若手・中堅社員の仕事のやりがいを高め自律的な成長を促す「5つの原則」
2021年12月15日更新
ニューノーマルといわれるビジネス環境において、若手・中堅社員を、組織に「いないと困る」と思われるような存在へと育てるには? 松下幸之助の思想・哲学を現代の社会情勢に合わせて再解釈し、人が成長するための基本理念として体系化したフレームワーク「5つの原則」をもとに解説します。
働くことの意義が問い直されている
新型コロナウイルスの感染拡大は、社会の様相を一変させました。「人と人が集まって事をなす」という、これまでの常識が覆され、「リモート」や「非接触」がニューノーマルの時代におけるビジネスの常識になりつつあります。
また、「エッセンシャルワーカー(人々が日常生活を送るうえで欠かせない仕事を担っている人のこと)」や「ブルシットジョブ(クソどうでもいい仕事)」(※1)といった、聞き慣れない新しい概念が登場しました。
こうした概念が注目される背景には、世界的な危機に際し、なくてはならない仕事(医療・福祉、物流、食料品製造販売等)と、そうでない仕事の線引きが明確になり、働くことの意義が問い直されている、という事情があるように思われます。仕事(事業)を通じて社会の諸問題を解決してほしいという要請が、グローバル規模で高まっているのです。
こうした状況のもと、業績を伸ばしている企業が一定数存在する一方で、存続が難しい企業や、廃業・倒産に追い込まれた事業者が増えています。優勝劣敗ということばがあるように、「勝ち組」-「負け組」の格差が大きくなってきたという印象を受けます。
キーワードは「必要度」
今、私たちが直面している変化の特徴をひと言で表現すれば、「必要度」というキーワードを用いるのがもっとも適しているでしょう。産業界に焦点を当てると、社会からの求めを的確に察知し、それにうまく対応している事業や企業は成長できますが、そうでない企業は存続が困難になっています。つまり、社会において必要とされる度合い(=必要度)を上げることが企業に求められているのです。
そして、そのロジックは個人にも当てはまります。社会から必要とされるような仕事の進め方や、所属する組織から「いないと困る」と思われるような存在感を発揮すること、つまり自身の必要度を上げることが、すべてのビジネスパーソンに今、求められているのです。
※1 人類学者のデヴィッド・グレーバーは、無意味な仕事(クソどうでもいい仕事)の存在を仮定し、その社会的有害性について自著の中で分析している
個人としての「必要度」を上げるには?
では、個人としての必要度を上げるために、具体的に何をすればいいのでしょうか? その疑問に対する解を導き出すツールが「5つの原則」です。
「5つの原則」は、PHP研究所が2018年に発刊した管理職向けの通信ゼミナール『"強い現場をつくるリーダー"になるための5つの原則』の中で提示した概念です。もともと、強い現場をつくる(組織開発)ためのツールとして体系化した概念でしたが、「組織開発」と「能力開発」には共通点が多いことから、個人の成長のためのツールとしても活用できることがわかってきました。
つまり、「5つの原則」というフレームワークを通して自分自身を見つめ直してみると、[あるべき(ありたい)姿]と[現状]とのギャップが浮き彫りになり、さらにそのギャップを埋めるための[打ち手]が見えてきます。そして、その打ち手を愚直に実践し続けることで、個人としての[必要度]を上げることができるのです。
「5つの原則」とは?
「5つの原則」は、松下幸之助の思想・哲学を現代の社会情勢に合わせて再解釈し、人が成長するための基本理念として体系化したフレームワークです。
具体的には、次の5つの概念から構成されています。
【第1の原則】「使命を正しく認識すること」
【第2の原則】「素直な心になること」
【第3の原則】「人間観をもつこと」
【第4の原則】「自然の理法に従うこと」
【第5の原則】「自主責任意識をもつこと」
このフレームワークの全体像を俯瞰しながら、それぞれの概念の関係性と、個人の成長のストーリーについて見ていきましょう。
まず、【第1の原則】「使命を正しく認識すること」では、仕事や人生における自らのミッションについて考察します。いわば、自身のあるべき姿・なりたい姿を明確にするのです。そのうえで、【第2の原則】「素直な心になること」で、自身の現状を現実直視します。すると、【第1の原則】で明かになったあるべき姿・なりたい姿と、自身の現状との間にギャップが存在していることが見えてきます。そのギャップを埋めるための課題を設定するのが、【第3の原則】と【第4の原則】です。
【第3の原則】「人間観をもつこと」では、肯定的な人間観をもって自分の強みを知るとともに、【第4の原則】「自然の理法に従うこと」において、自らを成長させるための凡事徹底(当たり前のことを徹底して実践すること)レベルの課題を設定します。
そして、【第5の原則】「自主責任意識をもつこと」では、自らを成長させるために、他に依存することなく固い決意で課題に取り組む覚悟を固めていきます。
以上が「5つの原則」の全体像と、個々の概念が展開されていくストーリーです。
松下幸之助「道をひらく」
PHP研究所の創設者松下幸之助は、著書『道をひらく』(PHP研究所刊)の中で次のようなことばを遺しています(一部省略)。
自分には自分に与えられた道がある。ともかくもこの道を休まず歩むことである。自分だけしか歩めない道ではないか。自分だけに与えられているかけがえのないこの道ではないか。 それがたとえ遠い道のように思えても、休まず歩む姿からは必ず新たな道がひらけてくる。深い喜びも生まれてくる。
若手社員、中堅社員の方がたには、「5つの原則」のフレームワークで自分自身を見つめなおすことによって、与えられた道を見つけていただければと思います。そしてその道を歩みながら、プロフェッショナルとして成長し、社会と所属組織にとって「なくてはならない存在」に近づいていただきたいものです。
「5つの原則」を学ぶ通信教育を新規開講!
PHP研究所では、「5つの原則」をフレームワークとして自分自身を成長させる方法を学ぶ通信ゼミナールを、2022年4月に新規開講いたしました。ぜひ多くの方に、自分と社会のために自分を成長させるという大きな志をもって学習を進めていただければと存じます。
PHP通信ゼミナール
『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための「5つの原則」』
これからの時代を生きる私たちに必要な「学ぶ姿勢」「成長意欲」とは?
私たちを取り巻く環境は大きく変わり、今後の見通しもつきにくい状況です。そのような中であっても、私たちには、社会から必要とされるような仕事をすること、所属する組織から「いないと困る」と思われるような存在感を発揮すること、つまり自身の必要度を上げることが求められています。そのために大切なのは「自分のあるべき姿」と「現状」のギャップを知り、ギャップを埋めるための「手を打つ」ことです。本コースでは、5つのフレームワークを通して、自分自身を見つめ直し、成長のための一歩を踏み出すことができます。若手・中堅社員が「なくてはならない存在」へと成長するために、ご活用ください。
監修:PHP理念経営研究センター
執筆講師:的場正晃(PHP研究所人材開発企画部長)
受講対象:若手社員~中堅社員
受講期間:2カ月
教材構成:テキスト2冊・インターネット添削2回
特別受講料:14,300円(本体価格 13,000円)
※本記事は、PHP通信ゼミナール『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための「5つの原則」』のテキストより抜粋編集して制作いたしました。