モチベーションとは? 上げる方法やマネジメントの在り方を解説
2022年6月20日更新
モチベーションとは、仕事においては、社員が目標に向かって行動する内的エネルギーのことです。ここでは、モチベーションを上げる方法や、それを左右する要素、マネジメントの在り方を解説します。
モチベーションとは
モチベーションとは、人が何かをする際の動機づけや目的意識、要因のことです。仕事においては、社員の業務意欲を指します。 個人やチームの目標に向かって行動する内的エネルギーともいえるでしょう。
また、社員がやる気をもって自発的に仕事に取り組めるよう動機づけを行ない、組織の生産性や成果の向上に向けて上司が働きかけることを、モチベーション・マネジメントと言います。
モチベーションは潜在能力を引き出すドライバ
心理学者のウィリアム・ジェームズは、「人間はその潜在能力の5~7%しか活用していない」という主張を展開しました。5~7%という数字の真偽はともかく、同一人物が環境や条件が変わることで別人のような能力を発揮することがしばしばありますので、使っていない能力が多いという主張は納得感があります。
そして、潜在能力を引き出すドライバ(推進力)になるのがモチベーションです。「あらゆるものの原動力というのは人間の"心の状態"で決まる」(※1) ということばのとおり、モチベーションを高いレベルで維持することが潜在能力を引き出すポイントになるのです。
経営資源の中で、もっとも伸びしろがあり未開発の部分が大きいのが人的資源でしょう。やり方次第で、個々の人材の潜在的な能力が今以上に引き出され、より大きなパフォーマンス獲得につなげることが可能になります。
モチベーションを上げる方法
では、どうすればモチベーションを上げることができるのでしょうか。
モチベーションの状態を左右する要素に、以下の3つの「感」があります。
1 貢献感
自分の仕事や存在そのものが、組織や社会の役に立っていると感じられること
2.存在感
自分の存在価値や存在する意味が感じられること
3.成長実感
仕事や会社生活を通じて、自分が成長しているという感覚
かつては、「外的報酬(金銭的報酬、地位的報酬)」の魅力が大きいと言われていましたが、現在は若い世代を中心に勤労観の多様化が進み、「内的報酬(成長実感、自己実現、貢献満足感)」を求める人が多くなりました。そして、内的報酬に影響を与えるのが上記の3つの感なのです。
参考記事
・若手社員の「やる気の源泉」はどこに?
モチベーションと成長につながる「職務特性モデル」
心理学者のリチャード・ハックマンと経営学者のグレッグ・オルダムが理論化した「職務特性モデル」は、仕事の特性と人のモチベーションの関係性を説明しています。このモデルでは、モチベーションを高めるための中核となる重要な特性として以下の「5つの特性」が明らかにされました。
1 技能多様性
自分のスキルや技能を発揮できる仕事
2 タスク完結性
仕事の全体像が見える仕事
3 タスク重要性
他者にいい影響を与える重要な仕事
4 自律性
自分のやり方で取り組める仕事
5 フィードバック
結果がどうであったか、都度知ることができる仕事
MPS(Motivating Potential Score)
ハックマンとオルダムは、5つの特性を使ってMPS(Motivating Potential Score)という数式をまとめました。
この数式は、5つの特性の掛け合わせによって、人のモチベーション(および成長)に差が出ることを表しています。前項で説明した、内的報酬を感じさせるための具体的なアイデアが、この理論から読み取れるのではないでしょうか。
モチベーション・マネジメント~部下のモチベーションを高めるために
キャリア発達理論の領域では、すべての人には、「やりたいこと」、「やれること」、「やるべきこと」があるとされています。部下のモチベーションを高めるために、上司は、「傾聴」によって本人の「やりたいこと」(欲求)を把握し、「観察」によって「やれること」(能力)を見極め、「説明」によって「やるべきこと」(義務・役割)を理解させる必要があります。そして、3つの円の重なりが大きくなっていくことがモチベーションの向上につながるのです。
ただし、ここで留意しておかなければいけないのは、「やりたいこと」「やれること」に意識を向けすぎてしまうと「やるべきこと」がおろそかになりがちなので、3つのバランスを重視するということです。
「やるべきこと」の中には、本人がやりたくないことや、現状ではやれないこともあるでしょう。でも、上司がそのことに妥協せず、強い意志でやるべきことをやらせ続けなければいけません。やり続ける過程で、その仕事の面白さが見えてきたり、やれる能力が身につくようになって成長が促進するのです。
そして成長を実感できれば、それがさらなるモチベーション向上⇒潜在能力の発揮⇒成果獲得⇒成長実感⇒......というプラスの循環につながるでしょう。
上司の責任と役割
松下幸之助(PHP研究所創設者・パナソニック創業者)は、「『あんたの仕事の結果はこういうふうに世間に役立っているのですよ。だから、非常に尊い仕事なんですよ』と、言ってあげる。そういうことが言えないと、人を指導することはできませんね」と述べ、仕事の意味を伝えることが指導者の最重要責務であることを説いています。
短期的な成果が重視されがちな今こそ、上司が仕事の意味を自分なりに解釈し、それを自分のことばで部下に伝えることが求められています。部下のモチベーションを高めるうえで、上司の責任と役割が大きいことをすべての管理職の方がたには自覚していただきたいものです。
※1 出典:『新版・実践経営問答 こうして会社を強くする』稲盛和雄著(PHP研究所)
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長。
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。