人事・労務担当におすすめの資格12選! 資格の難易度や費用についても解説
2022年11月10日更新
人事・労務担当の方がキャリアアップするためには、資格の取得がおすすめです。今の業務に役立ち、年収アップにつながる資格を選ぶとよいでしょう。本記事ではキャリアアップや転職に有利な資格の選び方や、人事・労務担当におすすめの資格についてご紹介します。
キャリアアップに有利な人事の資格の選び方
キャリアアップのために人事系の資格を取得する際は、いくつか選ぶポイントがあります。今の仕事に役立つ資格かどうか、そして、自分の目的や目標にあった内容で、年収アップにつながるかどうかを見極めましょう。
ここでは、キャリアアップに有利な人事の資格の選び方をご紹介します。
今の業務内容に役立つ資格か
人事を担当する方が取得する資格を選ぶ際には、今の業務内容に役立つかどうかをまず考えてみるといいでしょう。担当業務に役立つ資格であれば、会社側から評価され、キャリアアップにつながります。担当できる仕事の幅も広がるでしょう。
ただし、資格の難易度が高すぎないかどうかの確認が必要です。難易度の高い資格は勉強するための準備期間が長期化し、モチベーションが低下する可能性があります。自分自身が資格取得のためにかけられる時間内で、しっかり勉強すれば取得できるものかどうかを見極めることも大切です。
自分の目的に合っているか
取得しようとする資格が、自分の目的に合っているかどうかも重要なポイントです。「キャリアアップや年収アップのため」「業務の理解を深めるため」など、資格を取得する自分自身の目的を明確にすることでモチベーションが高まり、最後までやり遂げることができます。
資格を取ることで何を実現したいか、目的を定めることから始めましょう。目的を決めたら、目標とする資格が選びやすくなります。
年収アップにつながるか
資格取得が昇給や昇格につながり、年収アップを実現できる可能性があるかどうかもチェックしましょう。会社によっては資格取得によって手当が支給される場合があります。社内規定や制度が設けられていないか確認してみましょう。職場に、すでに資格を取得している人がいるようであれば、取得後の状況などを聞いてみるのもおすすめです。
人事のキャリアアップ・転職に役立つ資格9選
人事資格1.キャリアコンサルタント【国家資格】
キャリアコンサルタントは、2016年4月より国家資格になりました。
キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計または職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことをいいます。
企業内のキャリアコンサルタントは、従業員のキャリア形成支援者として、従業員のキャリアプランを明確にし、そのために必要な知識・資格の習得や仕事の選択を行うことを支援する機会が増えています。
学科試験と実技試験の両方に合格し、キャリアコンサルタント名簿に登録することにより「キャリアコンサルタント」と認定されます。5年ごとに更新を行い、最新の知識・技能を身につける必要があります。
難易度:合格率約60%で難易度は低め
取得にかかる費用:学科試験8,900円・実技試験(論述試験・面接試験)29,900円
人事資格2.産業カウンセラー
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が主催する民間資格です。人間関係やストレスなどに悩む従業員のカウンセリングをはじめ、メンタルヘルス対策やキャリア開発の支援などを行います。メンタルヘルス対策に注力する企業が増えており、今後さらに需要が高まる資格といえるでしょう。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会の講座を修了する、あるいは大学・大学院研究科において専攻科目の単位を取得するなどで受験資格を得て、学科と実技試験を受けます。
難易度:合格率約60〜70%で難易度は低め
取得にかかる費用:学科試験10,800円・実技試験21,600円
人事資格3.人事総務検定
一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が主催する、人事や総務の仕事に必要な知識が身につく民間資格です。人事、労務管理、年金、法律関連の専門知識を総合的に身につけ、業務の幅を広げます。1〜3級まであり、3級は誰でも受験できます。3級は担当者レベル、2級は主任レベル、1級は課長レベルの内容です。2級と3級は試験のほか「特別認定講習」を修了することで取得することもできます。
難易度:合格率非公表で難易度は不明
取得にかかる費用:3級5,090円・2級7,640円・1級11,000円
