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20代社員のリテンションに失敗すると、どんな成長企業も必ず行き詰まる

2018年2月19日更新

20代社員のリテンションに失敗すると、どんな成長企業も必ず行き詰まる

人材育成をするうえで、社員の定着率を上げることは極めて大切です。慢性的な人材不足の中小企業では、誰もが課長に昇格し、優秀ではない上司のもとで若手社員が育たない状況が発生しがちです。中小企業で社員の定着率をどう高めるか、事例から考えます。

「売上10億円の壁」を乗り越えることができない会社

私が、2016年に取材した不動産会社(正社員数60人)は、当時、創業12年目で売上が7億円でした。いわゆる「売上10億円の壁」にぶつかっていたのです。

創業期から、社長以下、数人の役員と優秀な営業部員5人ほどで稼ぎ続けました。しかし、人材の底上げができていません。大勢の社員がチームとなり、稼ぐことができないのです。各自がそれぞれ独自の仕事の進め方をして、組織としてノウハウなどを共有することができませんでした。各々が支え合うこともありません。やりがいを感じることもなく、社員は30歳を前にして次々に辞めていきます。

結局、社長以下、数人の役員と優秀な営業部員5人ほどで業績を維持するものの、そこから一向に拡大しないのです。2年後の2018年には、売上が5億円にまで下がってしまいました。

この事例からは、多くの社員がチームとして業績を維持・拡大していかないと、やがては行き詰まることがわかります。本来は、全社員の7~8割以上の社員が、せめて5年以上は在籍し、仕事に習熟し、業績向上に力を注ぐことができるようにならないといけないのです。その意味でも、30代前半までの若手社員の定着率を上げることが、中小企業にとっては生命線といえます。しかし、それが実に難しいのです。

「倍率1倍」で課長に昇格

定着率が低いと、管理職のレベルは相対的に下がります。部下指導・育成力は弱くなり、不満を持つ一般職(非管理職)が増える可能性があります。30代前半までの若手社員が次々と辞めていく一因は、ここにあります。

私が10年ほど前から取材などで頻繁にうかがう高校・大学のテキストの教材会社(正社員数200人)の課長、部長のレベルは、他社と比べて高いとは言い難いものがあります。

5年ほど前に課長になった男性社員は1990年入社で、同期生は7人だったようです。5年前に本人に聞くと、同期生はすでに全員が退職しているとのこと。つまり、「倍率1倍」で課長に昇格しているのです。これでは、部下の指導・育成力に高いレベルを求めることはできません。

定着率が低いと、管理職として疑問符がつくような人が昇格する場合があります。その人の下では、部下はなかなか育たず、いつしかやる気を失い、辞めていくことになりかねないのです。今度は、30代半ばまでくらいに残った少数の一般職から管理職になる社員が現れます。その下で、新たな部下が苦しんでいくことになることになります。そして定着率がどんどん下がっていくという悪循環の構造になります。

3年間で10人が入社し、7~8人が辞める職場

この十数年、多くの会社では管理職としてするべきことが増えています。プレイヤーとして一般職と同じように大量の仕事をこなしつつ、マネージャーとして部下の指導・育成や部署の予算管理などの仕事も担います。

しかも、派遣社員や外部の会社などへのアウトソーシングが進んでいます。労働時間の規制も強くなり、時間内で大量の仕事を消化する必要に迫られているのです。相当にレベルの高いマネジメントが求められているのに、誰もが管理職になれるような態勢では、部下は育たないのです。

前述の教材会社では、ここ3年間で10人が入社し、7~8人が辞めているそうです。私はこの数人と話したことがありますが、上司に対し何らかの不満を持っていました。

若手社員の定着率を高める仕組みをつくる

中小企業では、課長補佐や主任などで、20代後半から30代半ばにかけての社員のレベルを上げることが急務です。この層は管理職候補生ですが、彼らをしっかりと育成することが、大企業のようにはできていません。

まず、この段階にいたるまでの社員(20代前半から30代半ばまで)の定着率を高める仕組みをつくることが必要です。20代で辞めていく人が多すぎるのです。

強く意識をしたいのは、管理職や管理職候補の社員との関わりをつくり、組織の一員であることを感じ取らせることです。たとえば、私が2017年に取材したIT企業(社員数150人)では、20代後半の社員が、自分が希望する課長や部長に約1か月間同行します。社内の会議に出たりする「シャドウイング」という取り組みも行われています。管理職の立場を体験してもらい、自分の近い将来の青写真を描くことができるようにしているのです。

会社全体で定着率を上げる取り組みを

2016年に取材した飲料水の関連商品のメーカー(社員数400人)では、60歳定年でいったん退職したエンジニアが雇用延長として勤務し、後継者育成のために、40歳ほど年下の20代の社員に仕事を教えています。会社は「コーチング料」として食事をしたりする経費を払います。この懇親を通じて、組織の一員であることや会社に残る意味を肌で感じ取らせるのです。

雇用延長のエンジニアは、20代の社員の仕事への姿勢や仕事の理解度、習熟度などを人事部や直属の上司に1か月に数回は伝えています。こうすることで、組織として人材育成を図っています。

このように、まずは、経営者が中心になって、会社全体で定着率を上げていこうという考えを共有すべきです。その姿勢があってこそ、役員や管理職、そして一般職がスクラムを組み、定着率向上への取り組みが実践できるのではないでしょうか。

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吉田典史(よしだ のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の観点から企業を取材し、記事や本を書く。人事労務の新聞や雑誌に多数、寄稿。著書に『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった...』(ダイヤモンド社)、『悶える職場』『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』(KADOKAWA/中経出版)など。

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