部下のやる気を高めるマネジメント~「5つの特性」とは?
2020年12月21日更新
部下のやる気を高めるためには、どんな仕事をどんなやり方で割り当てたらいいのか。やる気の高め方に関しては、これまでにたくさんの研究成果が発表されていますが、本稿ではモチベーションに関する代表的な理論とも言える「職務特性モデル」をご紹介いたします。
「5つの特性」がモチベーションを高める
「職務特性モデル」(Job-Characteristics-Model)は、ハックマンとオルダムによって提唱された、「仕事の特性」と「やる気」との相関性を説明する理論です。このモデルでは、「5つの特性」がモチベーションを高めるための中核となる重要なファクターであると位置付けられています。
5つの特性
1)技能多様性(Skill Variety)
単調な作業ではなく、自分が持つ多様な能力や強みを活かせる仕事であること
2)タスク完結性(Task identity)
全体像を把握したうえで、始めから終わりまで関与できる仕事であること
3)タスク重要性(Task significance)
他者の生活や社会に良い影響を与える重要な仕事であること
4)自律性(Autonomy)
自分で目標や計画を設定するなど、自分の裁量で進められる仕事であること
5)フィードバック(Feedback)
結果がどうなったのか、知ることのできる仕事であること
やる気向上につながる3つの心理状態
上記、5つの特性のうち、(1)技能多様性 (2)タスク完結性 (3)タスク重要性の3つが、「仕事の有意味感」(=価値のある仕事をしているという実感)につながります。また、(4)自律性は、「仕事の成果への責任感」(=成果を出すことに対する責任感)と関連し、(5)フィードバックは、「成果への知識」(=仕事の成果がどの程度なのかを知ることができる)と結びついています。
この3つの心理状態(有意味感、責任感、知識)を構築することで、モチベーションが高まるとされています。
「5つの特性」を意識したマネジメント
「5つの特性」を日々のマネジメントに適用するとどういうことが言えるでしょうか。
仕事の有意味感を高めるためには、その人の強みを発揮できるような業務の割り当てをし、その上でその仕事の全体像や意味・意義をしっかり伝える。そして、実際の業務遂行に関してはできるだけ任せることで、仕事の成果への責任感を高めていく。さらに、一連の仕事が終了した後には、的確なフィードバックを提供して成果への知識を与え、今後の改善につなげていく。
このようなステップで仕事をしていくことで、やる気の向上と経験学習が促進され、個人の成長と組織としての業績向上につながるでしょう。
管理職の方がたには、日常のマネジメントに関して、5つの特性という観点から時々自己点検することをお奨めしたいと思います。
PHP研究所では、やる気向上のための各種マネジメント研修を取り揃えております。お気軽にお問い合わせください。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。