リスキリングとは? 定義やDX時代に求められる取り組み、事例を解説
2023年9月29日更新
リスキリング(Re-skilling)とは、経営環境の変化や技術革新によって、今後、新たに必要とされる能力・スキルを、従業員に再教育することです。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の不足を念頭に、現有人材のスキルセットを変えていく取り組みが企業の喫緊の課題とされています。ここでは、リスキリングの意味や重要視される背景、取り組むことで得られるメリットなどを紹介します。
INDEX
リスキリングとは? 何を学ぶのか
経済産業省は、デジタル時代の人材戦略として、リスキリングを以下のように定義しています。
「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
リスキリングという言葉が注目されるようになっきっかけは、2018年の世界経済フォーラムの年次総会・ダボス会議で『リスキリング革命(Reskilling Revolution)』が発表されたことです。ここでは、第四次産業革命(IoTやAI、ビッグデータを用いた技術革新)に対応した新たなスキルを獲得するための取り組みが議論されています。また国内でも、人生100年時代におけるスキル獲得が課題になっています。
リスキリングの定義・概念
経済産業省の定義にあるように、リスキリングは、単なる学び直しという意味ではなく、今後、デジタル技術を駆使して価値を創造し続けられるよう、従業員の能力やスキルを再開発するという意味で使われます。
人材開発のキーワードに、「リカレント教育」や「OJT(職場内教育訓練)」がありますが、これらとリスキリングの違いについてみてみましょう。
リカレント教育との違い
リカレント教育とは、学校教育を終えて社会に出たあとも、必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すことです。教育は職場を離れて受けるだけでなく、仕事を続けながら学ぶスタイルも含まれます。
学び直しという点ではリスキリングと同じですが、その違いは、リカレント教育では働く人が自らの意思で職場を離れ、あるいは仕事を続けながら学び直すこという意味合いが強いことです。これに対し、リスキリングは企業が主体となり、従業員に新しいスキルを身につけてもらうというニュアンスで使われる言葉です。
OJT(職場内教育訓練)との違い
OJT(On the Job Training)とは、実際の業務を行いながらスキル・知識を身につける人材育成の手法です。主に上司や先輩が、部下・後輩に、現場で仕事の進め方・実践的なスキルを教えます。主に新入社員や若手社員の育成で用いられる方法といえるでしょう。
一方、リスキリングは、これまでは企業内では誰も身につけていない新しい能力やスキルを身につけることであり、習得する内容は大きく異なります。
「学び直し」との違い
厳密には、リスキリングと「学び直し」は違うことに注意しましょう。ここまでご説明してきたとおり、リスキリングは、今の仕事、あるいは新しい仕事で価値提供が続けられるように、必要なスキルを習得することを表します。そのため、学び直しと同義とされることも少なくありません。
学び直しは、個人が自身の関心にもとづき、さまざまなことを学習することを指します。それに対してリスキリングは、今後も仕事で価値創出を続けるために必要なスキルを身につけるために「企業が個人に対して実施する再教育」です。リスキリングを学び直しと言い換えられることが多いですが、単なる学び直しとは使い分ける必要があります。
リスキリングが重要視される背景
近年、リスキリングが重要視される背景には、デジタル技術の普及やDXの進展があります。ビジネスのスタイルが大きく変容していくなかで、新しい業務に対応し、価値を創造し続けていくために、従業員に対するリスキリングの必要性が高まっているのです。とはいえ、日本の企業においては、リスキリングの取り組みがなかなか進まないというのが現状です。ここでは、リスキリングが重要視される背景や、取り組みが進まない理由について紹介します。
DX化時代の到来
リスキリングが注目される背景には、デジタル技術の進展によるDX時代の到来があります。デジタル技術を活用し、人々の生活をより良いものへと変革するDXによって、ビジネスのスタイルは大きく変容してきています。
このような流れのなかで、従来の業務がなくなっていき、これまでにない新たな業務が生まれるなど、組織内でも大きな変化が生まれています。新しい時代に対応できるスキルや知識の習得が求められるようになっているのです。
政府もリスキリング支援に注力しており、2022年10月には「労働者の訓練などを実施する企業への支援金の補助を引き上げて在職者のリスキリング支援を強化する」という新たな方針を示しています。
労働力人口の減少
