後に、「皆さんは、今日一日、慣れない研修に参加して、ずっと座ってお疲れになったでしょ?」とよく尋ねます。多くの新入社員は「いえ、大丈夫です。勉強になりました」と言ってくれます。ところがまれに、「今日はありがとうございました。杉本さんこそ一日立って指導してくださって、お疲れになったと思います」と言ってくれる新入社員がいます。それこそ、まさに「相手の立場に立って考える」ということ――社会人として、そうした姿勢を一日も早く身につけてほしいと思います。
(3)感謝の気持ちを伝える
先述の通り、仕事は周りの方々との協力で成り立っています。今、仕事ができているのも、仕事の仲間や家族など、多くの人々が関わってくれたからと感謝の気持ちをもち、それを思うだけでなく、しっかり相手にわかるように伝えることが重要です。「ありがとう」の言葉が行き交い、感謝の気持ちを伝え合える組織では、新入社員も自然にそうした態度を身につけるものです。
新入社員の育成には上司や先輩との人間関係が大切
新入社員には、この「3つの基本姿勢」を身につけて、積極的に職場の多くの人と言葉を交わし、場数を踏んで、ビジネスに必要なコミュニケーションへの苦手意識を払拭してもらいたいと思います。世代が違う上司や先輩と、何を話していいか悩む新入社員も多いと聞きます。上司や先輩のほうで、たまには彼らに寄り添った話題を投げかけて、話しやすい関係をつくってあげるといいでしょう。そうしたやりとりから信頼関係ができれば、厳しく叱られる場面があっても、彼らは立ち直ることができます。上司や先輩との良好な人間関係が、仕事ができる新入社員を育てる第一歩なのです。
杉本美晴(すぎもと・みはる)
大手コンピューターシステム会社を経て独立。メーカー、商社、金融機関、全国の自治体や商工会議所、大学なども多数担当。各方面で女性創業塾の講師も務める。キャリアデザインをはじめ、ビジネススキル、コミュニケーション、CS、クレーム対応、モチベーション、エネルギー回復トレーニングなど、幅広いテーマの研修経験が豊富で指名が絶えない。PHPゼミナール講師。