人材育成の基本的な考え方~長期的・永続的な発展をめざして
2013年7月 5日更新
企業にとって人材育成が大切だということは十分に認識していながら、これまで多くの企業は売上や利益を優先してきた。日常の業務や目先の課題を解決することに追われてしまって、長期的な視点で行う教育や研修は後まわしにされてきたのが実態である。
人材育成の基本条件
経営者が長期的な発展を目指すのであれば、目先の売上や利益を求めるのではなく、「人材育成を通じて業績を上げる」という発想がなくてはならない。人材育成を計画的、体系的に進めることは、ある意味では目先の利益を犠牲にする覚悟が経営者にあるかどうかにかかっている。目先にとらわれず、すぐに成果を期待せず、地道に人材育成に取り組む度量が経営者に求められる。
人材育成の基本条件は、まず、「教育によって社員は成長する」と経営者が強く信じることである。このように信じる経営者は、不況になっても安易に教育費を削らない。
次に、人材を大切にする意識が経営者をはじめ幹部・管理者に浸透していることである。教育する以上、社員の人間性や価値観を尊重し、「可能性を信じる」「個性を大切にする」という人間観が不可欠である。中長期的に見れば、人材育成を正しい人間観を持って計画的に推進するか、しないかで、企業の競争力に大きな差が出てくることは言うまでもない。
人材育成の考え方
今、人材育成の考え方が大きく変わろうとしている。
経営資源といえば「人」「物」「金」「情報」「時間」などさまざまあるが、これまで「人」という経営資源は、他の経営資源と比べあまり重要な扱いをされてこなかった。むしろ、切り捨ててきた感さえある。“ジャパンアズNo.1”と言われ、日本的経営が評価されていた時代は、明らかに「人」を尊重する経営であったはずだ。しかし、バブル経済がはじけて欧米の成果主義が導入され、日本企業の良さである「人を育てる」「人を大切にする」という思想が失われてしまったことは否めない。
ここにきて、その弊害に日本企業は気づきはじめ、かつての日本的経営の良さを取り戻そうとしている。「社員旅行」「社員寮」「飲み会」「運動会」「OJT」「メンター制度」など、人と人との絆や企業に対する愛社精神を回復しようとする行事や教育制度の復活が、その証拠である。
経営の神様・松下幸之助翁はこう述べた。企業活動に必要な人・物・金・土地、すべては本来、公のもの、つまり企業が社会から預かっているものであり、企業自体も社会のもの、つまり公器である。
社会の公器である企業は、その活動を通じてさまざまな形で社会に貢献し、社会生活を向上させていく「社会的責任」を担っている。社会から預かった大切な人材は一人ひとり偉大な存在である。経営の枠を超えて人間を尊いものと捉え、「人材」を「人財」に育むことが社員教育であり、それが企業の社会的責任である。