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アサーションで若手社員のコミュニケーション力を育てる

2019年10月30日更新

アサーションで若手社員のコミュニケーション力を育てる

上司とのコミュニケーションに悩み、組織のなかで孤立して早期離職に至る若手社員は少なくありません。アサーションの考え方で、職場での人との関わり方を学んでもらいたいものです。

上司と若手社員との「コミュニケーションの壁」を取り払う

「今どきの若いヤツは......」という言葉に象徴されるように、いつの時代にも上司と部下である若手社員の間にはジェネレーションギャップが存在します。
挨拶をしない、言われたことしかやらない、つき合いを一切断る――「まるで宇宙人」という声も聞かれるほどに、上司からすれば若手社員は何を考えているのかわかりません。一方、若手社員からすれば、いつも厳しい表情で大きな声で話をしていたり、席でふんぞりかえっているように見える上司は、話しかけただけで叱られそうな気がして、わからないことがあってもうまく質問できません。そんなコミュニケーション不全は、決して低くない割合で起こっているのです。
上司には、若手社員に教えたいことや、教えなければいけないことがたくさんあります。ところが、若手社員が心を閉ざしているように見えると、うまく指導できないこともあるでしょう。それでは若手社員の成長が遅れてしまいます。そこで、まずは若手社員にコミュニケーションを阻む壁を乗り越えてもらえるような指導が必要となるのです。
本稿では、PHP通信ゼミナール『できる社員は相談上手! 人を動かす仕事術 ~アサーションの考え方を使って』のテキストを参考にしながら、若手社員のコミュニケーション向上に役立つアサーションの考え方や教育方法を紹介してまいります。

なぜ上司とのコミュニケーションが大切なのか

若手社員に成長してもらうためには、臆することなく上司に相談したり、うまく質問したりできるようになってもらうことが大切です。その理由について、同テキストでは次のように説明されています。

まだ経験が少ない若手社員は、先輩や上司に相談することで、他の人の知恵や経験を吸収させてもらうことができます。あなたが今うまくいかないことや、行き詰まっていることは、多くの場合、先輩も経験してきたことです。どうしてよいかわからないとことでも、先輩から「こうしたらうまくいった」「こう考えてみたら突破できた」など、自分では思いつかないアドバイスをたくさんもらえる可能性があります。

若手社員が上司や先輩からアドバイスをもらうためには、何よりも彼らに真剣に支援しようと思ってもらうことが必要です。そのためには、若手社員自身が熱意をもって仕事に取り組む姿勢を示すことが大切なのです。こうした考え方を彼らに教え、理解してもらえれば、彼らも日頃のコミュニケーションに前向きに取り組めるようになるでしょう。

アサーションの考え方を学んで相談上手な若手社員に

では「相談上手な人」とはどのような人なのでしょうか。同テキストでは次のように定義づけされています。

「自分の悩みや困っている問題について、自らも意見を述べて提案しつつ、他の人からヒントや支援を引き出し、解決に向けたコミュニケーションができる人」

上司と部下との間で、このようなコミュニケーションが日常的に行われるようになれば、部下が成長するだけでなく、上司の指導力の進歩にもつながります。
また、若手社員に相談上手な人になってもらうためには、アサーション(自他尊重のコミュニケーション)の考え方を学んでもらうことが役立ちます。

アサーションとは、辞書には「断言」「断定」と書かかれていますが、「アサーション・トレーニング」として使う場合は、「自分の欲求、意見、気持ち、価値観などを率直に、正直に、相手や状況に応じて適切に表現する」ことと定義されます。アサーションの観点で考えると、多くの人の言動は、「ノン・アサーティブ」「攻撃的」「アサーティブ」の三つのパターンにわけることができます。

「ノン・アサーティブ」な言動
受身的で、自己主張をせず、相手を優先する言動のこと。自分を抑え、何かわからないことがあっても、それは自分のせいだと思って、先輩や上司に相談するのを遠慮してしまう。

「攻撃的」な言動
自分のことを優先し、相手のことを軽視したり無視したりする言動のこと。常に自分が正しいと考えている。上司が「攻撃的」な人で、部下が「ノン・アサーティブ」な人だった場合、部下は素直に指示に従うが、いつしか「指示待ち社員」になる危険性がある。

「アサーティブ」な言動
自分のことも考え、相手のことも大切にする言動のこと。自分の困っていること、わからないことを自覚し、感じていることを恐れずに上司に伝えようとする。同時に相手の言い分を、イエスマンになって無条件に採り入れるのではなく、自他を尊重しながら、状況に応じて適切に対応する。

人によってこのようなタイプがあることがわかれば、若手社員の多くは自分がどのタイプなのかを自覚し、アサーティブな言動を目指そうとするでしょう。また、指導を通してそういう方向に導いていくことが大切です。その結果、若手社員にとってどちらかといえば不得手だったコミュニケーションが少しずつ改善していくと考えられます。

コミュニケーションの基本はまず「聴く」こと

コミュニケーションにおいて何よりも大切なのは、相手の話をよく「聴く」ことです。いくら自分が流暢に話していても、相手の話をきちんと聴いていなかったら、相手が表している「言外の情報・心情」などが正確につかめません。あまり空気が読めない若手社員がいたとしたら、その人たちに「聴く大切さ」を教えることも重要です。同テキストでは、しっかりと集中して相手の話を「聴く」行為を次のように説明しています。

「積極的傾聴」という言葉があるように、聴くことは積極的行動であって注意や集中を必要とし、エネルギーを要する行動です。話す相手の表情、姿勢、声のトーン、間といった非言語の要素がどうなっているのかにも注目します。対面のやりとりでは、非言語の情報を目からも耳からも受け取ることができて情報量が多く、それはすなわち、相手の言わんとしているところをつかむための手がかりが多いということです。

若手社員の世代では、普段からメールやSNSでのやり取りが多く、直接対面して相手の話を聴く機会が少なくなっていることも考えられます。そのため、人の話をしっかりと聴く能力を身につけさせることも、社員教育のポイントとして押さえておきたいものです。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『できる社員は相談上手! 人を動かす仕事術』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

通信教育「できる社員は相談上手!人を動かす仕事術」はこちら

森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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