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企業のブランドを創る人材を採用する

2016年8月26日更新

企業のブランドを創る人材を採用する

企業ブランドを創る優秀な人材を採用し、働き続けてもらうには、何が必要でしょうか。

海老一宏氏の解説です。

 

*   *   *

「プロフェッショナル戦略事業」が地方企業を変える

前回の寄稿で、地方企業にも人材紹介による優秀な人材採用の波が押し寄せてきている事実をお話しました。

 

この波を起こしたのが内閣府の地方創生の事業の一つである「プロフェッショナル人材戦略事業」であり、事業の本格的な始動後わずか半年で各県の戦略マネージャーが訪問した中小企業数は5000社を超え、この情報を受けた人材紹介会社によって150人以上の人材を新たに採用しています。このうち約4割が部長や役員などの上級人材であり、課長クラスを入れると8割近くが管理職人材になります。さらに、約半数が県外からの採用となっており、今までに採用が考えられなかったような会社の業績改善や未来を創造する人材が採用できていることを物語っています。

 

このように「プロフェッショナル戦略事業」は、今後数年で地方企業を大きく変えることになります。何千人もの首都圏や海外で活躍している人材=今まで地方企業にまったく縁のなかった経験値を持つ人材を、地方企業が採用していきます。間違いなく日本の中小企業の力の底上げにつながる動きを、まさに今、各県で行っているのです。

 

さて、このような優秀な人材を採用した後で力を発揮して活躍してもらうためには、企業の魅力が必要です。その魅力とは今立派な企業である必要はありません。現状は様々な問題に苦しんでいたり、成長の踊り場にいたり、創業したてのベンチャー企業でも構いません。これから輝きを増して行く原石としての魅力があれば、まずはOKです。

 

私は、この原石を掘り出して磨き始めた創業社長と、それをさらに磨き続けている後継社長にたくさんお会いしてきました。様々な困難と向き合い、また乗り越えてきた社長に敬意を表し、私にできることでその原石を磨き、さらに光輝くようにお役に立ちたいと思ってお付き合いをしてきております。

 

今回のプロフェッショナル人材戦略事業への参画は、まさにこの私の思いの実現にダイレクトにつながるものです。

 

企業の持つ魅力を磨く方法

企業の持つ原石を磨く方法は、大きく分ければ二つあります。

 

一つは社長自身が磨き続け、そのノウハウを身近な社員に伝えていく家内工業的な発想の経営です。家内工業という言い方をしていますが、この経営方法で成功できるのであれば大変立派なことであり、本来の経営はこの手法で成功することだと思います。事実この方法で100億を超える事業を経営されている社長も、たくさん存在しています。

 

しかし、この経営手法には大きな弱点が2つあります。その一つは社長自身が(例え2代目、3代目でも)企業が続く限り社員を引っ張るだけの永遠なる成長と努力が不可欠だということです。社長の成長が止まったり、社長の事業意欲が失せるとみるみる企業は衰退していきます。社長が別事業に手を出して本業がこけるなどの失敗例は、枚挙にいとまがありません。

 

もう一つは成長には時間がかかり過ぎることです。1が2になり、2が4になりと事業計画を立ててもおそらくほとんどの企業は4が3になり、3が1になるという足踏みを経験して苦しみます。社長は自分の分身でもない赤の他人を、自分と同じように育てることの矛盾になかなか気がつきません。成長した企業は、社長がその矛盾に気がつき、人を育てるマネージメントにたどり着いた企業だけです。

 

他人の経験を活用する

原石を磨く方法の2つ目は、社長が早くから人を育てるだけでなく、他人の経験を活用することで磨きを良くして、さらに磨くスピードも速くし、磨いた石の売り先まで確保するという社長の限界を超えた経営手法を取り入れる方法です。創業社長とは、事業や経営のあらゆることに意識が行き渡っているスペシャリストでありゼネラリストです。しかし、その事業や経営は細分化してみると、そこには社長を遥かに超える経験や能力を持つスペシャリストが存在しています。そうした人材の活用をすることで、事業を飛躍的に成功へと導くことができるのです。

 

しかし、この社長の能力を超えた力を持つ人材を活用した経営にも大きな問題があります。それは、ある部分で社長を超えた能力を持つ人材が社長の下で働き続けるために「引力」が必要だということです。その引力が強くないと、せっかく入れた優秀な人材もいずれ離れてしまいます。

 

この経験は人件費の損失などの金銭的にも企業の体質を弱める可能性があり、また社長に精神的なダメージを与えます。わかりやすく言えば、せっかく高額な採用経費と人件費を払って入社させた人材が、会社のノウハウを持って辞めていくことが続くと、社長は人間不信になるのです。

 

会社や社長に引力があれば人材の損失はかなり防ぐことができますが、ではその引力とはどんなものでしょうか?これは企業によって違いがあります。例えばそれが給与や賞与などの金銭面でのメリットもあれば、社会的な意義の高いことへの満足感も引力となりえます。とにかく企業はこの引力を創りださない限り、採用経費と人件費の無駄遣いになり成長しません。

 

この引力の原点は、創業社長にあります。創業社長が大事にしてきたこと、求めてきたもの、経験してきたことから導き出されるものです。しかし、社長がその引力を理解して「見える化」できるかと言えば、実は結構難しいのかもしれません。人は自分のことはわからないからです。

 

会社や社長の引力こそがブランド

私は、この今まで書いてきた「引力」こそが、会社のブランドだと思います。ブランドは名前やデザインの色や形ではなく、イメージではあるものの、その会社に人が集まる理由であり、お客様が発注する理由です。会社の存在価値です。社長はこの「引力=ブランド」を創るために創業の苦労をしていると言っていいでしょう。実際は生きていくのに必死だとしても、それは同時にブランドを育てて行っています。

 

そして私はこの「引力=ブランド=イメージ」作りも、優秀なる外部人材の活用でできるのだと思っています。その人材こそNo.2や幹部クラスの人材であり、そうした人材が社長の今と過去と未来から「引力=ブランド=イメージ」を創造して会社に定着させるのです。少なくても管理職として会社に採用された場合は、例え社長室や経営企画などの中枢部門ではなくても、いつも会社の「引力=ブランド=イメージ」を構築するという意識が必要になります。

 

会社から見ればこのような意欲と意識のある人材を採用するように努力すべきですし、人材側からみたらそのような意欲と意識を持たないと、いくら何かのスペシャリストであってもそれだけでは会社から見たらいつ辞めるかわらない不安を感じる人材でしかないことを肝に銘じる必要があると思います。

 

「大転職時代の人材論」一覧はこちら

 

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【著者プロフィール】
海老一宏 (えび・かずひろ)
人材紹介コンサルタント。キャリアカウンセラー。アクティベイト株式会社代表取締役社長。
1957年、宮城県仙台市生まれ。中央大学卒業後、東証一部上場企業 品川白煉瓦株式会社(現、品川リフラクトリーズ)に入社。人事、経理、営業に携わる。1992年に起業し、レンタルビデオ・CDショップを開業。1店舗からのスタートで、FC本部の経営まで事業を拡大。2000年に人材紹介会社に入社し、トップエージェントとして活躍。2005年に独立し現職に。財団法人みやぎ産業振興機構のビジネスプロデューサーも務める。エージェント歴は15年。面談者は6000名以上。エン転職コンサルタントで6年連続利用者評価NO.1(当社調べ)。
著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』(ワニブックスプラス)、『一流と言われる3%のビジネスマンがやっている誰でもできる50のこと』(明日香出版社)。

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