オンライン研修 成果を高めるための留意点
2023年6月27日更新
世界的な感染症拡大の影響で、働き方や商談の進め方など、ビジネスの現場ではさまざまな変化が起きました。中でも、会議や研修をオンラインで実施するようになったことは大きな変化のひとつではないでしょうか。
ただし、オンラインでの研修実施にはメリットとデメリットの両面があります。そこで、本稿ではオンライン研修実施にあたって、メリットを最大化し、デメリットを克服して研修効果を高めるためのポイントをご紹介いたします。
オンライン研修のメリット・デメリット
オンライン研修には対面研修とは異なるメリット・デメリットが存在します。PHP研究所では、様々なオンライン研修のご用命をいただき、実施してまいりました。その事例を踏まえてご紹介します。
メリット
・受講者の物理的な移動の必要がなくなる(交通費・宿泊費、移動時間の削減)
・研修中に手軽にチャットで質問が投げかけられる
・講師との距離感が近く感じられる
・短時間の研修を複数回行うなど、柔軟なスケジュール設計ができる
デメリット
・接続不良など機材トラブルの可能性がある
・研修運営に事務局が張り付いている必要がある
・話し手、聞き手がはっきりしているので複数方向の議論が不足する
・講師から個別のフィードバックが減少する
(全員へ目を配れない。個別介入する場合、全員の前で介入することになってしまうので注意が必要)
・受講者にとって集中力を要する
・オンライン用に研修コンテンツの修正が必要
なかでも注意が必要なのが、オンライン研修では、受講者が自宅などから参加するケースが多いため、緊張感や集中力を持続させるのが難しい状況にあるということです。集中力を切らさないためには、休憩をこまめに取ったり、ケースドラマの視聴や、グループ討議・ワークをカリキュラムを組み込むといった飽きさせない工夫が必要になってきます。
研修事務局の役割
オンライン研修を開催するためには、通常の集合研修とは異なる事務局の役割が必要になります。たとえば、デジタルツールへのアクセスの確保や、講師側のカメラや音声の接続状況の確認などです。研修の進行においても、受講者の接続が切れてしまうといった予期せぬ事態への対応が必要です。
オンライン研修では、Zoomなどデジタルツールを用いたPC画面上のみのインストラクションという制約があります。講師が研修をスムーズに進行するため、事務局のサポートは重要な役割であるといえます。
運営面の留意点
オンライン研修の運営には、次のような留意点があります。
(1)事前の準備や確認
オンライン研修のデメリットに、接続上のトラブルが発生するリスクがあります。従って、事前に接続テストを実施すると良いでしょう。また、受講者にはイヤホンやヘッドセットなどの機材の準備や、なるべく静かな環境で受講できるよう環境整備を促すことも大切です。なお、受講者が意外と判断に迷うのが研修参加時の服装です。それらに関する指示・情報も明確に提示しておくべきでしょう。
(2)研修参加にあたってのルールを冒頭に明確に示す
研修中は言うまでもなく内職厳禁であることや、一時退出する際は必ず講師(事務局)の許可を得ること、さらにはチャット機能の使用ルールや、トラブル発生時の連絡先などを冒頭のオリエンテーションで確認しましょう。
(3)研修運営上の指示
研修が始まったら、受講者にはカメラオンで顔出しすることを求めます。ただし、発言者以外はマイクをミュートにしておくよう指示を出しましょう。
また、研修にメリハリをつけるために、受講者に画面の切り替え(講義では講師の顔が大きく見えるように、全体討議では参加者全体が見えるように、など)を適時指定することも大切です。
講師のインストラクションの留意点
通常の対面研修は、講師が前に立ち、受講者が座って講師の話を聞くというスタイルが一般的ですが、この物理的な構造が、「講師が主、受講者が従」という暗黙のメッセージを生み出し、受け身の受講態度を誘発しがちです。それに対してオンライン研修は、講師と受講者が同じ画面上で表示されるので主従の関係ではなく、フラットな関係を構築しやすい点がメリットの一つです。一方で、同じ空間にいないので、視聴覚情報以外の暗黙知を共有することが困難で、「ともに学ぶ」という一体感を構築するのが難しいという側面もあります。
そうした前提を理解したうえで、社内講師として登壇する際に心がけていただきたい8つの留意点があります。
オンライン研修の効果を上げるための8つの留意点
オンライン研修の効果を上げるための8つの留意点
(1)カメラから、適切な距離を保つ
...近すぎず遠すぎない、画面上に「自身の胸から上」が映る距離を
(2)こまめに問いかけたり、意見を求める
...いつ当たるかわからないという緊張感が集中力を維持する
(3)発言者に対する他メンバーからのリアクションを求める
...うなずき、拍手や反応ボタン等
(4)ブレイクアウトセッション(※)を多用して理解度と相互交流を促進する
...1日研修であれば、何度かメンバーを入れ替えるほうが望ましい
(5)受講者数が少ない場合は、メインルームのまま、全体討議形式で進行する
(6)休憩は短時間でもいいのでこまめに取る
...1時間に1回程度
(7)スライド枚数が多くなって、「スライド上映会」にならないように気をつける
(8)あえてアナログを重視することでインパクトを強化する
...ホワイトボードに板書する、紙のテキストに書き込ませる、等
※ブレイクアウトセッションとは...Zoomの機能として活用できる、オンライン上に少人数の小部屋を作成し、グループに分けることができる機能。グループディスカッションやペアワークがオンライン上で実施できる
PHP研究所のオンライン研修
新型コロナウイルスの収束により、対面研修の実施も戻りつつあります。しかし、オンライン研修がなくなることはありません。目的と内容に合わせて対面とオンラインの手段の使い分け、つまり研修のハイブリッド化が進んでいます。したがって、対面研修であれオンライン研修であれ、どちらにも的確に対応できるような実践知を社内に蓄積していくことは、今後の自社の人材開発能力の強化につながる重要課題と言えるでしょう。
PHP研究所のオンライン研修は、対面研修のプログラムをそのままオンラインで実施するのではなく、オンラインに特化したプログラムをご提案しています。また、対面研修とオンライン研修を組み合わせたハイブリッド研修もご提案しています。例えば、オンラインでは事前課題に取り組み、知識をインプット。対面研修ではオンラインでの学びを踏まえて受講者同士のディスカッションを重視する等、柔軟にプログラムをご提案しています。
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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。