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内部告発対策~管理職のコンプライアンス

2018年8月 3日更新

内部告発対策~管理職のコンプライアンス

内部告発があった場合、管理職はどう対応すべきか。また、事前にそうした事態を防ぐにはどうすべきかを、コンプライアンスの観点から解説します。

事例:従業員が社内不祥事をマスコミに公表してしまった!

「商品の表示に虚偽がある」との情報で、マスコミが取材に押しかけてきました。生産部の神崎マネジャーはその対応に追われつも、なぜ、内部の情報がマスコミにもれたのだろうと疑問に思いました。

数日して、どうやら内部告発があったらしいとわかり、職場の中は犯人探しでピリピリしています。神崎マネジャーも、役員から「心当たりはないか」と問い詰められ、困ってしまいました。

≪どう判断しますか?≫

(A)会社には倫理ヘルプラインもあり、外部ではなくまずそちらへ通報するよう日頃から指導しておくべきだった。

(B)会社の不正行為は許されないが、公表して会社がつぶれてしまっては元も子もない。

(C)外部へ告発する前に、倫理ヘルプラインなど職場で気軽に相談できなかったのは問題である。

→≪正解≫ (A)(C)

何でも相談できる雰囲気づくりで不正の芽を摘み、問題解決を!

2006年、「公益通報者保護法」が施行されました。勤務先や派遣先など労務提供先等において、国民の生命、身体、財産などに被害を及ぼす犯罪行為の事実が生じているか、または生じようとしている事実を通報先に通報した場合、公益通報者として解雇、派遣契約の解除、その他の不利益な取り扱いから保護されるというものです。

その通報先は、

(1)事業内部(内部通報)
(2)通報事実について処分または勧告等をする権限を有する行政機関
(3)マスコミや消費者団体など被害拡大防止等に必要と認められる事業者外部

の3つです。

(2)は通報対象事実が信ずるに足りる相当の理由があること、(3)ではそれに加え、証拠隠滅のおそれや、人の生命・身体への危害の危険が急迫しているなどの要件があります。(1)の内部通報で多いのは、倫理ヘルプラインを通じてです。何かあれば倫理ヘルプラインへすぐに相談できる制度が社内に整っていると、いぎなり(2)や(3)へ直接通報されることは少ないでしょう。

管理職に求められるオープンドアポリシー

ただ、制度はあっても、使うと自分の立場が危うくなるなど正しく機能していない場合は、(2)や(3)へ直接通報されるリスクが高くなります。倫理ヘルプラインへ安心して相談できないようでは意味がありません。管理職として、改善に取り組みましょう。職場の風通しをよくし、部下の声を真摯に受け止めて聞くという姿勢(オープンドアポリシー)を持つことも重要です。

部下の動きを常に把握し、何かあったら気軽に相談に乗るという雰囲気が職場にできれば、本人が倫理ヘルプラインへ通報する前に解決できるかもしれません。

出典:イラスト&ケーススタディ『実践! コンプライアンス[上級編]』(PHP研究所)

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田中宏司(たなか・ひろじ)
東京交通短期大学学長。1959年中央大学法学部卒業。1954~90年日本銀行勤務の後、早稲田大学大学院講師等を経て、2002~06年立教大学大学院教授。日本経営倫理学会前副会長、一般社団法人経営倫理実践研究センター理事・主席研究員、経済産業省「ISO26000JIS化本委員会」委員等。多くの主要企業や行政、団体向けに講演・指導の実施や行政の委員会委員を務めている。著書多数。

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