人事資格4.メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルスマネジメント検定は、大阪商工会議所が発行する資格です。 働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指して、職場内での役割に応じて必要なメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得するものです。人事労務管理スタッフ、経営幹部を対象としたⅠ種(マスターコース)、管理監督者(管理職)を対象としたⅡ種(ラインケアコース)、一般社員を対象としたⅢ種(セルフケアコース)があります。
難易度:レベルが上がるほど難易度が高い。Ⅰ種は合格率が約20%
取得にかかる費用:Ⅰ種11,000円・Ⅱ種6,600円・Ⅲ種4,400円
人事資格5.ビジネスキャリア検定
中央職業能力開発協会(JAVADA)が主催する検定です。人事の仕事をするために必要な知識の習得と実務能力の評価ができる資格です。試験内容は、厚生労働省が定める職業能力評価基準に準拠しています。試験は8分野43の試験から、自分の職種に合わせて選択できます。
BASIC級、1〜3級の4つのレベルに分かれ、BASIC級は学生や求職者、入社して間もない人が対象です。1級は部長を目指す人、2級は課長・マネージャー相当職を目指す人、3級は係長・リーダー相当職を目指す人に向いています。
難易度:1級の難易度が高く、2級以下は低め
取得にかかる費用:BASIC級3,300円・3級6,200円・2級7,700円・1級11,000円
人事資格6.採用コンサルタント
人材採用の意義を明確にし、経営視点に立った人事・採用業務のあり方を学ぶコンサルタント資格です。体系的な知識を学ぶことで、市場に左右されない採用プロセスの構築と実践ができるようになります。
3カ月の通信講座にスクーリング、認定試験を加えた約4カ月のカリキュラムがあり、すべてのプログラムを修了して認定試験に合格した場合に資格取得できます。
難易度:合格率非公表で難易度は不明
取得にかかる費用:95,000円
人事資格7.MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
マイクロソフトのOffice製品について利用スキルを証明する資格です。マイクロソフトが公式に実施しています。人事の仕事ではWordやExcel、Power PointなどのOfficeを使用するため、キャリア形成に役立つでしょう。
マイクロソフトのOffice製品はバージョンごとに新しい機能が追加・改良されるため、MOSもバージョンごとに試験を実施しています。WordとExcelには一般レベルと上級レベルがあり、どのレベルからでも受験できます。
難易度:合格率非公表で難易度は不明
取得にかかる費用:1科目10,780円・12,980円
人事資格8.マーケティング検定
公益社団法人日本マーケティング協会主催のマーケティング能力を測定するための内閣府認定の検定試験です。マーケティングの理論を習得することを目的としており、基本理念やマーケティング戦略などの10領域をベースに、基本から応用までマーケティングへの理解度を図ります。都合の良い場所と時間を選んで、全国各地のテストセンターで受験することができます。
近年は、採用活動にもマーケティングの視点を取り入れることが求められるようになっているため、これからの人事の実務に役立つ資格の一つと言えるでしょう。1〜3級までのレベルがあり、3級にはeラーニングも用意されています。2級は3~4年のマーケティングの実務経験、1級は10年以上のマーケティングの実務経験のある人が想定されています。
難易度:合格率非公表で難易度は不明
取得にかかる費用:3級6,600 円・2級9,460円
人事資格9.外国人雇用管理主任者
外国人雇用についての専門知識を身につけ、外国人雇用に関するトータルなサポートができる人材育成を目的とした民間資格です。外国人雇用に関する法律や社会的背景といった基礎知識、在留資格・特定技能ビザに関する知識など、外国人雇用に関わる知識を習得できます。
外国人雇用管理主任者試験に合格して登録を受けた場合、外国人雇用センターが「外国人雇用管理主任者」に公認します。外国人雇用に関わるすべての業務に役立つため、外国人を雇用する企業の採用担当者におすすめの資格です。3年ごとに更新が必要です。
難易度:合格率非公表で難易度は不明
取得にかかる費用:8,500円
労務管理のスペシャリストになりたい方向けの資格3選
労務管理は従業員の労働環境を管理する業務です。勤怠管理や給与管理、福利厚生といった労働に関連することを管理し、健康やハラスメントなどの対策も行います。働き方改革などの取り組みで改善されてきたとはいえ、長時間労働などの問題は企業不祥事としてニュースで取り上げられることも多く、企業の安全配慮義務には厳しい世間の目が向けられていると言えるでしょう。
ここでは、労務管理のスペシャリストになるための資格を3つご紹介します。
労務資格1.社会保険労務士【国家資格】
