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レピュテーションリスクとは? 事例や意味をわかりやすく解説

2024年2月 7日更新

レピュテーションリスクとは? 事例や意味をわかりやすく解説

昨今発生している企業の不祥事やSNS上の情報拡散などで、自社のレピュテーションリスクが心配になる方もいるのではないでしょうか。本記事では、レピュテーションリスクの概要や発生する原因、回避方法などについて解説します。レピュテーションリスクを理解し、対策を講じる際の参考にしていただけます。

INDEX

レピュテーションリスクとは

レピュテーションリスク(レピュテーショナルリスク)とは、企業に関する否定的な評価・評判が世間に周知されることで企業の信用やブランド価値等が悪化し、結果的に損失を被るリスクをいいます。企業に関するネガティブな評価・評判は、企業の信用やブランド価値を悪化させ、顧客や取引先離れを引き起こし、社員の不安を増大させます。それが、業績の低下や倒産を招くこともあります。
経済産業省の「事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業」では、企業が事業活動に影響を与えると認識しているリスクファクターとして「技術・製品要因リスク」「市場リスク」「信用リスク」「情報システムリスク」をあげていますが、それに次ぐリスクとしてレピュテーションリスクを位置づけています。
企業が健全な経営を続けるためには、レピュテーションリスクは放置できません。ここからは、レピュテーションリスクが重要視される理由や、似た意味で使用される言葉との違いについて解説します。

参考:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」

レピュテーションリスクが重要視される理由

レピュテーションリスクが重要視されるようになった背景には、インターネットの普及やSNSによる情報発信が容易になったことが大きく影響しています。企業が情報発信してブランド力を高めやすくなった一方、個人が発信する情報も影響力をもつようになりました。事実かどうかに関わらず、一度発信された情報は短期間で拡散され、多くの人々に情報が行きわたります。
そのように影響度が大きいにも関わらず、企業側が完全にコントロールすることが難しいのが、レピュテーションリスクの特徴です。企業にとって顧客や取引先を含めた社会的な信用は、事業を継続させる上で重要な財産であり、企業価値の毀損を防ぐためにもレピュテーションリスクを抑えるための対策を講じなければいけません。

オペレーショナルリスクやブランドとの違い

オペレーショナルリスクとは、主に金融機関において、担当者の業務やシステムが不適切であることによって引き起こされる損失の可能性のことです。事務的なミスやシステム障害、不正、災害などがこれにあたり、レピュテーションリスクと同様、常に管理が必要な要素です。
一方、ブランドは、レピュテーションと厳密に区別されてはいないものの、企業の価値を提供し、消費者側が受け入れることで確立されるものです。レピュテーションは世間の評判や評価など消費者目線である一方、ブランドは企業が意図したイメージも加わった評価といえるでしょう。一般に浸透している有名企業や大手企業では、ブランドという言葉が特に用いられます。

レピュテーションリスク7つの領域と事例

コーポレート・レピュテーションに特化した米国のリサーチ・コンサルティング会社Reputation Instituteは、以下の7つの領域がレピュテーションリスクに影響を及ぼすとしています。

●製品・サービス
●イノベーション
●職場環境
●ガバナンス
●市民性
●リーダーシップ
●パフォーマンス

それぞれの領域で成果を上げていることが消費者に認識されれば、企業の評価は上がります。一方、そうでない場合、レピュテーションリスクが高くなるといえるでしょう。以下では、それぞれの領域の内容や事例について紹介します。

1.製品・サービス

製品やサービスの「経済的価値や品質の高さ」に関する評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、製品に対するSNSや口コミサイト上のネガティブな情報の投稿などがあります。
投稿された内容が事実と異なる場合、その旨を証明した上で投稿されたメディアに働きかけ、削除依頼を要請することも可能です。投稿された内容どおりの問題点がある場合は、改善する必要性もあるでしょう。

2.イノベーション

イノベーションは「新しい製品・サービスを他者に先駆けて投入し、社会の変化に柔軟に対応できる企業である」という消費者からの信頼や評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、意思決定の遅さやサービスに革新性がなく、遅れていることへの批判が挙げられます。
対応方法として、企業がブランドイメージや掲げている理念に見合ったサービスを提供しているかどうかの見直しや改善が必要となります。また、社会の変化に応じて消費者の期待値も変わるため、組織が対応できているかを常に把握しておくことが大切です。

3.職場環境

職場環境は、「福利厚生が行き届いており、従業員にとって適切な職場環境が整えられている企業である」という消費者からの評価につながる領域です。レピュテーションリスクの事例として、労働環境の悪さを訴える従業員からのSNSや転職メディアへの投稿などがあります。
労働環境や人間関係の悪さなどが広まると、必然的に企業へのイメージも低下するでしょう。採用活動においても優秀な人材の確保が難しくなる可能性もあります。働き方の見直しや、従業員の満足度調査による職場環境の把握が有効です。

