やればできる~成長する人に必要なマインドセットとは?
2021年9月21日更新
昨今の心理学や経営学の研究成果によって、心の状態が個人の成長や仕事上の成果につながることがわかってきました。本稿では、成長するために必要なマインドセットについて考察したいと思います。
心の状態がすべてを決める
心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる
これは、米国の心理学者・哲学者であるウィリアム・ジェームズ(1842-1910)のことばとされ、長年にわたって多くの人々の拠りどころとなってきた教えです。ジェームズによれば、運命をより良いものへ変えようと思うならば、原点である心(意識)を変えることが重要であるというのです。
ビジネスの世界でも、心のあり方を大切にしている経営者が数多く存在します。その代表格ともいうべき、京セラ創業者・稲盛和夫氏は「時代を動かすのも、経済を動かしていくのも、あらゆるものの原動力というのは人間の"心の状態"で決まる」と述べ、意識改革の重要性を訴えています。
「やればできる!」
意識改革というと、単なる精神論だとみなされることが多かったのですが、昨今は科学的な観点からそのメカニズムが解明されつつあります。米国の心理学者キャロル・S・ドゥエックは人間の信念の力を証明することを研究テーマに掲げ、さまざまな研究成果を発表しています。
ドゥエックは、著書(※1)の中で、
「人間の信念は、本人が意識しているといないとにかかわらず、その人がどんなことを望むか、そして、その望みがかなうかどうかに大きく影響する。また、信念を変えることは―それがどれほど単純な信念であれ―偉大な効果をもたらすことが、すでに実証されている」と延べたうえで、成功するために必要なのは「しなやかな心の持ち方、すなわち『しなやかマインドセット=Growth mindset』である。その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念だ」と結論づけています。
このように、心理学の観点からも、心の状態がすべてを決めることがわかってきました。ドゥエックの著書のタイトルにあるように、「やればできる!」という信念をもつことが極めて重要なのです。
※1 『マインドセット「やればできる!」の研究』キャロル・S・ドゥエック著(草思社)
心を高めるために
ここまで意識改革の重要性を述べてきましたが、改革の順序は[意識⇒行動]の一方通行ではなく、[行動⇒意識]の逆方向を辿ることもあります。つまり、改革は[意識⇔行動]という双方向性を示しながら進んでいくと解釈したほうが現実的でしょう。
もし、心がなかなか高まらない状態にあるならば、行動から始めるのも一つの手です。自らを成長させるために、やってみようと思っていることがいくつかあれば、それらの中から優先順位をつけて、まずは行動してみること。ただし、三日坊主で終わるのではなく、継続しないと意味がありません。
前述のウイリアム・ジェームズのことばにあるように、習慣が人格と運命に影響を与えるので、「良い習慣」を身につけることが重要な意味をもちます。行動科学によれば、ある行動を3週間実践し続けるとそれが習慣になり(※2)なり、さらにそれを3カ月継続すると周囲が変わると言われています。
継続は力なり。実践を続けて心を高め、「しなやかマインドセット」の状態をつくることができれば、自らの成長、仕事の成果につながる可能性が高まるでしょう。
※2 脳科学の分野でも、同じ行動を繰り返し続けることで、習慣化しやすくなることが実証されている
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。