少子高齢会によって労働力人口の減少が進むことも、リスキリングの取り組みが急がれる理由の1つです。とくに拡大を続けるAI(人工知能)市場における人材不足は、今後さらに加速すると考えられます。AI市場で必要となるのは、ビッグデータやAI、IoT ロボットなどの先端技術を活用できる先端IT人材です。
このような先端IT人材を確保するために、社内の人材育成を強化することが重要です。また、DX推進のためには、一部の社員だけでなく、全社員のIT・AIリテラシーを向上して企業全体のボトムアップを図らなくてはなりません。
自律的なキャリア形成に対する意識の高まり
個人が自身のキャリアに向き合い、自らキャリアを切り開く「キャリア・オーナーシップ」という考え方の広がりも、リスキリングと密接な関係にあります。キャリア・オーナーシップは、個人が生涯のキャリアをどのようなものにしたいか考え、実現のために主体的に行動することです。キャリア・オーナーシップが注目される背景には、人生100年時代といわれる長寿社会を迎え、従来に比べて働き方が流動的になってきていることが挙げられるでしょう。
従来の働き方は、「学ぶ→働く→引退する」の一方通行でした。今後は、働き続けるためにスキルを習得したり、働きながら学びを継続したりといったように、「学ぶ」と「働く」を行き来することがスタンダードになると考えられます。
前述のように学びが個人主体であると、リカレント教育や単なる学び直しとなります。しかし、勤務先の企業が主体となる学びも、個人の市場価値を高めるためのまたとない機会といえるでしょう。
日本におけるリスキリングの導入・浸透の課題
日本企業でのリスキリング導入・浸透における課題としては、「従業員が必要性を理解していない」「デジタル人材のみを対象とした取り組みと認識される」ことが挙げられるでしょう。
従業員が必要性を理解していない
リスキリングは企業が主体となって行うことが前提であるものの、従業員自身が学び直しを行う意義やメリットを感じることが不可欠です。一方的なやらされ感を抱いていては、失敗は避けられません。しかし、日々の業務に忙殺されて時間の確保が困難となり、「リスキリングにまで手が回らない」と考える従業員が多い現状があります。
また、学び直しの重要度はミドル層以上のほうが高いことが一般的ですが、キャリアを重ねるにつれて、新しく学ぶことへの抵抗感をより強く抱く傾向があります。
デジタル人材のみを対象とした取り組みと認識される
リスキリングが、デジタル人材のみを対象とした取り組みとして認識されてしまいがちなことも、導入に際しての課題です。企業が本格的なDXを目指せば、あらゆる場面において仕事への取り組み方や職務が変化します。当然、デジタル人材だけでなく、すべての従業員が新しい仕事のやり方に習熟したり、新たな職務に必要なスキルを獲得したりすることが不可欠となるでしょう。
管理職にはDX推進のためのリスキリングが不要という考え方も、誤りといえます。デジタルの知識を持たない管理職が、部下や他部署とコミュニケーションを図ることは困難になると考えられるためです。
企業がリスキリングに取り組む4つのメリット
企業がリスキリングに取り組むことで、人材不足の解消や業務効率のアップなど、多くのメリットが得られます。また、従業員に学びの機会を提供することで、エンゲージメントの向上にも期待できるでしょう。新しいアイデアの創出といったメリットもあります。
ここでは、企業がリスキリングに取り組む4つのメリットをご紹介します。
メリット1.人材不足を解消できる
企業のデジタル化が進行する一方で、デジタル技術に対応できる人材は不足する傾向にあります。今後はIT関連部署のみならず、すべての部署でDXへの対応が必要になることもあるでしょう。既存従業員を対象にリスキリングを実施し、必要なスキルを身につけてもらえば、不足する人材を外部から補うことなくDXへの対応ができます。
メリット2.業務効率が向上する
リスキリングによりデジタルスキルを持つ人材を育成することで、企業は新たな技術を導入できるようになります。デジタル技術の導入により業務フローが改善され、業務を効率化できるのがメリットです。情報管理方法が改善し、情報共有がスムーズになれば、業務の効率化によって生産性の向上も期待できます。
また、デジタル技術の導入により、これまで人が行っていた作業の自動化を図ることができます。人材を、より付加価値の高い業務へとシフトできるのも大きなメリットです。
メリット3.社員のエンゲージメントが高まる
リスキリングでスキルアップした社員は、これまでとは違った新しい視点や考え方で業務に取り組めます。自らのスキルを活かしてより高度な業務に従事することで、成長を実感することができ、仕事へのモチベーションも高まります。
成長の機会を与えてくれた企業に対し貢献したいという気持ちが強くなれば、エンゲージメントの向上にもつながります。
メリット4.新しいアイデアが生まれやすくなる
