事業継続のために求められるリーダーシップとは?
2020年9月30日更新
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って社会情勢が混乱する中、あらためてBCP(Business Continuity Plan;事業継続計画)の重要性が認識されるようになりました。
事業継続のために何をすればいいか、その解が見えにくい状況のもとでは、特定のリーダーが意思決定をし、それにメンバーが従うというマネジメントスタイルは通用しません。
今、必要なのは組織を構成する一人ひとりが、現場で[現実直視→仮説立案→実行→仮説検証→......]というサイクルを回すことです。そうした主体的な行動の総和が、危機を乗り切る知恵とエネルギーを生み出します。今まさに、全員でリーダーシップを発揮するという発想が求められているのです。
「全員発揮のリーダーシップ」とは?
リーダーシップというと「役職や権限、カリスマ性に依存するもの」「チームの前に出てメンバーを引っ張る・まとめる力」「天性の才能のようなもの」というイメージが一般的です。これらは、従来型のリーダーシップの一つの側面だといえます。
しかし、近年のリーダーシップ論では、従来の常識とは大きく異なる内容が議論されています。それが、「役職・権限などに関係なく、全員が発揮できるもの」「学習可能なもの」「目標達成のために他のメンバーに影響を与える、あらゆる行動」の3つです。
すなわち、「全員発揮のリーダーシップ」とは、職場にいる人であれば、誰にでも発揮できるものなのです。
「全員発揮のリーダーシップ」に必要なもの
「全員発揮のリーダーシップ」の視点では、些細な行動、地味な行為であっても周囲にポジティブな影響を与えるものは、すべてリーダーシップ行動であると解釈します。たとえば、「上司が忙しそうにしていたから資料作成の手伝いをした」「会議の議事録を自主的にまとめてメンバーに配信した」といった、他者や職場にプラスになるような行動は立派な「全員発揮のリーダーシップ行動」なのです。
そして、その行動の根源となるのが「自分らしさ」です。「相手のことを慮れる」「気がきく」といった自身の長所が行動に表れた時、リーダーシップ行動が生まれます。
つまり、「全員発揮のリーダーシップ」に必要なものは、役職でも権限でもカリスマ性でもなく、一人ひとりの持っている特性、すなわち「自分らしさ」を全面に出すことなのです。
「全員発揮のリーダーシップ」で組織はどう変わるのか?
ここまで述べてきたとおり、一人ひとりが持てる力を最大限に発揮するのが全員発揮のリーダーシップです。では、「全員発揮のリーダーシップ」は組織をどう変えていくのでしょうか。
上図が示す通り、「全員発揮のリーダーシップ」が機能し始めると、メンバー同士の良い相互影響が期待でき、エンゲージメント、すなわち会社に対する愛着心や仕事への思い入れの向上につながります。さらに、その効果が組織の全体に波及すると、チャレンジ精神やイノベーティブな気風が高まり、生産性の高い職場風土が醸成されていくのです。全員発揮のリーダーシップ行動は、一つひとつを見るとその効果は限定的かもしれませんが、それらの積み重ねが連鎖すると組織を変える大きな力を生み出します。
変革期にあるわが国の産業界において、「全員発揮のリーダーシップ」は今後、より多くの企業で必要とされるでしょう。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。