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自ら考え行動できる「主体的な人材」を育てるには?

2019年11月15日更新

自ら考え行動できる「主体的な人材」を育てるには?

変化の激しい経営環境において、自ら考え行動できる主体的な人材の輩出が、企業の喫緊の課題となっています。では、どうすれば主体性を育むことができるのでしょうか?

INDEX

企業が求める「主体性をもった人材」

日本経済団体連合会(経団連)が発表した「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査」によると、選考で重視した点の1位が「コミュニケーション能力」、次いで「主体性」となっています。この「主体性」は10年連続の2位となっているのですが、同様にいくつかの教育団体や調査機関から発表される「企業が求める人材像」に関する調査をみると、最近の傾向として「主体性をもった人材」の重要性が増しているということが言えます。これは裏を返せば、主体性をもった人材が企業の現場で少なくなったことを意味しています。
実際、管理職研修で、部下指導上の課題について受講生相互に意見交換をしていただくと、必ず出てくるのが「若手社員の育成に手を焼いている」という意見です。「主体性がない」「うまくいかない原因をすべて他人のせいにする」「元気がない」等々、受け身、他責で覇気がなく、言われたことだけ淡々とこなす若手社員をどう指導育成したらいいのかわからないと言うのです。
あらゆる業種で変革が求められている今、自ら考え行動できる主体的な人材の輩出は、人材開発における喫緊の課題とも言えるでしょう。では、どうすれば主体性をもった人材を育てることができるのでしょうか。

若手社員のやる気の低下が成長を阻害

人材育成の現場に身を置いて感じるのは、「やる気の低下が人の成長を阻害している」ということです。そして、やる気低下の原因をさらに追究していくと、結局はやる気を高めるような働き方が身についていないという真因が明らかになるのです。
同志社大学の太田肇教授の研究によると、やる気の源泉として「自己効力感」(自分の意志で仕事を十分にこなしているという感覚)や、「仕事への満足」(今の仕事が面白くて満足している感覚)、「お役立ち感」(仕事を通じて誰かのお役に立って喜ばれているという実感)などの因子が明らかにされています。
こうしたやる気の源泉は、受け身の姿勢や「サラリーマン的発想」からは生み出されにくく、主体的かつ自責の考え方、すなわち「自営業者的発想」へと意識転換を図らければ得られないものなのです。

松下幸之助「社員稼業」の考え方

松下幸之助は、仕事のやりがいを高めるための働き方として「社員稼業」という考え方を提唱し、その実践を著作や講演を通じて広く呼びかけました。

一言でいうなら、会社に勤める社員のみなさんが、自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか、ということである。そういう考えに立って、この自分の店をどう発展させていくかということに創意工夫をこらして取り組んでいく。そうすれば、単に月給をもらって働いているといったサラリーマン根性に終わるようなこともなく、日々生きがいを感じつつ、愉快に働くこともできるようになるのではないか

出典:『社員稼業』(PHP研究所)

「教えない教育」が人を育てる

この「社員稼業」で示された主体的な考え方を育むヒントは、伝統芸能や伝統工芸などの世界で伝承されてきた徒弟制度による能力開発・人づくりのあり方にも垣間見ることができます。
例えば、宮大工の世界では、親方と弟子は仕事以外の時間も含めて常に行動を共にしますが、肝心な技能伝承に関しては、親方はまったく教えてくれません。仕方なく、弟子は親方のやり方を観察し、まねをして試行錯誤を繰り返し、工夫しながら業の極意を体得していくのです。
こうした徒弟制度の根底には、「教えないことが人を育てるもっともいい方法である」という考え方があります。結局、教えすぎると、教えられたとおりにしか行動できない人材をつくってしまうことになるのでしょう。

「認知的徒弟制」

この考え方を現代企業の現場で応用しやすくアレンジしたのが、米国の認知学者BrownとCollinsが提唱する「認知的徒弟制」という概念です。この概念に則って、現場でのOJTのあり方を考えると、以下の4つのステップを踏むことになります。

ステップ1「モデリング」
上司が仕事のやり方を見せ、部下はそれを見て学ぶ

ステップ2「コーチング」
部下が仕事をしている間、上司は観察と助言を行う

ステップ3「スキャフォルディング」
部下にできることは自力でやらせ、できないところだけ上司が支援する

ステップ4「フェーディング」
だんだんと支援を少なくして、部下の自立を促す

教えない教育が人を育てるといっても、状況に合わせた指導法が重要であることは言うまでもありません。相手の成長度合が上がるにつれて、徐々に教える教育から教えない教育へと転換を図る必要があり、それを体系化したのが認知的徒弟制モデルなのです。

(参考図書:中原淳(2010)『職場学習論』東京大学出版会)

自ら考え行動できる主体的な人材を輩出するために、上司や先輩たちが身をもって手本を示し、若い人たちに実践させることは重要です。そんな地道な営みが職場に新しい風を吹き込み、やる気と活力に満ちた職場風土が醸成されていくのではないでしょうか。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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