「働き方改革」を推進する生産性向上のヒント
2018年5月25日更新
「働き方改革」の推進が企業に求められています。働く人一人ひとりの業務において、いかに生産性向上を図っていくのか、仕事に対する見方を変え、仕事の方法を変え、考え方を変える具体的なヒントをお伝えします。
「働き方改革」の推進に向けて
少子高齢化が進み、人口が減少し、それにともなって労働人口が減っていくことが懸念されています。将来にわたって豊かさや国際競争力を維持していくためには、企業においてもさまざまな課題に取り組んでいかなければなりません。いわゆる「働き方改革」の主な中身としては、「労働時間の短縮」「非正規社員と正規社員との格差の是正」「高齢者の就労促進」などが挙げられますが、今回は、生産性向上に結びつく考え方のヒントをご紹介してまいります。
労働時間の短縮が生産性向上につながる
日本の企業活動においてよく指摘されるのは、「労働時間が長い」ということです。多くの会社では、社員の方々が夜遅くまで残業したり、時には休日出勤までしたりしていることがあります。もちろんそうでない会社もありますが、昔ながらの「モーレツ社員」が多い職場も少なくないでしょう。
しかし、それほどの長時間労働に見合う「成果(売上)」が実際に出ているかと問われれば、必ずしもそうではないケースもあるはずです。例えば成果の少ない残業のパターンとして、「上司と部下が早く退社することをお互いに遠慮し合っている」ケースがあります。もし職場でこうした状況があるならば、まずは上司が率先して早い時間に退社する必要があります。そうすれば、部下もやるべきことを終わらせて早く退社するようになるでしょう。それだけでムダな残業が減り、生産性は向上します。
ミッションを定め、仕事の優先順位をつける
一つひとつの仕事の「優先順位」を明確にすることも大切です。あまり重要でない業務に時間を使っていると、成果につながらず、それだけで生産性が下がってしまいます。
優先順位をつけるためには、その会社の事業目的、また各部署のミッションを明確にすることが第一歩となります。仕事の真の目的や、各部署、各員が担うべき役割が明確になれば、従来から行ってきた一つひとつの業務に対して、「これは重要である」「これは緊急性が高い」「これはさほど重要ではない」「これは緊急性が低い」といった判断がつきやすくなります。会社全体で事業の目的、具体的なミッションを再確認することから始めましょう。
古いルーティンの中にあるムダを省く
また、昔から慣例的に行っている業務(作業)の中には、すでに不必要になっているものが含まれている可能性があります。これを見つけて取り止めるだけでも、ムダな労力を省き、生産性を向上させることにつながります。
例えば何らかのデータを集計して書類をつくり、それを月ごとにファイルにまとめる仕事があったとします。ところがそのデータがどこで生かされるのかといえば、ただ保存されているだけで、特に活用する機会がないことがあります。おそらく過去のどこかの時点で、そのデータが必要だったのでしょう。しかし状況が変わり、時代が変わり、会社の規模が変わったりしたことで、いつの間にかそのデータは不要になってしまったのです。
このように、働くすべての人が、日々一つひとつの業務をフラットな視線で見直し、不要なものは止め、よりよい方法に置き換えられるものは置き換えていくという意識をもつことが求められているのです。
部下に任せて成長を促す
管理職が多くの仕事を抱え込みすぎて、長時間労働のスパイラルから抜け出せなくなっているケースもあります。その人にとってみれば、自分自身の責任を果たさなければという責任感と、仕事に対する強い熱意から、長時間労働を続けているのかもしれません。その一方で、その部下が、時間と力を持て余している可能性もあります。
もちろん重要度の高い仕事ほど、責任者は「自分でやらなければ」と思いがちです。失敗は許されないと思うほど、部下に任せる気持ちになりにくいかもしれません。しかし、その状態を続けていたら、いつまで経っても部下に重要な仕事を任せられず、結果的に部下の成長が妨げられてしまいます。難しい仕事を若手社員に任せる不安もありますが、思い切って任せることで、期待以上の結果が出るかもしれません。当然、部下に仕事を振り分ければ、責任者の労働時間は短縮され、ゆとりが生まれて、もっと大局的な思考が可能になるのではないでしょうか。
こうした生産性向上につながる労働時間の短縮を、たとえば社員研修やミーティングの場で取り上げ、働く人一人ひとりが、これまでの仕事に対する考え方や方法を変える取り組みを続けていけば、各企業において「働き方改革」の実現に大きく近づくのではないでしょうか。
的場正晃 (まとば・まさあき)
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。現在、PHP研究所研修企画部長。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。