従業員が新たな能力やスキルを獲得することで、新たなアイデアが生まれやすくなるのも大きなメリットです。
変化の激しい時代に対応していくためには、新しいアイデアの創出が不可欠であり、新規事業の展開や事業拡大に貢献します。リスキリングは企業のイノベーションを促し、成長を加速させることができるでしょう。
企業がリスキリングに取り組む際の注意点
企業がリスキリングに取り組む際は、時間とコストがかかることや、スキル取得によって従業員による転職リスクが生じる可能性があることなどに注意しましょう。それぞれの注意点について解説します。
時間とコストがかかる
リスキリングは、すぐに結果が出る取り組みではありません。企業は習得を目指すスキルやアウトソーシング先の選定に、時間を割く必要があります。トレーニングや教育プログラムの利用、資格取得費用の補助にかかる一定の費用を、予算化しておくことも求められます。
対象となる従業員も、トレーニングや教育プログラムを受ける時間を確保しなければなりません。リスキリングは就業時間内に行うことが基本のため、一時的な生産性の低下も想定しておくことが求められるでしょう。
このように時間とコストをかけて実施したとしても、目に見える成果を実感するまでには時間を要するのが実態です。さらに、ビジネス環境が予想以上に大きく変化する場合もあります。学び直しによって新たなスキルを習得しても、ビジネスに貢献しない可能性が少なからずあることを、考慮しておく必要があります。
スキル取得による転職リスクが生じる
従業員が新しいスキルを習得することで、転職リスクが生じる点にも注意が必要です。新たなスキルや知識を得て可能性が広がった従業員は、より多くの収入を得られる、あるいは自身の望む働き方が叶うような企業への転職を検討する可能性があります。
このときに、従業員が現状の処遇や評価制度、働き方などに不満を持っていると、人材の流出リスクが高まるでしょう。待遇の見直しや技術職への転換などの制度を用意するなど、引き続き社内で活躍し続けてもらえるような仕組みの構築が重要です。
企業がリスキリングを推進するためのポイント
リスキリングを推進するために押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
●取り組みやすいように環境を整える
●継続的に取り組める仕組み・制度を用意する
●社員の自発性を尊重する
取り組みやすいように環境を整える
リスキリングの取り組みで成果を生み出すには、対象となる従業員が取り組みやすいように環境を整えることが不可欠です。まず、従業員自身が学ぶ意味やメリットを十分に理解する必要があります。当事者である従業員と、必要性の共有を行うことは欠かせません。
具体的には、経営層から直接、企業の将来像やリスキリングの必要性を発信してもらう方法が効果的です。トップダウンの発信は1度だけで終わらせず、何度も繰り返し行うことがポイントです。これにより、当事者の従業員だけでなく周囲からの理解も得られやすくなるでしょう。
リスキリングを実施する際は、学び直しに対する周囲の理解も含め、従業員時間内に取り組むための環境整備をセットで行いましょう。
継続的に取り組める仕組み・制度を用意する
従業員が日々の業務を行いながら学び続けることは、簡単なことではありません。意欲的にリスキリングに取り組むための仕組みや制度を用意することもポイントです。たとえば、努力して学んだことが何らかの形で反映されるような、評価・インセンティブ制度の導入などがそれにあたります。
また、1人で黙々と学習するよりも、誰かと一緒に学べたり、情報交換ができたりする方が、継続性が期待できます。そのための社内コミュニティを設置することも一案です。
社員の自発性を尊重する
新しいことを学ぶ際には、ストレスや負荷を感じるものです。対象者をはじめから全員にしたり、企業が一方的に選抜したりすると、うまくいかない可能性が高くなります。導入してしばらくは挙手制にして、前向きに取り組める姿勢を持つ少数の従業員を対象に小規模でスタートすることがおすすめです。
リスキリングが評価や昇給などに反映されることが社内に浸透していけば、ほかの従業員にも「学び直しをしたい」という自発的な気持ちが芽生えるでしょう。その結果、おのずとリスキリングの取り組みが広がっていくと考えられます。
企業のリスキリングの取り組み事例
リスキリングは欧米諸国で積極的に推進されています。先駆者であるアメリカ企業「AT&A」では、2008年の時点ですでに 「25万人の従業員のうち、未来の事業に必要なスキルを持つ人は半数に過ぎずない」という事実を把握していました。同社は 2013年に「ワークフォース2020」というリスキリングのイニシアティブをスタートし、2020年までに10億ドルをかけて10万人のリスキリングを実施しています。
日本でも積極的にリスキリングに取り組んでいる企業があります。事例をご紹介しましょう。
企業事例│丸紅
