コミュニケーションの質を高めるために――「聞く」から「聴く」へ
2020年7月22日更新
チームの一体感の欠如やモチベーションの低下、メンタル不調者の増加など、以前から指摘されていたように、職場にはさまざまな問題が山積しています。そして、そのほとんどの原因が、コミュニケーションの機能不全にあると言われています。 リモートワークの普及が今後も進むことが予測される中、何らかの手を打っておかないと事態がより深刻化してしまうでしょう。
コミュニケーションの質を左右するもの
ではいったい何がコミュニケーションの質に影響を与えるのでしょうか。コミュニケーションの構成要素のうち、最も重要で影響力の大きいものが「きく」行為です。「きく」には、「聞く」と「聴く」がありますが、両者には大きな違いがあります。「聞く」(=hear)とは、音や声を耳に感じ認めることであり、「聴く」(=listen)は、聞こえるものの内容を理解しようと思って進んできくことを意味しています。
チームの中に「聴く風土」が定着すれば、必然的に「話す」「語る」量が増え、対話が生まれて相互理解が進み、多くの問題が解決へと向かうでしょう。
「聴く」ことの難しさ
ことほど左様に、聴くという行為は極めて重要なのですが、同時に実践することが非常に難しい行為でもあります。なぜ難しいかといえば、相手の話に対して評価、決めつけてしまうことが往々にしてあるからです。
例えば、批判的な意見を述べることが多い人が会議で発言すると、「また、批判している」と評価したり、あるいは部下が報告をする際、「例のプロジェクトの件の報告だろう」と決めつけて聞いてしまいがちです。このように、自分に都合のいいように聞いてしまうと、相手の発している大事なメッセージを受け止め損ねたり、間違った解釈をすることにつながります。したがって、聴くためには、決めつけ、評価、囚われを排除した真っ白な心の状態で相手に向かう必要があるのです。
リモートワークの時代のリーダーのあり方
みなさんの日頃のきき方は「聴く」でしょうか、それとも「聞く」でしょうか?
一人ひとりが「聴く」スタンスで相手の話を受容すれば、チーム内のコミュニケーションを円滑な状態にすることができるでしょう。リモートワークになって、働き方の選択肢が増える一方で、コミュニケーションの質が低下するリスクもはらんでいます。だからこそ、人や組織を引っ張るリーダーの方がたには、まず率先して「聴く」を実践し、その輪をチーム全体に広めていただきたいものです。
的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。