対人コミュニケーション~人前で話すのが苦手な社員をどう指導する?
2020年2月 3日更新
新入社員や若手社員にとって、職場の周りの人はすべて年上、キャリアも上、自分が話をするときに緊張状態になっても仕方ありません。どうしたらうまくコミュニケーションできるでしょうか。
人前で話す機会はキャリアとともに増えていく
新入社員・若手社員が最も緊張するのは、たくさんの人の前で話すときではないでしょうか。あがってしまって、思ったことがうまく話せない状態は、想像に難くありません。
もちろん、「たくさんの人」というのが、どういう人なのか、どのくらいの数なのかは、仕事によって違いがあります。住民を前にした説明会もあれば、管理監督者の立場になると訓示のような一言が頻繁にある人もいますし、広報などの仕事であれば、新商品の発表会を行う人もいます。また社外の人だけでなく、会議での発言も、多数の参加者がいれば「あがり症」では困る場面が出てきます。
将来のそうした場面を考えると、あがり症の克服は避けて通れません。新入社員・若手社員のうちに人前できちんと話ができるように訓練しておくことが大切です。
対人コミュニケーションを苦手にする人は、ますます増えている!
もう十年は前のことです。「最近の新人は、隣の席の先輩にすらメールで話しかけ(?)ている」などという笑い話がありました。しかし、時が経ち、今やそれが常識となりつつあります。互いに別の仕事をしていたなら、いきなり声をかけて仕事を中断させるのは時間のロスでもあるし、むしろメールの方が効率的だというわけです。また、技術系の方が客先に行ったときに、挨拶もまともにできず、話も要領を得なかったいという話を最近聞きました。
このように昨今、仕事においても「対人コミュニケーション」の機会が不足しがちな傾向があります。そのため、多くの人の前で話すということ以前に、そもそも人と人とのコミュニケーションを苦手とする人が増えているのです。
つい最近、コンビニにはいった強盗が、メモに「カネを出せ!」と書いて店員を脅したという笑えないニュースがありました。この犯人は「言葉で伝える自信がなかった」という理由を逮捕後に話しているそうです。犯人の若者も、もしかしたら日頃の対人コミュニケーション不足の例かもしれません。
対人コミュニケーションを改善する方法とは?
では、新入社員・若手社員が、職場での対人コミュニケーションを改善するには、何から始めてもらうといいでしょうか?
それは、「周りから感じがいいと思われること」を繰り返し行うことです。たとえば、無表情でいるよりもスマイルの方が、感じがいいと思われるでしょう。「こんにちは」「ありがとう」「失礼します」「ごめんなさい」と声を出してあいさつする方が、無言でいるよりも良い印象を与えるものです。まずは、一つひとつ、できることを実行していってもらいましょう。基本は、繰り返しますが、「周りから感じがいいと思われるにはどうしたらいいか」を実行していくことです。
そうした積み重ねによって、コミュニケーションがうまくいくようになってくると、職場で人と話をするときに必要以上にあがったり、緊張したりといったこともなくなってきます。
緊張状態は人には伝わっていない
ここで多くの方が誤解していることをお伝えしておきましょう。もしもこれを知っていたなら、あがり症の人はもっと減るはずです。
みなさんご存じのように、若い世代の人は、自己顕示欲があります。ざっくり言ってしまえば、ユーチューブやインスタグラムなどのSNSにも、自分を見てほしいという気持ちが見られます。それだけに、本人は多くの人に見られていると思っていますが、実は見ているほうは、それほどハッキリ、しっかりと「観ている」わけではありません。人の視線というのは、それほどたいしたものではないのです。
多くの人の前で話すときに、緊張で脚がガクガクしているとか、体が震えている、頭が真っ白になっているなどは、見ている人はわかっていないものです。つまり、本人が思うほどには、周りには緊張していることが伝わっていない、見抜かれていないのです。
これは、私がプレゼンの指導をしていてわかったことです。それなら、あがっているのが伝わっているのではないか、と一喜一憂するなど時間のムダです。それよりも、一回でも多くリハーサルしておくことです。
事前準備、リハーサルを入念に!
リハーサルは、あがらないためには欠かせません。ここでいうのは「一人リハーサル」です。たくさんの聴衆がいるつもりで、一人で必ず声を出して練習します。こうして準備するメリットは、まず、自分だけだとあがらずできること。そして、時間の感覚をつかめることです。あがりの大きな原因は、「初めての経験」であることです。初めてのことは、緊張しやすいのです。リハーサルを入念にしておくと「初めて」ではなくなるため、確実に緊張が軽くなります。
新入社員・若手社員ですと、友人や家族に手伝ってもらう二人練習が効果的です。全くの白紙の状態で聞いてもらい、プレゼンの良い点、改善点を指摘してもらいます。上司との練習は、もっと慣れてからがよいのです。上司は「ダメ出し」が仕事といえるくらいですから。
もし、あなたがコメント役になることがあれば、「ここを改善したら良くなる」という言い方にしましょう。
「たとえば、一言でその主張をまとめたらどうなりますか? まずはしっかりと考えて結論をビシッと初めに提示して、あとからデータや理由を説明する構成にすると、わかりやすくなります」といったアドバイスを加えてあげるといいでしょう。
入念にリハーサルをしておくこと、そして、ひとことで結論を言ってから理由を説明するという構成にすること。これらを習慣にして経験を重ねていくと、「新入社員・若手社員の時はあがり症だったけど、いつのまにか克服した」といえるようになっています。
松本幸夫(まつもと・ゆきお)
人材育成コンサルタント。1958年、東京生まれ。「最短でできる人をつくるプロ」として、最前線を走り続けている。マスコミや流通、通信、製薬、保険、電気、金融、食品といった業界で指導を行い、営業をはじめとするあらゆる職種のプロを育成することに定評がある。自らスピード仕事術を実践。年間220回の研修、講演活動を行い、そのリピート率は92%を超える。NHKなどのテレビ出演も精力的にこなす。ベストセラーとなった『とにかく短時間で仕事をする!コツ』(スバル舎)、『仕事が10倍速くなるすごい!法』(三笠書房)、最新刊『仕事のできる人が絶対やらない質問の仕方』(日本実業出版社)など著書は220冊を超える。