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チャレンジングな組織風土をつくるには?

2019年8月12日更新

チャレンジングな組織風土をつくるには?

あらゆる組織で変革が求められている今こそ、リーダーが率先してチャレンジするとともに、部下の失敗を責めることなく、そこから学びを得るような組織風土が求められます。

「人材開発文化」とは?

「企業は人なり」とは言い古された感のあることばですが、昨今の厳しい経営環境のもとでも成長を続ける企業を見るにつけ、このことばの正しさを実感します。各社とも自社の人材を育てるために、時間とお金と労力を投入していますが、期待以上の成果が上がっている企業は案外少ないように思われます。

ではなぜ、人材育成の効果が上がらないのでしょうか。その疑問に対する答えを提示してくれるのが「人材開発文化」(※)という概念です。

人材開発文化とは、組織構成員に対し「変化する状況に適応し、新しい仕事のやり方を考え出す」よう奨励する規範を指しますが、このような文化が存在する組織とそうでない組織の間では人材の成長に格差が見られるというのです。米国での実証研究に基づいて導き出された概念ですが、わが国の産業界に置き換えても十分納得性のある考え方と言えるでしょう。

※デイビスとイースタヴィスミスが5つの企業に勤務する60名のマネジャーに対してインタビュー調査を実施して導き出した概念

失敗を恐れず挑戦する姿勢が求められている

実際、厳しい環境のもとでも成長し続けている企業には、過去の成功や前例にとらわれることなく、常に新しい発想で仕事を進める企業文化が根付いていると言われています。こうした文化が、組織メンバーの発想を柔軟にし、積極果敢に挑戦する姿勢を後押しする結果、個人の成長と組織の活性化が実現するのです。

新しいやり方に失敗はつきものですが、畑村洋太郎氏の著書『失敗学』によると、失敗には「良い失敗」と「悪い失敗」の2種類があり、「良い失敗」には、ものごとの新しい側面の発見があり、新しい創造が生まれるということです。まさに失敗は成功の母。失敗を恐れず果敢に挑戦し、行動する姿勢が求められているといえるでしょう。

しかし、現状はどうでしょうか。組織においては、成果主義の進展の結果、失敗によって評価を下げられることを恐れ、達成可能な無難な目標を立てる社員が増える一方、成功する保証はないけれど、とにかくチャレンジしてみようという発想の大きな社員が減る傾向にあります。

また、「起業」という観点から見ますと、わが国は制度面の未整備もあって、一度でもビジネスに失敗すると敗者復活は難しいため、欧米に比べて起業家精神が育ちにくいと言われています。

チャレンジングな組織風土をつくるには

このように、現在の日本社会には、失敗を恐れ、チャレンジを回避するような"安定志向"の人材が増えつつあるのですが、戦後の経済復興期には、失敗を恐れないリーダーが少なからず存在していました。その中の一人、松下幸之助は、失敗について以下のように述べています。

「『七転び八起き』ということわざがある。何度失敗しても、これに屈せずふるい立つ姿をいったものである。だが、七度転んでも八度目に起きればよい、などと呑気に考えるならば、これはいささか愚である。『転んでもただ起きぬ』心構えが大切。このことわざは、意地きたないことの代名詞のように使われているが、先哲諸聖の中で、転んでそこに悟りをひらいた人は数多くある。転んでもただ起きなかったのである。意地汚いのではない。真剣だったのである。失敗することを恐れるよりも、真剣でないことを恐れたほうがいい。真剣ならば、たとえ失敗しても、ただで起きぬだけの充分な心構えができてくる」(松下幸之助著『道をひらく』(PHP研究所)より抜粋)

あらゆる組織で、変革が求められている今であるからこそ、リーダーが率先してチャレンジし続けるとともに、部下の失敗を責めることなく、そこから新たな学びを引き出すような雰囲気や仕組みを作る必要があります。

現場に「人材開発文化」が根づいているか

人材開発に関して構想を練る際にも、「どんな研修をどの程度実施するか」という研修計画を立てることはもちろん重要ですが、併せて「現場に人材開発文化が根づいているか」という視点から組織風土の現状を把握することが重要になってきます。

そのためには、社内に閉じこもって議論したりアイデアを出したりするだけではなく、実際に現場に足を運んで、そこで働く人たちと話をするなどして現場の文化を肌で感じるような取り組みが必要です。 

人事・人材開発スタッフの方がたには、現場重視で行動する姿勢が今まで以上に求められていると感じる昨今ですが、いかがでしょうか。

松下幸之助5つの原則研修プログラム

的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長。1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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