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グチをまき散らして職場のモチベーションを下げる人にどう対応する?

2017年8月18日更新

グチをまき散らして職場のモチベーションを下げる人にどう対応する?

職場でグチをまき散らして、周りのモチベーションを下げる人に、管理職としてどう対応するか――アドラー心理学の立場から解説します。

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どこの職場にもいるグチ男さん・グチ子さん

自分のキャパを越える仕事がどんどんやってきたり、忙しい日々が長い間続いたりすると、どうしても口をついて出てしまうのがグチ。でも、ところかまわず相手かまわずグチをまき散らしていると、職場のモチベーションをぐっと下げてしまう、ということに、本人たちは気づいていないようです。こんな悩み相談をいただきました。

【質問】食品メインの大規模スーパーマーケットの課長職です。大都市のベッドタウンの店舗で、売り上げも非常によく、チェーンのなかでも優良店舗と言われています。来店者数も全国トップクラスです。ただ、私の部下の若手社員と、ベテランパートさんが、口さえ開けばグチばかりこぼしています。「忙しい」「疲れた」「腰が痛い」「休憩時間が短い」「業者の対応が悪い」「本部の指示が悪い」「ほかのスタッフがちゃんと働かない」などなど。ひとつふたつであれば誰しも口に出してしまうものだと思いますし、私自身も時には言っていると思います。でも、彼らは一日中ずーっと口にしているので、聴くほうはうんざりしてしまいます。周りの士気にも関わるのでやめてほしいと注意をしたのですが、どうやら本人たちはグチを言っている自覚がないらしく、しばらく経つとまた始まります。仕事自体は二人ともミスなくやってくれているので、そこは問題ないのですが......。(38歳 大手スーパー課長)

どこの職場にも、老若男女問わず一定数いらっしゃるのがこのタイプ、グチ男さん・グチ子さん。「あー、もうこんな仕事やだやだ!」「早く帰りたいなー」「めんどくせえなぁ」「最悪だわ......」こんな言葉を声に出して聞こえよがしに言われると、「黙って仕事できないの?」とイヤミの一つも言いたくなります。グチのオンパレードなんて、誰も聞きたくありません。そして誰かが注意しようものなら「あーあ、怒られちゃったよ、すいませんねえ」とふてくされたり、「本当のこと言って何が悪い!」と逆切れしたり。ひどいのは上記のご相談者のそばにいる方のように、自覚がない状態。直るわけがありません。

「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属す」

こんなとき、周りはどうすればいいのでしょう。「黙って聞く」「うんざりする」以外に何ができるのでしょうか。少なくともひとつ、自分で決めてできることがあります。それは、自分だけでも「楽観的」でいる、ということです。19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの哲学者アランは、『幸福論』(集英社文庫)のなかでこう述べました。

「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属す」。

悲観主義や悲観的な考えというのは、気分や雰囲気に属す――例えばずっと天気の悪い日が続くと私たちの気持ちはどんよりとふさぎ込んできます。中央~北ヨーロッパの国々では、日照時間の少ない冬場の自殺率は、夏場に比べて格段に高くなるといわれています。同様に、職場などで誰か一人でもグチばかり吐いている人がいると、周りの士気に影響してくるのです。アラン曰く「成り行きに任せる人間はみんなふさぎこんでいるものだ」とのこと。声の大きいネガティブな人が一人いたら、そこに引きずり込まれて自分もどんよりしてしまうというのは多くの皆さんが経験なさっているのではないでしょうか。

しかしながら、アランは後半部分でこう言っています。「楽観主義は意志に属す」。どんなに周りがどんよりしていようと、どんなにネガティブな発言をする人が跋扈していようと、「がんばりましょう!」「私、やります!」「大丈夫ですよ、できますよ!」という思いは自分の意志に属しているのです。自分の胸をこぶしでトントンと叩くと、そこに「楽観主義」があるのです。アランはこんなふうにも言っています。「はじめはどんなに奇妙に見えようとも、幸福になることを誓わねばならぬ」。誓うのは、自分自身に対してです。「私は引きずられない」「私は巻き込まれない」「私は幸福になる」「私は幸福である」。それを決めるのは、自分の意志である、ということです。

不適切な行動に、あえて注目しない

もちろん最初はネガティブな人の発言にいちいちイライラするかもしれません。でも、その人に引きずられるかどうかは自分で決められるのです。ああ、またなんか言い始めたな、と思ったら、「華麗にスルー」することもできるはずです。その人があなたの目の前で、あなたに向かってダイレクトにグチを言うのであれば「やめていただけますか?」とお願いすることもできますし、そうでなく誰彼ともなくまき散らしているのであれば、「いちいち聞かない」「反応しない」も選べます。蝉の声のようなものだと思えば少し楽かもしれません。騒々しいですが、何かほかのことに集中していれば、いつの間にか気にならなくなります。さらにそれが人間の場合、あなたがいちいち反応しなければ、おそらくその人はそのうちにあなたの前では言わなくなります。「不適切な行動にあえていちいち注目しない」というのも、対人コミュニケーションの重要ポイントでもあります。

管理職としての対応

とはいえ、個人的にはそれで対処できても、チームをマネジメントする管理職の立場では、それだけで終わるわけにはいかないでしょう。周囲に対して目に余る悪影響が、ということであれば、適切な指導が必要になります。その際、感情的に「いい加減にしてくれよ、耳障りでみんな迷惑してるんだよ!」などと言うのではなく、あくまでも冷静に、やめてほしい発言を具体的に指摘することが必要です。

例えば、「あなたの仕事ぶりは高く評価しているけれど、○○という発言や▽▽という発言をここ○日間繰り返しているね。そのことについて○名からモチベーションに関わるとの報告があり、とても遺憾に思っている」というように伝えます。自分がグチを言っていることに気づいていなかった人も、具体的に指摘されれば意識するようになりますし、自分のグチが周りに悪影響を与えていると知れば、発言する内容や場所にも配慮するようになって、グチはトーンダウンするでしょう。

もしかしたら、「グチを言えなくなって、当人がストレスをためることになるのでは......」という心配をされる方がいらっしゃるかもしれませんね。であれば、具体的な指摘に「何かつらいことあったら私に相談してほしい。力になるので」とひと言添えるとよいでしょう。ただ、こうしたことを言っても、あえて相談しにくることはまずないと思われます。そもそもこうした人がまき散らしているグチは、真剣な悩みではないことが非常に多いものだからです。

「アドラー心理学に学ぶ『勇気づけ』の職場づくり」一覧はこちら

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【著者プロフィール】

永藤かおる(ながとう・かおる)

(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。

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