ストレスチェック制度でよくある誤解~事例と対策
2016年10月27日更新
ストレスチェック制度を有効に機能させるためには、正しい理解と活用が欠かせません。そこで、誤解や間違いやすい事例への対策を解説します。
誤解されやすいストレスチェック
ストレスチェック制度はまだ始まったばかりですので、メンタルヘルス担当者でさえも誤解していることが多く、ましてや管理職や従業員ではほとんど人が誤解しているとさえ言えるでしょう。
ストレスチェックの目的についての誤解
誤解(1)ストレスチェックは病気を診断するものである
誤解(2)不調者を見つけるのがストレスチェックの目的である
誤解(3)医師の面接指導を受けるほど、自分は悪くはない
ストレスチェックはそもそもストレスの程度を測定するものであり、診断のツールではありません。しかし、検査だと言われると多くの人はあたかも診断であるかのうように誤解し、不調者を探すためのツールだと考えてしまいます。こうした誤解があるために、高ストレス者であることがメンタルヘルス不調であるかのように捉えられ、「自分はそんなに悪くはない」といった誤解にもつながります。
ストレスチェックでは病気の診断はできません。また、ストレスの程度についても統計的な信頼性はあるものの、個々人のストレスの程度を必ずしも正確に測定できるものでもありません。あくまでもストレス状態を推測するためのツールに過ぎないと知ることが必要です。
健康情報の取り扱いへの誤解
誤解(4)チェック結果を人事部や上司に見られるのが怖い
誤解(5)結果が悪いと昇進に響きかねない、周りの目が怖い
ストレスチェック結果は個々人の健康情報を含む機微なる個人情報であり、その取り扱いが厳格に定められています。結果を閲覧できるのは、人事評価等の権限を持たない実施者や実施事務従事者に限定されます。
その上で、「医師による面接指導」の申出を行った場合に限り、就業上の措置の必要性から事業者が結果を知ることとなります。また、この就業上の措置を実施する場合、従業員が不利益を被る取り扱いは法令により禁止されています。ストレスチェックは、あくまでも「従業員の健康づくり」を目的としたものです。
ストレスチェックの実施に関わるスタッフがこの点を十分に理解するだけではなく、全従業員への周知も必要です。
ストレス対策での役割の誤解
誤解(6)結果が悪いのは会社の責任だ。何とかしてほしい
誤解(7)管理職には、誰が不調者かを具体的に教えてほしい
ストレスチェックの結果は従業員1人ひとりが自身のストレス対策として活用するものであり、最初にまずセルフケアがあります。ここに、医師による面接指導を受けることも含まれてきます。そして、従業員には自己保健義務があり、セルフケアに努めることは従業員の責務です。
その一方に、事業者(管理職を含む組織)には従業員に対する安全配慮義務があります。健康を阻害するような働き方にならないよう配慮する義務です。メンタルヘルスケアは不調の原因を会社あるいは個々の従業員に押し付けるものではありません。従業員の義務と組織の義務、この2つの義務がそれぞれ車の両輪として機能することで、メンタルヘルスケアは達成できます。
【著者プロフィール】
小西喜朗 (こにし・よしろう)
ウェルリンク株式会社顧問、産業カウンセラー、教育カウンセラー。1984年、京都大学卒業後、編集者、ジャーナリスト等を経て、2000年にウェルリンク株式会社設立に参画。累計130万人以上が利用する「総合ストレスチェックSelf」を開発する他、メンタルヘルス研修およびコンサルティングを行う。メンタル法律問題研究会理事、日本マインドフルネス学会理事等を歴任し、職場のメンタルヘルスケアをリードする。共著に『自分で治すがん』(朝日新聞社)、『リラクセーションビジネス』(中央経済社)、「メンタルヘルス・マネジメント」(PHP研究所)、『ポジティブ心理学再考』(ナカニシヤ出版)など。