中堅社員の育成にあたって、押さえておきたい3つのキーワード
2017年8月 2日更新
中堅社員を育成するのは、企業の将来を考えたなら、急務かつ欠かせないことでしょう。ところが、私が企業内研修で体験していますのは、ここ何年か中堅社員の問題が多く、しかもそれは典型的なものだということです。
まじめに指示をこなす中堅社員
おしなべて「真面目」「言われたこと、指示はこなす」のです。ですから、研修の担当者から「ウチの社員はどうですか?」と尋ねられますと、年に何十回となく「真面目ですね」と答えています。しかし、これは必ずしもほめ言葉ではありません。
真面目なのだけれど、そのあとの問題は、おそらく中堅社員の育成を考えるにあたって人事の担当者、上の立場の方が徹底して意識するべきことなのです。はたして、御社の育成する側の方々は、しっかり意識しているでしょうか?
ということで、今回は三つの基本としてまとめてみました。
「挑戦」~周囲が励ましながら挑戦する体質に
今どきの中堅社員は真面目ですが、しかし自分から率先して行動したり、手を挙げることが少ないのです。
なぜでしょうか?
一昔前でしたら、率先して動かないのは権限が委譲されていないから、という意見も多くありました。ですので、もっと権限を与えて仕事を任せてしまうことにより、やる気も出てくるのだと。しかし、今は、それは彼らのやる気をそぎますし、実状に合っていません。
彼らの特性は「責任回避」だからです。
権限は欲しくないのです。それに伴う責任を背負いたくないからです。
真面目に上からの指示はしっかりこなすのですが、それ以上は率先してはしないのです。
ですので、育成する側にとっては、何か物足りないですし、おとなしいという評価になりがちです。
キーワードは、責任とか権限を持たせるのではなく、彼らに「行動してみること、自分からチャレンジしてみること」、つまりは仕事に挑戦していくことが楽しいものだ、ということに気付かせることです。
人より目立つと責任をとらなくてはいけない、真面目にしていればいい、という現状では仕事を楽しめないし、先もつまらない。しかし挑戦することで能力が開花していくし、何よりも充実した毎日が過ごせる。
ということを、言葉を変えて伝えます。まずは、周囲が励ましながら、挑戦する体質にしていくことです。
「信頼」~長期展望で信頼関係を築かせる
長期展望ができにくい、というのも彼らの特性です。嫌になったら、職場をかえればいいと潜在的に思う人も、残念ながら中堅社員にはいるのです。
そうなると、別に目先の仕事だけ大過なくこなせばいい。という短期の思考に陥りがちです。悪く言えば、その場しのぎで仕事に対処しがち。
短期の考えでは、お客様との長い付き合いを考えるような、信頼関係が築けません。
ですので、二番目のキーワードは信頼される人間になる、という意識を持たせることです。信頼を築くことを優先していけば、自然に長期的な付き合いになっていきます。結果として、いたずらに職場を変わるようなことも未然に防げます。
「成果」~自分なりに成果を出すことに価値を見出させる
先の、責任回避と同様に、研修をしていて感じる、中堅社員に共通した特性があります。もちろん例外はありますが、ここ何年か目につくということです。
それは、重圧に弱いということです。たとえば、仕事上で期待されたとします。先の挑戦する心ができていませんと、期待はある種の重荷、重圧となってしまうわけです。一般には期待すると人は伸びるものです。しかし、傾向として、その期待さえも、それを裏切ったらどうしようと、ストレスになってしまうのです。
肝心なのは周囲の期待があろうがなかろうが、自分なりに成果を出していくこと。そこに価値があるのだと自覚させることです。
成果が君なりに出せればいいのだと、そういう育成を御社では、していますか?
以上の3つが、まずは中堅社員を育成していく上での基本なのです。
責任をもたせるのではなく、挑戦していくこと、仕事に前向きに率先して取り組むことそのものに価値があると理解させること。長期的な人間関係に目を向けてもらうこと。
そのためには、その場しのぎでなく信頼関係を着実に築くことこそ大切なのだと気付いてもらうこと。
そして、期待にこたえるという重圧を重荷とさせないために、あくまでも自分の成果をあげることだけに専念していれば十分なのだとハードルを下げて見守ること。
中堅社員も、御社の創業時、そこまでいかなくとも十年前よりはずっとデリケートで打たれ弱くなっている。そんな、気配りと意識を持って、ともに成長していくつもりで育成していくのが理想です。