4.ガバナンス

ガバナンスは企業のあり方として「オープンかつ透明で、公正なビジネスをおこなう企業である」という消費者からの信頼につながる領域です。レピュテーションリスクの事例としては、不正競争防止法違反の指摘や、詐欺まがいのような販売方法をしている旨がSNSなどで拡散されるなどがあります。
法律違反をしている場合は論外ですが、健全な経営に努めている場合、誤解を与えたり批判されたりなどに至った原因を明らかにしなければいけません。

5.市民性

市民性とは「地域社会と環境に配慮し、社会貢献に寄与している企業である」という評価が求められる領域です。レピュテーションリスクの事例では、環境に悪影響を及ぼす製品であることをSNS上で指摘されたり、産業廃棄物の不法投棄を拡散されたりなどがあります。
特に人命にかかわるような影響をもたらす行いは、企業の評判が下がるだけではなく社会的な信用の失墜につながるでしょう。企業市民として高い意識をもち、地域や環境に配慮した取り組みができているかを見直す必要があります。

6.リーダーシップ

リーダーシップの領域は「卓越したマネジメント力と将来の明確なビジョンをもち、適切に組織されている企業である」という企業のイメージにつながります。レピュテーションリスクの例としては、経営陣の不祥事やスキャンダルにまつわる情報の拡散などがあります。
また、ハラスメント行為や不当解雇などの問題も、リーダーシップに関わる事象といえます。信頼できないリーダーが経営する企業には、消費者もネガティブな印象をもちやすいでしょう。組織を牽引する存在である経営陣の不祥事は、企業イメージに大きく影響します。

7.パフォーマンス

パフォーマンスは「高い収益性と将来性をもつ企業である」という評価につながる領域で、企業のパフォーマンスの高さともいえます。レピュテーションリスクの事例としては、経営状態が悪化しているという噂や、成長が芳しくないなどとの情報が噂されることです。
経営状況に関して社外で噂されることは、たとえ事実無根であっても、資金繰りなどに影響が出ることもあります。企業が安定した経営ができていることを示せるような情報開示や、生産性を向上するための組織改革への取り組みが必要です。

参考:損保総研「損保総研レポート レピュテーション・リスクと保険」

レピュテーションリスクの具体的な発生原因

レピュテーションリスクの具体的な発生原因

レピュテーションリスクの発生原因としては、以下の6つの要素があります。

●従業員からの内部告発
●従業員による不祥事
●第三者による根拠のない風評被害
●商品やサービスに対する顧客からのクレーム
●同業他社の業績悪化・不祥事
●行政処分・行政指導

従業員からの内部告発

従業員からの内部告発は、レピュテーションリスクにつながる原因の1つです。長時間労働やハラスメントなど、労働環境に問題がある企業の場合、内部告発する従業員が出てくる可能性が高くなります。
内部告発の手段として挙げられるのは、社外の監督機関や報道機関への告発、SNSへ投稿などです。企業の問題が世間に明かされると、従業員への同情心から厳しい意見が向けられるでしょう。企業のネガティブな評判が広まり、イメージの低下につながります。
従業員の内部告発によるリスクを抑えるためには、労働環境の整備や働きやすい組織風土の構築、従業員の組織に対するエンゲージメントの向上が効果的です。

従業員による不祥事

従業員による不祥事は、正社員やアルバイト、派遣社員を問わず、企業の責任が問われます。たとえ1人の不祥事であっても、企業全体の評価につながるでしょう。世間に広まると、企業に対するネガティブなイメージが広まります。
例えば、アルバイトの従業員が、勤務中に職場でふざける不適切な様子をSNS上に投稿した「バイトテロ」が問題になった事例もあります。こうした事例では、従業員の教育や管理体制が問われ、世間からの信頼が得にくくなります。
従業員による不祥事は、マネジメント層による教育や監視で防げるものもあります。雇用形態に関わらず、コンプライアンスへの意識を醸成できるような教育体制を構築することが大切です。

第三者による根拠のない風評被害

第三者による根拠のない風評被害は、事実の有無に関わらず拡散されることが多いものです。その場合、早急に事実無根であることを表明する必要があります。事実と異なることを証明するためには、普段から誠実な対応を心がけることが大切です。
企業の信頼性が確立されていれば、拡散された情報に流されない消費者もいるでしょう。必要に応じ、掲載されたメディアに削除依頼を働きかけるなどの対応も求められます。

