人が育つ組織が重要視している「気づきの力」とは?
2019年8月28日更新
人が育つ組織が重視している「気づきの力」。どうすれば高めることができるのでしょうか。
気づきの力がなぜ大切なのか
気づきの力が優れている人は、なぜ仕事ができる人に成長できるのでしょうか。
たとえば、接客業の人たちにレベルの高い接客トークのスキルを伝えたとします。しかし、その接客トークのスキルをいくら学んでも、そのスキルを現場で使える人と使えない人に分かれてしまいます。
ではなぜ学んだスキルを使える人と使えない人に分かれてしまうのでしょうか。「現場に出たらつい忘れてしまって......」というのは論外ですが、使えない人たちの多くは「今、まさにここが、学んだスキルを使うタイミングだ」ということに気がつけないのです。
使うべきタイミングに気づけないから使えない、これは気づきの力が低いことによるものです。一方、気づきの力が高い人は学んだスキルを使うべきタイミングに気がつくことができるので、学びを行動に変え、仕事の成果や自己成長につなげていくことが出来るのです。
気づきの力は、人の成長に関わる、より本質的な能力
上記の例は、接客トークについての話ですが、実はこの気づきの力というものは人の成長を大きく左右する、とても重要な能力です。仕事ができる人は「コミュニケーション能力が高い、勉強熱心、気が利く、手先が器用」といった特徴がありますが、これらのほとんどは気づきの力が高くなければ成立しないものなのです。
たとえば、コミュニケーション能力や気が利くといった項目は、相手の関心事や細かな変化に気がつけるかどうかです。勉強熱心であることや手先が器用であることも、それ自体が仕事の成果に直結するというよりは、接客トークの例と同様でその知識や技術を活かせるタイミングに気づけるかどうかということがあります。勉強好きな人、手先が器用な人でも、仕事ができない人というのはいるものです。
どうすれば気づきの力を高めることができるのか?
気づくとはつまり「これまで意識できていなかった細かなところにまで目や心が行き届くようになる」ということです。では、どうすれば気づきの力を高めていくことができるのでしょうか。
筆者が思うに、気づきの力を養うための、即効性がある手っ取り早い方法はないように思います。だから、「分かっていても真似できない」という優れた人や組織があるのです。
しかし、即効性はなくとも、継続して積み重ねていくことでゆっくりと磨いていく方法であれば、いくつか効果的な取り組みはあります。それは、「掃除をすること」や「花を育てること」、「目的を考えながら仕事をすること」、「目の前の仕事をできるだけ丁寧に行うこと」などです。それらを職場で日々の取り組みとして行っていくのです。
人が育つ組織づくりをしている会社は、ほぼ例外なく上記のような特別ではない取り組みを継続しています。そして、人が育つ組織づくりをしている会社では、上記のような取り組みを継続する中で、ひとつ重要なポイントを押さえています。それは何かというと、上記の取り組みの目的を「社員の感性を磨くため」とか「気づきの力を養うため」と、明確に定義づけ、社員全員に繰り返し伝えているのです。ですので、掃除やお花の世話などに取り組む社員側も、さぼったりするのではなく、会社の実施目的に則して、「気づきの力を養うための訓練」と心得て、丁寧に取り組む姿勢を持っているのです。
実はその重要ポイントを押さえずして、表面的にやり方だけを真似して取り組んでいる組織は沢山あります。そのような組織では、掃除も植物の手入れも社員にとっては「面倒くさい作業」として、会社にやらされているだけになっています。
目的を明確にしたうえでの取り組みを継続することで、少しづつ少しづつ取り組む人々の感性が磨かれていき、やがて「美しいものを美しいと」「危険なものを危険と」「汚れている所を......」「不具合を......」「改善点を......」「課題を......」「仲間の不調を......」「お客様の要望を......」といった具合に、様々なことに気づける人になっていくのです。
延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。