OJT、Off-JT、自己啓発―人材育成の3大手法
2013年8月 9日更新
人材育成の手法は、大きく分けて、OJT、Off-JT、自己啓発の3つ。求める人物像と求める能力が明確になり、現状の個人能力の実態が明らかになれば、そのギャップを埋めるための教育が必要になる。
1.OJT(On the Job Trainingの略/現場における教育、指導)
2.Off-JT(Off the Job Trainingの略/業務外の教育)
3.SD(Self Developmentの略/自己啓発)
人材育成におけるウェイト(時間的)は、OJT が80~90%程度、自己啓発は10%から多くて20%程度、Off-JT(集合研修)はせいぜい1%にすぎないと言われている。
OJTとは
OJTとは、On the Job Trainingの略であり、現場における教育、指導のこと。OJTに多くの時間がかけられるのは、現場における指導の利点が多いからである。
ただし、現場における指導であるだけに、上司や先輩からのアプローチによって成果も大きく違ってくる。
OJT、現場における指導の利点
1.その場に合った指導ができる。
2.部下・後輩一人ひとりの状況に合った最も適切な指導ができる。
3.仕事を中断することがない。
4.必要に応じていつでも指導ができ、特別な費用がかからない。
5.仕事の配分や命令の与え方など適切な方向に修正していくことができる。
6.指導したことをすぐに仕事に活かすことができ、またよく身につく。
7.上司・メンターと部下・後輩間のコミュニケーションを円滑にし、よい人間関係が維持できる。
8.部下・後輩が相互に刺激し合い、知識・経験及び情報交換などにより、相互啓発が図られ自己啓発の動機づけになる。
9.組織目標や基本方針などを部下・後輩一人ひとりに周知することができる。
OJTの基本ステップ
(1)OJTニーズの明確化
能力開発ニーズ=期待する能力ー保有能力
(2)OJTニーズ把握の機会と内容
・始業終業時
・業務遂行時
・報告・連絡・相談時
・会議・ミーティング時
(3)OJTの手順
<第1段階>OJTニーズの明確化(上司と部下の話し合い)
↓
<第2段階>目標設定とOJT計画づくり(上司と部下の話し合い)
↓
<第3段階>指導育成活動(上司と部下が一体、必要に応じてOffーJTを活用)
↓
<第4段階>実践した結果を次のOJTへ(上司と部下の話し合い)
↓
成果、OJTの進め方、方法などのチェック、改善
Off-JTとは
Off-JT(Off the Job Training)つまり業務外の教育(集合研修)にかける時間の割合は非常に小さいが、節目、節目の研修はやはり大事である。竹は、節があるからあれだけ長く伸びるわけで、人材育成において、この節をつくる役割をするのが研修である。
Off-JTの要素は、「受講者」「目的・目標」「講師」「プラグラム」の4項目。受講者が決まっている場合は、受講者の課題を洗い出し、目的・目標を設定し、講師とプログラムの内容を決定する。
研修計画を立てるに際しては、誰を対象に、何のために、どこで、どのくらいの予算をかけて、どのように進めるのかなど、6W3Hでチェックすること。特に、「何のために」という目的・目標に常に立ち返ることが何より大切である。
自己啓発とは
日本人は自己啓発にあまりお金と時間をかけない傾向があるが、支援制度を設けて自己啓発をバックアップしている会社も少なくない。
圧倒的に多いのが、受講料などの金銭的援助である。次いで、社外の公開セミナー、通信教育などに関する情報提供、就業時間の配慮などと続くが、受講者側の問題点としては、忙しくて自己啓発の余裕がないという声が多い。費用がかかりすぎるとか、効果が定かではないという意見もある。そこをどう調整していくかが教育担当者の課題であろう。
自己啓発のツールでは、通信教育のほか、最近はe-ラーニングが増えつつある。通信教育やe-ラーニングは、自分のペースや必要性に応じて個別学習できる上に、集合研修よりも経費が安くつく。
自己啓発で間違ってはならないのが、助動詞のつけ方である。
「should」(するべき)と「can」(できる)よりも、「will」(やりたい)で、メンバーにやりたいことを勝手にやらせていたなら、英語を全く使わない部署の社員が英会話の勉強するのを助成するということが起こりかねない。まず、何をすべきかを会社が見て、何ができて、何がしたいかを掛け合わせて、助成していく必要がある。
※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)
著者
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学 商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
松下直子(まつした なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。人事部門では、採用、育成、人事制度設計と運用、労務管理と幅広く人事業務に携わる。独立後は学習塾の経営や大学講師の経験を経て、現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修依頼は年間200本を超える(2011年実績)。人材育成を生涯のライフワークと決意し、社会人教育に意欲的に向き合うかたわら、士業家の独立支援事業、文化教育事業にも取り組み、幅広く人材育成に携わっている。