野球型VSサッカー型――これからの人事は「働き方改革」を実現する組織開発を
2017年9月 1日更新
組織を語るとき、「野球型」か「サッカー型」かで対比されることがよくあります。あなたの会社はどちらでしょうか。「働き方改革」が成功するかしないか、その成否は、組織の在り方が大きく影響します。今回は「働き方改革」の視点から、組織開発と人事の役割についてお話します。
野球チームはトップダウンの管理型組織
冒頭の質問ですが、「野球型」「サッカー型」のどちらが良い、悪いということではなく、時代や環境によって、会社の規模や風土によって違ってきます。
まず、野球では監督やその意向を受けたコーチが指示を出し、選手はその指示通りにプレーすることが求められます。また各選手の役割が明確になっており、ポジションや打順はあらかじめ決められています。そして、攻撃と守備も固定的に交互に展開します。
ですので、野球型の組織は、監督が戦略や戦術を練り、采配を振るう管理型の組織です。会社にあてはめると、経営者がトップダウンで製造や営業、事務など現場に指示するような組織です。
サッカーチームは変化に臨機応変な自律型組織
一方、サッカーでは、監督が試合中にプレーを指示することはありません。試合が始まれば、選手はポジションやフォーメーションを流動的に替えながら、自律的に動き回ります。野球と違い、サッカーは監督が考えた戦略・戦術に基づき、選手が試合の展開や状況に応じて臨機応変にプレーしていくのです。
会社にあてはめると、サッカー型の組織は、経営者が経営方針や戦略を考え、やり方は現場の社員に任せるといった、自律型の組織なのです。
これからの組織は「野球型」か「サッカー型」か
このように、野球型とサッカー型では、リーダーの役割やマネジメントの在り方が大きく異なります。
従来は経営者の下に事業部があり、その下に部があり課があるピラミッド構造が有効でした。しかし、そうした管理型組織では、急速に変化する環境に適応できなくなりました。これからは、環境変化への柔軟な対応と素早い意思決定ができる組織が求められます。
そこで、先進的な企業は、人材開発と組織開発の両面から改革を推進しています。これまで多くの企業が人材開発に取り組んできましたが、組織開発という視点はあまり必要ではありませんでした。しかし、「働き方改革」が叫ばれている現在、職場環境の改善や組織改革など、組織開発を組み入れた人事施策が必要であると考えます。
実際、自律型社員を育成する研修と併せて、自律型組織に変革する研修のご依頼が増えてきています。
サッカー型の組織が働き方改革を実現する
インターネットやSNS、スマートフォンの進化が、業務プロセスや指示・命令・報告などのコミュニケーションを劇的に変えました。それに伴い、仕事のしかたや組織のあり方も自律型に大きく変わろうとしています。そして、「働き方改革」がその動きをさらに加速させています。
「働き方改革」というと、長時間労働の是正、女性の戦力化が取り上げられることが多いのですが、「働き方改革」に成功している企業がやっていることは、「働きやすい職場づくり」です。
「働きやすい職場」は、社員が管理されるのではなく、主体性を持って自律的に動く職場です。そういう意味で、会社組織は「野球型」ではなく「サッカー型」でないと働き方改革はうまくいきません。
つまり、「働き方改革」が成功するか否かは、自律型人材の育成と自律型組織の構築が鍵を握っています。
人事が取り組まなければならない組織開発とは
労働時間を短縮して、成果を今まで以上に上げるためには、会社はいろいろなムダを削減し、働きやすい職場環境を整えなければいけません。例えば、以下のようなことです。
(1)スマートフォンやタブレットの支給
(2)会議資料や書類のペーパーレス
(3)ミーティングの時間制限とWEB会議
(4)定例事務の機械化・アウトソーシング
(5)テレワークやモバイルワーク
また、人材開発による個人の生産性向上だけではなく、組織開発によるチームの生産性向上も図らなければなりません。
今や、大企業であっても中小企業であっても、製造業でもサービス業でも、「働き方改革」、組織改革は待ったなしです。サッカー型の自律型組織に変革し、チームワークと助け合いによる創造的協調性を発揮する組織開発に取り組むことは、人事担当者にとって喫緊の課題といっても過言ではありません。
「働き方改革」は、人事の役割を超えた領域になり、どのように取り組んでいけばいいのか難しい課題ですが、人材開発と組織開発の両方の視点から、会社と従業員、経営と現場に貢献する人事施策を推進することが、人事の進化につながると考えます。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)