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マネジメントとは? 5つの機能やマネジメント能力を強化する方法を解説

2022年11月14日更新

マネジメントとは? 5つの機能やマネジメント能力を強化する方法を解説

昨今、マネジメント能力の強化は、民間企業や公的機関、NPO法人など、あらゆる組織で課題となっています。今、なぜマネジメントなのか、そしてマネジメント能力を強化するにはどうすればいいのかを解説します。

INDEX

マネジメントの定義

昨今の変化の激しい環境のもと、安定的に仕事上の成果を上げ続けるためには、組織の中でマネジメントを機能させる必要があります。そうした状況を背景に今、多くの企業や行政機関等で、管理職を対象にした「マネジメント研修」が盛んに実施されています。

マネジメントについて、PHPゼミナールでは「組織の目的と目標を明確にした上で、五大経営資源(人、モノ、お金、時間、情報)を一定の基準・ルールに基づき、最大限に有効活用し、最大の成果をあげること」と定義づけています。この定義は長文ですが、その本質をシンプルに表現すると、Getting things done through others.(※1)となります。つまり、マネジメントとは、他者を通じてものごとを成し遂げることなのです。

※1 米国の経営学者 メアリー・パーカー・フォレット(1865-1933年)のことばとして紹介されている

マネジメントの5つの機能

マネジメントについては、これまで多くの学者やコンサルタント、経営者によって、さまざまな理論や法則に関する議論が展開されてきました。ここでは、古典的経営学研究の大家 アンリ・ファヨール(1841-1925年)が提唱した「マネジメントの5つの機能」をご紹介します。

1.計画(Planning)機能
これから起きることを予測して計画を立てる

2.組織化(Organizing)機能
計画実行への組織体制づくりと仕事の適正な割り当てを行う

3.指令(Commanding)機能
実行に向けてメンバーにわかりやすく指示する

4.調整(Coordinating)機能
成果を出すために、関連する仕事や部署と調整を図る

5.統制(Controlling)機能
計画と現状のズレを修正する

マネジメントの5つの機能は、約100年前に提唱されたものですが、今なお経営学の主流の理論のベースにある概念です。下図は、誰もが知っている「マネジメントサイクル(PDCAサイクル)」と5つの機能の関係性を示したものですが、ご覧の通り、両者は密接不離の関係にあることがわかります。

マネジメントサイクル(PDCAサイクル)と5つの機能の関係性

新しいマネジメント手法「OODAループ」

前述の通り、ファヨールの「マネジメント5つの機能」は、長らく経営学の分野の主役を張ってきましたが、昨今、その限界を指摘する意見も目立ちつつあります。
5つの機能の限界を主張する論者が問題視するのが、計画機能の難しさです。つまり、変化の激しい時代にこれから起きることを予測するのは至難の業だと言うのです。確かに、VUCAの時代とも言われる現代、1年先のことでさえ何が起きるか予測することができません。
こうした状況のもと、新たに注目を集めているのが「OODAループ」です。OODAループは、Observe(観察)- Orient(情勢への適応)- Decide(意思決定)- Act(行動)の4つのループによって、健全な意思決定を実現するという概念です。もともと、軍事行動における意思決定ツールとして考案されましたが、今では組織経営における新しいマネジメント手法として注目を集めています。
変化の激しい時代は、固定的な計画に基づいて活動するのではなく、今、目の前で何が起きているか子細に観察しながら、それに対応し続けていくほうがロスも少なく、パフォーマンス向上につながりやすいでしょう。従来のマネジメント手法ではなく、OODAループが注目を集める理由もそうした事情が背景にあるのです。

マネジメント能力を高めるために

冒頭で申し上げた通り、組織を牽引するリーダーにはマネジメント力は必須の武器となります。そして、その能力を磨き高めるためには「コミュニケーション力」と「想像力」の強化が欠かせません。
マネジメントの要諦が、他者を通じてものごとを成し遂げることと説明した通り、人を動かさないと仕事にならないのでコミュニケーション力が重要なのです。また、変化の激しい時代にはOODAループが機能を発揮すると述べましたが、目の前の事象をしっかり観察(Observe)し、なぜこのような事象が起きているか分析しないと、情勢への適応(Orient)や意思決定(Decide)もままなりません。したがって、想像する力が必要なのです。

それぞれの力を高めるために焦ってはいけません。「量質転化」ということばがあるように、まずは量をこなすことです。つまり、職場におけるコミュニケーションの量を増やしたり、日々の仕事を振り返って想像する機会を増やすのです。そうした地道な努力が、コミュケーションの質、想像力の質を高め、ひいては卓越したマネジメント能力を身につけたリーダーへと進化・成長できるでしょう。

参考記事: 部下がわからない上司。フォロワー視点に立ったマネジメントとは?

部下のやる気を高めるマネジメントとは?

では、具体的に、部下のやる気を高めるためにはどのようなマネジメントが求められるのでしょうか。
やる気の高め方に関しては、これまでにたくさんの研究成果が発表されていますが、ここではモチベーションに関する代表的な理論とも言える「職務特性モデル」をご紹介します。

「職務特性モデル」(Job-Characteristics-Model)は、ハックマンとオルダムによって提唱された、「仕事の特性」と「やる気」との相関性を説明する理論です。このモデルでは、「5つの特性」がモチベーションを高めるための中核となる重要なファクターであると位置付けられています。

5つの特性

1)技能多様性(Skill Variety
単調な作業ではなく、自分が持つ多様な能力や強みを活かせる仕事であること

2)タスク完結性(Task identity
全体像を把握したうえで、始めから終わりまで関与できる仕事であること

3)タスク重要性(Task significance
他者の生活や社会に良い影響を与える重要な仕事であること

4)自律性(Autonomy
自分で目標や計画を設定するなど、自分の裁量で進められる仕事であること

5)フィードバック(Feedback
結果がどうなったのか、知ることのできる仕事であること

やる気向上につながる3つの心理状態

上記、5つの特性のうち、(1)技能多様性 (2)タスク完結性 (3)タスク重要性の3つが、「仕事の有意味感」(=価値のある仕事をしているという実感)につながります。また、(4)自律性は、「仕事の成果への責任感」(=成果を出すことに対する責任感)と関連し、(5)フィードバックは、「成果への知識」(=仕事の成果がどの程度なのかを知ることができる)と結びついています。
この3つの心理状態(有意味感、責任感、知識)を構築することで、モチベーションが高まるとされています。

「5つの特性」を意識したマネジメント

「5つの特性」を日々のマネジメントに適用するとどういうことが言えるでしょうか。
仕事の有意味感を高めるためには、その人の強みを発揮できるような業務の割り当てをし、その上でその仕事の全体像や意味・意義をしっかり伝える。そして、実際の業務遂行に関してはできるだけ任せることで、仕事の成果への責任感を高めていく。さらに、一連の仕事が終了した後には、的確なフィードバックを提供して成果への知識を与え、今後の改善につなげていく。
このようなマネジメントを日々心掛けることで、やる気の向上と経験学習が促進され、個人の成長と組織としての業績向上につながるでしょう。
マネジャーの方がたには、日常のマネジメントや部下とのコミュニケーションに関して、5つの特性という観点から時々自己点検することをお奨めしたいと思います。

参考記事:モチベーションとは? 上げる方法やマネジメントの在り方を解説

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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