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アルムナイとは? 退職者を再雇用するメリットや採用のポイントを紹介

2023年2月21日更新

アルムナイとは? 退職者を再雇用するメリットや採用のポイントを紹介

アルムナイとは退職者を再雇用する制度です。人材不足を解消する手法として注目されています。本記事ではアルムナイの概要や導入するメリット・デメリットについて説明するとともに、導入に際して注意すべき点や実際の導入事例を解説します。

INDEX

アルムナイとは? その意味と語源

アルムナイは、「卒業生」「同窓生」といった意味を持つ「alumnus」の複数形「alumni」を語源とする言葉です。企業の人事では会社から卒業した人という意味で使われ、定年退職者以外の退職者を再雇用する仕組みをアルムナイ採用と呼んでいます。

ここではアルムナイの意味や同じ退職者を雇用するジョブ・リターンとの違いを説明し、人事戦略として注目される理由も紹介します。

退職者の再雇用による採用手法

アルムナイ採用は、会社の卒業生である退職者を積極的に再雇用する採用手法で、多くの外資系企業で定着しています。
キャリアアップのための転職が一般的になった日本企業でも、アルムナイ採用は注目されています。自社の理念や文化を理解している人材は、採用のミスマッチという失敗が少なく、即戦力として活躍が期待できます。

ジョブ・リターンとの違い

アルムナイ採用と同じく自社を退職した人を再雇用する制度に、ジョブ・リターンがあります。アルムナイ採用は転職などの理由で退職した人を再雇用するものですが、ジョブ・リターンは結婚や出産、親の介護など、就業を続けるのが難しい事情で退職した人が対象です。
アルムナイ採用の対象となる人は退職後も別の仕事でキャリアを積んでいるケースが多く、再雇用により優秀な人材を獲得しやすいという特徴があります。

アルムナイ採用が人事戦略として注目される理由

近年、アルムナイ採用が人事戦略として注目されています。その理由は、深刻な人材不足によるものです。少子高齢化による人材不足に悩む企業は多く、かつて自社で働いていたアルムナイは自社の理念や文化をよく知っていて、職場環境や業務にすぐ馴染めるという好ましい条件が揃っています。

また、ひとつの会社で長く働く終身雇用の時代は終わりつつあり、キャリアアップのために転職を選ぶ人も増えています。人材が流動化するなかで、優秀な人材を確保するためには、アルムナイ採用が有効だと判断する会社は少なくありません。

アルムナイ採用を行う外資系企業の情報が増え、転職も一般的になったことで、一度退職した会社に再び入社することへの抵抗がない人も増えています。
このような転職者側の意識の変化も後押しし、アルムナイ採用は人材不足の課題を解決する方法として期待が高まっています。

アルムナイ採用を導入するメリット

アルムナイ採用を導入することで会社が得られるメリットは、主に以下の3つです。

  • 即戦力の確保
  • 採用コストの削減
  • 組織の活性化

それぞれ、詳しく紹介します。

即戦力を確保できる

アルムナイは自社の理念や文化を知っていて、社内や取引先との人脈もあります。再雇用後の配属部署や業務内容によっては業務を覚える期間も少なく、即戦力として働けるのがメリットです。
また、他社で働いていたことで視野が広がり、身につけたスキルでさらなる活躍が期待できます。他社での経験を経て客観的な視点で自社を見られる人材は、自社の成長にとって貴重な存在といえるでしょう。

採用コストを削減できる

アルムナイ採用は、採用コストを削減できるのもメリットです。退職者本人からの応募や社員からの推薦で採用するため、求人広告などの媒体を利用する必要がありません。業務に慣れるのも早く、人材育成のコストもかからないでしょう。
また、自社の内情に精通しているため、採用のミスマッチが起こるという心配もありません。

組織の活性化につながる

他社でのキャリアを積んだアルムナイは以前に比べて視野が広がり、異なる視点から自社を見られるようになっています。社内にいるだけではわからない課題を指摘することもできるでしょう。社内に新しい風を吹かせ、組織の活性化につながります。
企業の成長には、社員の多様性が欠かせません。多様性の中でも「コグニティブダイバーシティ(考え方やスキル特性の多様性)」がイノベーションと相関性が高いことが分かっています。
他社での仕事を経験したアルムナイを受け入れることは、社内の多様性を高め、イノベーティブな組織づくりに役立ちます。

加えて、アルムナイが活躍していれば、社員は「退職してもまた働きたいと思える会社だ」という印象を持ち、エンゲージメントが向上します。対外的にも良い印象を与え、企業ブランディングに役立つでしょう。

参考:PHP人材開発「ダイバーシティの推進~人的資本経営を実践する」

アルムナイ採用を導入するデメリット

アルムナイ採用の導入はメリットだけでなく、デメリットもあります。一度退職した社員にはマイナスなイメージを抱く社員も存在し、採用の条件次第では不満が出る可能性もあります。社内の雰囲気を悪くしないためにも、何らかの対策が必要です。

ここでは、アルムナイ採用を導入する際のデメリットについて解説します。

退職者へのマイナスイメージがある

日本でのアルムナイ採用はまだ一般的ではなく、理解が進んでいない側面があります。退職者に対し「一度は会社から去った人」というマイナスのイメージを抱く社員もいるでしょう。
そのような社員が多い職場にアルムナイを迎えても、良い職場環境になるとはいえません。アルムナイ採用のメリットを分かりやすく説明し、理解を求めるなどの対策が必要です。