総合商社の丸紅株式会社では、2021年2月にDX戦略を公表し、デジタル人財基盤とIT 基盤を構築して成長戦略を実行するという目標を掲げています。デジタル人財基盤については、2023年までに200人のデジタル人財を育成するという具体的な目標を掲げ「丸紅デジタルチャレンジ(デジチャレ)」を実施しています。
このデジチャレでは、業務で直面する課題に関するテーマで参加者を募集し、参加者はビジネスに直結するスキルの獲得を目指します。
2020年度は10月末~3月の約5ヵ月間にわたって開催され、約70人の参加者がテーマを選んで取り組みました。メンター制度を使って参加者が途中でついていけなくならないような仕組みも導入。最終的に成果が高かった人を選び表彰しています。
企業事例│富士通
総合エレクトロニクスメーカーの富士通株式会社では、「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱し、リスキリングは重要課題と宣言しました。
その一環として、国内グループの全営業職約8,000人を対象にスキルアップ・スキルチェンジ研修や保有スキルの見える化を実施しています。従来の業種別の営業職を、業種の枠を越え新たなビジネスの創出を担うビジネスプロデューサーに変革するためです。
今後は顧客との接点となるビジネスプロデューサーが中心となり、企業のDX化を加速させていくとしています。
参照元:富士通「DX企業への変革を加速するための人材施策について」
企業事例|日立製作所
日立製作所は2019年4月にグループ内の3つの研修機関を統合し、デジタル人材を育成する新会社「日立アカデミー」を設立しました。国内グループ企業の全社員を対象に、DXの基礎教育を実施しています。
企業そのものがDXの方向へ大きく舵を切るためには、特定の部門や職種だけでなく、全従業員がDXを自分事として捉え、自らの業務に適用していくことが重要になっており、日立アカデミーでは、そのための人財育成に注力しています。中でも特徴と言えるのは、利活用側の観点を大事にした実効性の高い学習を目指している点、そして、リテラシー研修の対象をグループの全従業員とするなど、規模の大きいDX教育を進めている点であるといえるでしょう。
企業事例|三井住友フィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループでは、2021年からグループ5万人以上の全従業員を対象とした「デジタル変革プログラム」をスタートしました。「なぜデジタルを学ぶ必要があるのか?」というマインドにフォーカスしながら、システムを「使う人」も対象としているのが、このプログラムの特徴です。
参照元:SMBCグループ「お客さまと共にDXを加速させていく。SMBCグループ全従業員対象のデジタル変革プログラム「デジタルユニバーシティ」が目指すもの」
企業事例|住友生命
住友生命保険相互会社は、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」に貢献するサービスの提供にあたり、新しいビジネスモデルを構築できるDX企画・推進人財の育成を行っています。2019年から、顧客提供価値を高めるビジネス発想力を持つ人財の育成プログラム(Vitality DX塾(以下「DX 塾」))を実施し、これまで社内外約700人の人財に提供してきました。
2023年2月にはDX塾の受講者が、株式会社Protosure Japanと株式会社FINOLABが共催するハッカソンに参加し、新サービス・新保険を開発・提案して「優秀賞」を受賞しています。ハッカソンとは、一般消費者向けまたは事業者向けのサービスと、その価値を高める保険商品の組み合わせを設計・開発し、試作品を発表するイベントのことです。
参照元:住友生命「サービス埋込型保険ハッカソンで優秀賞を受賞」
リスキリングの取り組み 具体的な5つの手順
リスキリングの取り組みを成功させるための手順をご紹介します。
1.人材育成の課題や必要スキルの洗い出しを行う
2.リスキリングの目的と目標を定める
3.教育プログラム・コンテンツを検討する
4.学習環境を整える
5.スキル・知識を活用できる環境を整える
1.人材育成の課題や必要スキルの洗い出しを行う
リスキリングの取り組みでは、まず現在の人材育成における課題や経営戦略に必要な人材・スキルを明確にする必要があります。
課題の洗い出しには、従業員の現在のスキルを見える化するなど、現状把握の取り組みが不可欠です。今後の事業展開やDX戦略に必要な人材、スキルが不足している場合、リスキリングの対象になります。
2.リスキリングの目的と目標を定める
リスキリングの効果や進捗状況を確認するため、目的や目標を設定しましょう。目的や目標は、従業員に伝えることも大切です。リスキリングを行う目的や背景について理解が不足する場合、ただ会社の指示に従う受け身の状態になって効果が発揮できない可能性があります。
