研修効果の測定「カークパトリックモデル」
2015年12月10日更新
「カークパトリックモデル」とは?
研修の効果測定方法で最も代表的なものに、「カークパトリックモデル」がある。ドナルド・ L・カークパトリックが1975年に提唱したものである。カークパトリックモデルとは、研修効果は測定レベルを4段階で評価する理論である。レベル1からレベル4の4段階(Reactions:反応/Learning:学習/Behavior:行動/Results:結果)で測定が可能であると提唱している。
1)レベル1のリアクション(反応)
研修後のアンケートで受講者の反応をみることで、受講者の理解度・満足度を測定する。
2)レベル2のラーニング(学習)
研修で学習した内容について、理解度テストや検定試験、実技試験で習得度合いを測定する。
3)レベル3のビヘイビア(行動)
研修後に日常業務でどのような行動変容が現われたかを評価するもので、受講者へのヒアリングや仕事への取り組み方など、職場で観察可能なものは上司や部下が評価する。
4)レベル4のリザルト(結果)
その研修を実施したことで、どれだけ売上を上げたのか、利益を得たかをみる。「営業担当者研修」であれば売上実績や新規開拓件数、「製造担当者研修」であれば、コストダウンや生産性向上などを測定する。結果が出るまでに時間のかかる効果ではなく、効果が出るまでのプロセスを見る指標を測定するとよい。できるだけ比較検討できる「見える」もので示していくことが必要だ。
【カークパトリックの4段階測定】
【カークパトリックの4段階測定のポイント】
カークパトリックモデルの活用法
理論を理解しても、どのように活用していいか分からなければ意味がない。測定レベルが高くなればなるほど手間やコストがかかり、データを取るのが難しくなる。そこで、研修目的やねらいに合わせて、研修企画の段階から、いつ何をどれだけ測定するのかを決めておくとよい。
研修によっては、レベル3以降を測定する必要がないものもある。またレベル4の費用対効果分析を行っても意味がない研修もある。各研修において効果測定に必要な指標を洗い出しておき、研修の目的やねらい、テーマによって、どの指標を使うかの基準をあらかじめつくっておきたい。
※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)
【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
松下直子まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。
神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。
「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。