社員の不満が出やすい

自社や他社でキャリアを積み、即戦力となるアルムナイは高待遇で迎えられるケースが多くなるでしょう。給与や待遇の決定などは慎重に行う必要があります。待遇の内容によっては「一度退職した社員が自分よりも待遇が良いのは納得できない」と考える社員が出てくるかもしれません。
社員の声に耳を傾け、バランスのとれた透明性のある基準を設けなければなりません。人によって待遇が異なるのではなく、担当する業務や成果による客観的な基準を設け、誰からも不公平と思われることのない仕組みをつくり、全社員に説明することが大切です。

アルムナイ採用の進め方

アルムナイ採用

アルムナイ採用の導入をスムーズに行うには、事前準備が大切です。以下の手順で進めていきましょう。

  • 再雇用の基準を設ける
  • 受け入れ体制を整える
  • 社内に周知する

再雇用の基準を設ける

アルムナイ採用を制度として導入するには、体制の整備と再雇用の基準設定が必要です。アルムナイの窓口となり、制度の運営を担う担当者と業務範囲を明確にしましょう。
また、退職者ならば誰でも受け入れるというのではなく、他のキャリアで培ってきた経験・スキルをどのように自社に貢献できるか等、再雇用の基準を明確にする必要があります。
アルムナイにとって魅力的な制度にするためには、退職前と同じ待遇にするのではなく、経験やスキルの向上を評価し、納得できる処遇にする体制づくりも必要です。

受け入れ体制を整備する

アルムナイを受け入れる現場の受け入れ体制も整備が必要です。一度退職した社員が戻ってくるということは、一緒に働いていた社員にとって複雑な心境になることもあります。面識のない社員は不安を感じるかもしれません。

受け入れる職場の社員とアルムナイが交流する場を設ける、再雇用するプロセスに現場の社員が関わるなど、アルムナイと社員がコミュニケーションがとれる機会を設けるとよいでしょう。
アルムナイ同士が交流できるネットワークを構築することも、アルムナイ採用制度をより良くしていくために有効です。

社内に周知する

アルムナイ採用を導入することを社内に周知し、理解を得ることも大切です。アルムナイ採用を導入する目的や背景、運用方針を明確にして、会社や社員、アルムナイにとってどのようにメリットがあるのかを伝えます。
社員が制度について疑問や不安、不満を持つことのないよう、制度の導入・運用についての質問に対応できる窓口も設けるのもよいでしょう。

アルムナイ採用の導入事例

アルムナイ採用に注目する企業は増えており、実際に運用に成功している会社も少なくありません。
ここでは、アルムナイ採用を導入して順調に運営しているヤフー、アクセンチュア、荏原製作所の事例を紹介します。

退職者のネットワークを構築:ヤフー株式会社

ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営するヤフー株式会社は、2017年2月に退職者の会「モトヤフ」を設立しています。ヤフーを退職した人同士、あるいは会社と退職者間のネットワークを活性化し、さまざまな交流を図ることを目指す組織です。

ヤフーの退職者にはポジティブな挑戦のために転職し、ヤフーではできない経験を重ねた人も少なくありません。アルムナイ活動は社員にも退職者のキャリアにとってもメリットが大きいと考えられ、モトヤフが設立されました。主にFacebookを通じて参加者を集め、会員は約1,500人以上になります。

ヤフー本社内にあるオープンスペース「LODGE」でモトヤフのイベントや講演会が開かれ、企業とアルムナイとの交流が盛んに行われています。

参考:ヤフーの卒業生のつながりをつくる「モトヤフ」| ヤフー株式会社

ネットワークに30万人以上が在籍:アクセンチュア

総合コンサルティング会社のアクセンチュアは、一度退職した社員を大切な家族・仲間と考え、アルムナイをつなぐポータル「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」を設けています。
ネットワークには日本法人だけでなく世界のアクセンチュアで30万人以上のアルムナイが在籍し、78ヵ国でアルムナイの活動プログラムを実施しています。

アクセンチュアへ復職し、実際にプロジェクト現場へ復帰しているアルムナイは多く、最初の勤務を超える活躍をしている社員もたくさんいます。

アルムナイ採用は欧米の企業では一般的で、アクセンチュアをはじめ外資系企業の日本法人では多くのアルムナイ制度を見ることができます。

参考:アルムナイ・ネットワーク | アクセンチュア

アルムナイコミュニティを創設:荏原製作所

ポンプメーカーの大手である荏原製作所は、2021年、人材確保の一環としてアルムナイコミュニティを立ち上げました。退職者とのネットワークを構築するためのコミュニティです。
採用から在籍中、退職後まで情報や人をつなぎ、グローバル市場で持続的に成長していくための多様な人材を確保することを目的としています。

コミュニティではアルムナイとの交流に特化したクラウド型SNSシステムを導入し、SNSを通じて、社内のニュースやキャリア採用の情報を提供してます。

荏原製作所のアルムナイ制度は、短期的に退職者の再雇用することだけが目的ではありません。中長期的に退職者と関係を継続し、会社の人材育成やビジネス連携など企業活動そのものを変化させることも視野に入れています。

また、将来的には、退職者とのネットワークを活かした協業や、オープンイノベーションの促進も考えています。

参考:アルムナイコミュニティを創設 | 荏原製作所

まとめ:退職者もアルムナイとして大切にしよう

会社の卒業生であるアルムナイは、会社の理念や文化、業務内容を理解しているため、即戦力として活躍が期待されます。そのうえ、別の会社や職種での経験やスキルをもとに、在職中よりもさらに力を発揮してくれます。一度他社を見ているからこそ色眼鏡をかけずに改善点の指摘もできるでしょう。
退職した社員も仲間として捉え、アルムナイ採用制度で縁をつないでいくことで、優秀な人材確保につなげましょう。

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