目的や目標を従業員と共有し、自主的な学習を促す体制を整えましょう。リスキリングは、既存の業務を行いながら並行して新たなスキルを学ぶことになり、従業員には負担になることもあります。メリットになるということもきちんと説明し、自らのキャリア形成のために取り組めるよう働きかけることが大切です。
3.教育プログラム・コンテンツを検討する
リスキリングの目的と目標が決まったら、具体的なプログラムやコンテンツの検討に入ります。学習方法としては社内研修やオンライン講座、社会人大学など多岐にわたります。
プログラムや教材のすべてを、自社で開発する必要はありません。リスキリングの対象となるスキルは専門性が高いものが多く、デジタル技術に強い企業でないと内製は難しいのが実情です。コストと手間の負担のバランスを考慮しながら、アウトソーシングのサービスも上手に活用することをおすすめします。
また、はじめから量が多すぎたり難易度が高すぎたりすると、受講者がついていけなくなる可能性があります。最初から欲張らずに、自社の従業員に合ったプログラムを選択するとよいでしょう。
4.学習環境を整える
就業時間内にリスキリングを終えることが可能となるように、学習環境を整えます。業務への負担が大きくならないように、少し余裕を持ったスケジュールを組み、学習時間を設定しましょう。
また、就業の合間に学習ができる環境を構築することもポイントです。たとえば、業務で使うアプリケーションから学習プログラムに簡単に切り替えができるシステムを利用することで、業務と学習を両立しやすくなります。
5.習得した能力・スキルを活用できる環境を整備する
身につけた能力やスキルを活用できる環境を整備することも大切です。実践のなかから足りないスキルや知識を確認し、さらにリスキリングで補強するというプロセスは重要であり、実践の機会を設ける必要性は高いでしょう。
また、結果に対するフィードバックの機会を設け、リスキリングの効果を検証することも欠かせません。検証をもとにコンテンツの見直しを行い、アンケートなどで従業員の意見を集めて改善に役立てるとよいでしょう。
リスキリングで学ぶ具体的な知識やスキル
リスキリングで学ぶ、主な知識やスキルは以下のとおりです。
●DXリテラシー
●デジタルマーケティングスキル
●データ分析スキル
●プログラミングスキル
●外国語スキル
DXリテラシー
IT全般の知識やデータサイエンス、AIなどの3分野に関する、いわゆるDXリテラシーの知識を、リスキリングのテーマに掲げる企業は少なくありません。経営戦略を実現するため、DXに必要な技術や活用事例などを理解したDX人材の育成を、リスキリングとして取り組むことは有効です。
デジタルマーケティングスキル
デジタルマーケティングスキルも、リスキリングで学ぶことの多いスキルといえるでしょう。デジタルマーケティングとは、インターネットやAIなどのデジタルテクノロジーや、デジタル化されたデータを用いたマーケティング手法のことで、オンラインの需要の高まりととも必要性が高まっています。インターネットを利用した購買行動の分析や、自社商品やサービスの訴求などを学びます。
データ分析スキル
リスキリングで学ぶ領域として代表的なものとして、データ分析スキルも挙げられるでしょう。ビッグデータを分析することで、市場動向の把握や経営戦略の立案などが可能になります。AI技術の普及が進むなかで、データを取り扱える人材を育成できれば、企業の経営戦略に有効といえるでしょう。
プログラミングスキル
プログラミングスキルを学び、プログラミング言語を理解しコードが書けるようになれば、サービスの開発やシステム構築が可能になります。社内にプログラミングに長けた人材を確保することで、システム開発の内製化や事務処理やルーティーンワークなどの自動化がしやすくなります。
外国語スキル
外国語も、リスキリングで人気のある分野の1つです。グローバル化が進む中では、英語や中国語のスキルの需要はますます高まっています。とくに今後、世界進出を視野に入れる企業では、従業員の外国語スキルは必須といえます。
まとめ:リスキリング実施のポイント
企業のDXへの取り組みが進むなかで、新たなスキルや知識を学ぶリスキリングに注目が集まっています。人材不足の解消や業務の効率化、アイデアの創出など、リスキリングには多くのメリットがあります。
リスキリングを実施するうえでは、社員が継続して取り組めるようにする仕組みづくりが重要です。リスキリングが企業の事業戦略にとって不可欠であることを理解してもらい、協力体制を整えましょう。
定期的なフィードバックやスキル習得に対するインセンティブを用意するなど、学習へのモチベーションを維持するための施策も大切です。リスキリングの認知度を高めるために先駆的な成功事例を紹介したり、最新情報を発信したりといった取り組みも効果があるでしょう。
外部のリソースを有効に活用することも、成功するためのポイントの一つです。