商品やサービスに対する顧客からのクレーム

企業の製品の品質やサービスが低下し、顧客のクレームや悪評が広がることも、レピュテーションリスクの原因の1つです。SNSや口コミサイトに投稿されると、あっという間に拡散されます。さらに、ほかの消費者が同じような意見をもっている場合、より大きな悪評を生むでしょう。批判的なクレームが続くと、企業のイメージダウンにつながる可能性があります。

同業他社の業績悪化・不祥事

自社に問題がなくても、同業他社の不祥事や業績の悪化で、レピュテーションリスクにつながることもあります。自社も同じような問題を起こすという疑念をもたれたり、社会情勢によっては業界自体が不安視されたりすることもあるためです。
自社が健全な経営体制であることを発信し、同業他社の問題で揺らがない信頼を獲得し続けなければいけません。

行政処分・行政指導

法令違反を犯して行政処分や行政指導を受けると、不適切な経営をしていたとして世間に広まります。当然、ネガティブなイメージが浸透するでしょう。さらに情報が拡散されると、レピュテーションリスクが顕在化して信用が失われる原因となります。
経営層がコンプライアンス経営を進めることはもちろんですが、従業員に対しても日頃からコンプライアンス教育を徹底することが重要です。

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レピュテーションリスクを回避するための方法

レピュテーションリスクを回避するためには、主に以下の4つの方法があります。

●積極的に情報発信する
●労働環境の改善を図る
●監視・チェック体制を強化する
●従業員教育を徹底する

レピュテーションリスクはさまざまな要素が絡んで発生するため、日頃から未然に防ぐための施策が大切です。ここからは、レピュテーションリスクから企業や従業員を守るための方法を解説します。

積極的に情報発信する

SNSなどを用いた積極的な情報発信は、レピュテーションリスクの回避に効果的です。企業側から発信することで、個人的な意見や誤解を防ぎやすくなります。例えば、SNS上で悪評が広まった場合、企業が何の反応もしていなければ情報がそのまま広がってしまうでしょう。
企業から頻繁に情報発信を行うことで、消費者が悪評だけを鵜呑みにせず、正しい情報を受け取れます。偏った情報によるレピュテーションリスクを防止するためには、積極的な情報発信がおすすめです。

労働環境の改善を図る

労働環境の改善は、レピュテーションリスクの未然防止に効果的です。サービス・商品の品質低下や従業員の不祥事、内部告発といったリスクは、労働環境の影響が大きいといえます。たとえば長時間労働によって従業員が疲弊していると品質に影響し、職場環境に不満があれば内部告発につながります。
従業員の満足度調査やアンケートなど、意見を収集できる機会を設けることで、従業員の現状を理解できます。また、従業員のエンゲージメントを高めるため、1on1ミーティングのように、コミュニケーションが活性化できるような取り組みも効果的です。

監視・チェック体制を強化する

企業の監視やチェック体制の強化も、レピュテーションリスクを回避するための対策です。監視が行き届いていることで、不祥事の抑止力になったり、不正への速やかな対処ができたりするでしょう。経営陣の相互間による監視に加え、実際の業務に関するチェックを徹底する必要があります。
しかし、企業が大きくなるほど細部まで監視が難しくなることが難点です。そのため、現場ごとのマネジメント体制を構築することが求められます。また、社内で隠ぺいや誤情報の共有を防ぐため、外部の監査を利用することも1つの手段です。

従業員教育を徹底する

従業員への教育を徹底することは、レピュテーションリスクを防ぐために欠かせません。従業員のコンプライアンスに対する意識の高さは、不祥事やトラブルの発生の未然防止につながります。コンプライアンスや情報セキュリティ、ネットリテラシーなどの教育を定期的に実施したり、業務マニュアルなどを見直したりすることが効果的です。
また、それぞれの教育を階層別に実施することで、より高い効果が期待できます。例えば、社会人になって間もない新入社員には、ネットリテラシーなどの教育で、基本的な知識を身につけてもらうことが必要です。ハラスメントを起こす立場になりやすいマネジメント層に対しては、ハラスメント防止教育や適切なマネジメント、部下指導の教育が求められるでしょう。

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まとめ:必要な対策を講じレピュテーションリスクを回避

レピュテーションリスクは、企業のイメージをネガティブにするばかりか、状況が悪化すると事業継続の危機にまで及ぶこともあります。レピュテーションリスクの発生原因はさまざまで、従業員による不祥事から事実無根の噂など、企業側ではコントロールが難しいのも特徴の一つです。そのため、リスクとなり得る7つの領域や発生原因について理解し、従業員の教育や労働環境の改善など、対策を立てておくことが不可欠です。

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