地方企業での中途採用のメリット
2016年8月 9日更新
地方企業では、大都市圏からUターンしてくる優秀な大企業出身者を中途採用することで、イノベーションをもたらす可能性が出てきます。地方企業での中途採用のメリットについて解説します。
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大都市圏では既に転職は当たり前になっていることは皆さんご存知だと思いますが、今、地方にもその波が少しずつ押し寄せてきています。そのきっかけは、政府が進めている少子化対策を最終目的としている地方創生事業の中で、大都市圏の優秀な人材の、中小企業での中途採用を進める「プロフェッショナル人材戦略事業」です。
地方企業で優秀な人材を採用
なぜ地方企業へ優秀な人材を入れることが少子化対策になるのかといえば、首都圏で働く方達は地方に移住したい気持ちが思いのほかあるものの、大企業などで経験したスキルを発揮する仕事が地方に少ないからであり、事実上、故郷に戻れないからです。そこで優秀な人材の中途採用により、地方企業にイノベーションを起こして新たな首都圏企業レベルの仕事をつくり、雇用を増やし、UIJターン人材を増やそうという試みが昨年から始まっています。
大都市圏に集まる若者達は、都会の色に染まり、なかなか結婚して子育てをする気持ちになりません。大都会では結婚はともかく、子育てする環境ではないため、子育て環境に恵まれている地方移住を進めることがこの事業の背景にあります。
中途採用の現場に大きな変化
ところで中途採用、転職の主役である人材紹介ビジネスが広く普及したのは1990年代で、2000年ごろにはITの普及により誰でもパソコンで人材サイトに登録したり、求人情報に応募したりできるようになりました。
それまでは新聞や雑誌で探していたのですから大きな変化だったわけです。
2001年の人材紹介の市場規模は約900億円。それが年率12%の成長をして現在は4000億の市場に拡大しています。6年で倍増し続けていることからも人材紹介を利用した中途採用が企業に普及していることがわかると思います。
さて、転職者には費用がかからず無料で利用できる人材紹介会社がどうして利益を得ているかといえば、企業が採用の成功報酬を支払っているからで、採用人材の年収の概ね35%のフィーとなります。つまり年収600万の人材を採用すると210万の手数料です。1000万の人材ですと350万にもなります。
この金額の高さが、今まで地方企業に人材紹介ビジネスが浸透していなかった原因の一つです。確かに、縁故採用やホームページで採用ができればただ同然ですから、比較にならないほどの採用経費となります。しかし、はたしてこの採用経費は本当に高いのでしょうか?
紹介会社は人材を扱うプロであり、縁故などでは出会えないレベルの人材が採用できるからこそ使うメリットがあり、今や市場が4000億規模にまで拡大しているわけです。今まで縁故採用や地元の新卒採用が中心の地方企業も、この機会に人材紹介を活用した抜本的な業績アップ対策を真剣に検討すべき時が来ています。内閣府や県の後押しもあるため、今がチャンスです。採用時に県の補助金を受けられる可能性もあります。
優秀者の中途採用でイノベーションを起こす
しっかり認識していただきたいのは労働力人口が減少し、企業間の競争が厳しい中で今や人材の争奪戦になっていますが、人材紹介が扱うのは労働力人材ではありません。社長と共に会社を発展させていく幹部や管理職人材で、その中には社長後継者候補なども含まれます。
もうすこし具体的に言うと、国内営業部長や海外営業部長、新規事業責任者、工場長、管理部長、技術開発部長など会社の中枢に必要な職種の幹部人材です。
これらの人材を仮に自社で育てることを考えると少なくても10年以上の年月と何千万もの人件費がかかってしまいます。また、自社にない部門、まだ未熟な部門では育てることすら不可能です。
つまり、中途採用は、時間と自社では育てられない能力をお金で買うことができる方法なのです。したがって年収の35%のフィーもむしろ安いと言えます。
この発想の転換が今後の地方企業の命運を分ける可能性があります。
地方を回ってみると、下請け体質から脱却できないとか、いつのまにか衰退産業となって元気がない企業を大変多く見かけますが、その多くは現場の労働者も不足しているし後継者不足でも悩んでいます。会社そのものに魅力を感じられないため、入社する人材もそれなりになってしまい、会社の発展につながりません。このような企業に必要なのが、企業の体質を変えるほどのイノベーションを起こす外部人材です。会社の中の人材は外を知らないので、大きな変化は生み出せないからです。
業績が伸びないとか、事業が時代に合わなくなっているなど、将来がなかなか見通せない地方企業。あるいは、首都圏や海外企業と競争をしている企業は、会社を大きく変える可能性のある大企業出身者などの人材採用を、この機会に一度検討してみるといいと思います。