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中小企業の人材育成

2024年9月 3日更新

中小企業の人材育成

経営資源にゆとりがない中小企業は、人材育成がおざなりにされがちです。しかし、これからは人を基軸にした経営をしない限り、事業の継続・発展は難しくなるでしょう。そこで、本稿では中小企業において成功する人材育成のポイントを考察いたします。

INDEX

中小企業の現状

商社や海運、自動車業界などを中心に、大企業は業績好調の企業が多い一方、中小企業は企業間の業績の格差が拡がり、勝ち組と負け組がはっきりしつつあります。一般的に、大企業に比べて中小企業は経営力がぜい弱な企業が多いので、昨今のような環境変化に対応する余裕のない企業は業績低迷から抜け出せなくなります。

ここで中小企業の現状を示すデータを見てみましょう。大手シンクタンクが行ったアンケート調査(※1)によると、中小企業の経営者が認識する重要な経営課題として、「人材」「営業・販路開拓」「生産・製造」等が、回答が多かった項目とされています。

中小企業の経営者が認識する重要な経営課題

この結果からも明らかなように、どのようにして人を確保し育成していくかが中小企業の最重要課題と言えるでしょう。そして、人に関する課題が解決(あるいは改善)できれば、上記調査結果で示されているその他の課題も漸次、解決に向かうでしょう。なぜならば、ほとんどの課題が、人が介在することで生じているからです。

※1 野村総合研究所「中小企業の経営課題と公的支援ニーズに関するアンケート」小規模事業者製造業:N=918、同非製造業:N=1,255、中規模事業者製造業:N=1,166、同非製造業:N=680(2019年11~12月実施)

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事業は人にあり

人的資本経営ブームの影響を受け、人を「コストの発生源」ではなく、「付加価値を生み出す源泉」と見做すべきだという主張が喧しくなりました。弊社創設者・松下幸之助は、経営における人の重要性について以下のような持論を展開していました。

"事業は人にあり"ということが、昔から言われております。どんないい事業でも、人がなかったならば、その事業は育たない。一国の繁栄にしましても、一人の目覚めたる人が立ち上がることによって、その国は興っていく、ということがあるのです。目覚めた一人の力は非常に大事である。まして、たくさんの方がたがその道に精進をされまして、偉大な使命を遂行することに立脚されたならば、事業は非常に繁栄を極めると思うんです。

大阪証券業協会での講話(1962年4月9日)
 

幸之助が主張する、人が事業の盛衰を決めるという考え方は、経営資源にゆとりがない中小企業においてこそ、今後重視するべき人材マネジメント理念ではないでしょうか。

 

人材育成と生産性

人に関する課題に手をつけることの重要性を示すデータがあります。『2018年版ものづくり白書』(経済産業省)によると、「人材育成で成果が上がっている」と回答した企業ほど、生産性が向上しているという結果が明らかになりました。

2018年版ものづくり白書

人材育成は、単なるスキルアップだけでなく、組織全体の効率やモチベーション向上にも寄与し、結果として労働生産性の向上に繋がります。したがって、企業はこれを戦略的に進めることで、持続的な成長を実現できるのです。

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成功する人材育成のポイント

ここまで、人を基軸にした経営の重要性を論じてきましたが、最後に、成功する人材育成のポイントを3つの観点からご紹介します。

1.「反復」と「釘打ち」

人の意識は変わりやすく、一時的に気づきを得たり、マインドが高揚しても時間が経つと元に戻ることが往々にしてあります。したがって、同じメッセージや教えに何度もふれ、意識がずり落ちてこないよう「釘打ち」をする必要があります。

具体策

◎朝礼等で会社の理念や価値観を毎日確認しあう
◎単発の教育ではなく、継続的な教育を実施する

2.「問答」形式による気づきの深化

一方的なレクチャーではなく、問答を通じて[内省→持論化]を促進するスタイルの講座のほうが深い気づきを得やすくなります。そして大切なことは、実際の経営の現場で起きている「生の課題」を扱うことです。それによって、より実践的に問題発見力・解決力を高めることができます。

具体策

◎課題解決型のワークショップを数回実施し、最終的に成果報告会を行う

3.共通言語化

個人の「気づき」をその人の内側に留めず、組織で共有し「共通言語化」を図ることで組織開発が促進します。経営のわかる職場へ進化を図ることで、経営のわかる人材が育ちやすくなるでしょう。

具体策

◎職場単位の対話の場を定期的に開催する。必ず全員が発言すること。そのためには、リラックスしながら話せる雰囲気をつくることが重要

今はまさに、人材育成の好機

リーダーシップ開発の研究領域には、「修羅場経験が人を育てる」という考え方があります。そういう意味では、現在の経営環境には修羅場経験があふれていて、今はまさに人材育成の好機と言えるでしょう。
経営者・人事担当の方がたには、人を基軸にした経営を基本理念としながら、自社に合ったやり方で、仕事力・人間力の両面から人材の育成に取り組んでいただきたいと思います。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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