社会保険労務士法に基づく国家資格です。社会保険労務士は労務に関する専門家であり、企業における採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題や年金の相談など、業務内容は広範囲にわたります。雇用や社会保険など、労務の分野では唯一の国家資格です。
特に健康保険や雇用保険、厚生年金などに関連する書類の作成や、労働基準監督署などの行政官庁へと提出する業務や労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成は、社労士しか行うことができない独占業務です。
受験資格は「学歴」「実務経験」「試験合格」の3つに分けられ、いずれかひとつを満たしている必要があります。申し込み時に、受験資格を有することを証明する「受験資格証明書」を提出しなければなりません。
社労士試験は、試験範囲も広く、合格するためには十分な時間をかけた勉強が必要になるでしょう。
難易度:合格率は平均6~7%程度で、難易度は高い
取得にかかる費用:15,000円
労務資格2.衛生管理者【国家資格】
労働安全衛生法に基づいた国家資格です。従業員の労働環境の管理や従業員の健康管理、労働災害の防止などを学びます。
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者があり、違いは有害業務を含む業種でも業務を行えるかどうかです。「有害業務」とは、有害な粉末・ガスが発生する工場など、適切な管理がなければ労働者の健康に重大な影響が出る環境で行う業務を指します。第一種衛生管理者は有害業務を含む全業種に対応できる資格で、第二種衛生管理者は有害業務が行われる職場を担当できません。
衛生管理者は下記のうち衛生に関する技術的事項の管理を行います。
・労働者の危険又は健康障害を防止するための措置に関すること
・労働者の安全又は衛生のための教育の実施に関すること
・健康診断の実施その他の健康の保持増進のための措置に関すること
・労働災害防止の原因の調査及び再発防止対策に関すること
受験資格が学歴や実務経験で3つの条件があり、いずれかを満たしている場合に受験できます。
労働安全衛生法により、常時50人以上の従業員がいる事業者は衛生管理者を1人以上置くことが義務付けられているため、ニーズが高いといえるでしょう。
難易度:合格率は平均49%程度で、難易度は普通
取得にかかる費用:6,800円
労務資格3.個人情報保護士
個人情報保護に関する専門知識を取得できる民間資格です。個人情報保護法、マイナンバー法、情報セキュリティにおいてエキスパートを目指す資格といえるでしょう。試験に合格すると、個人情報保護に関する高度な知識を持ち、個人情報の運用・管理を適切に行える専門家として認定されます。2005年4月に個人情報保護法が施行されたことを受け、同年10月に第1回試験が実施されました。
その後、法改正により、事業所の規模に関係なく、すべての企業が個人情報保護法の対象となり、さらに、マイナンバー制度の導入にともなって個人情報のセキュリティがより一層重要視されるようになったことから、企業では専門知識を持つ人材の需要が高まっています
難易度:合格率は平均37.%程度で、難易度はやや高め
取得にかかる費用:11,000円
まとめ:これからの時代重宝される人事の資格とは
人事に求められる役割は、時代とともに変わります。人材採用を例にとると、ひと昔前までは、候補者となる母集団形成は求人広告で行われるのが一般的でした。しかし現在では、自社の採用サイトやSNS、社員の紹介など多様化しています。そのため、応募してきた人を選考するという受け身の業務ではなく、応募の前段階にいる人に対し積極的に自社をアピールする戦略が必要になってきています。
また、現在在籍している社員や退職した社員にも自社の魅力を伝え、発信源となってもらうことも採用業務のひとつとなっています。
このような状況から、採用活動をマーケティングと捉える必要性が高まり、人事担当者でマーケティング検定などの資格を取得する人が増えているのです。
また、グローバル化が進展するなかで、会社の規模を問わず、海外に進出したり、海外との取引をすることが増えています。それにともない、外国人を雇用する機会が増加していることから、人事担当者が外国人雇用管理者の資格を取得するケースが増えています。同時に、TOEICなどの英語検定を検討する必要も出てきています。
さらに、ダイバーシティの重視により雇用形態や働き方が多様化していくなかで、キャリアに関する悩みを抱える社員が増える傾向があります。一人ひとりのキャリア形成を支援できるキャリアコンサルタントの資格も、これからの人事には必要とされるでしょう。
人事・労務の資格には、国家資格や民間資格など、さまざまな内容のものがあり、難易度もそれぞれ異なります。取得する資格を選ぶには、目的に合っているかどうか、今後、実務に活かせる内容かなどを検討するとよいでしょう。