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テレワーク時代に社員を成長させるための課題とは?

2022年8月 4日更新

テレワーク時代に社員を成長させるための課題とは?

テレワークの普及により働き方が大きく変わりました。こうした変化に対応し、成果を出すためには、どのように意識改革を行えばいいのでしょうか。新入・若手社員の方がたに知っておいてほしいテレワーク時代の課題と必要な考え方・働き方について解説します。

INDEX

テレワークとは何か?

2020年初頭から長く続いたコロナ禍で外出が制限されたのを契機に、ビジネスの現場ではなかば強制的に「テレワーク」の普及が進みました。
テレワークの是非も盛んに議論されてきましたが、おそらくコロナ禍が完全に終息したあとも、テレワークがなくなることはないでしょう。今後はテレワークとオフィスワークとを組み合わせた「新しい働き方」が一般的になっていくものと考えられます。改めて「テレワーク」について理解を深めていきましょう。

テレワークの目的とは?

実はテレワーク自体は1970年代にアメリカで生まれたものです。本来の目的は「コロナ対策」ではなく、オフィスワークの継続が困難な事情がある人でも仕事を続けられる「多様で柔軟な働き方の実現」でした。重要なのは働く場所云々ではなく、柔軟な働き方を推進しながら、しっかりと「仕事の成果を出していくこと」だといえます。

テレワークがもたらすメリット

テレワークは会社にとっても、そこで働く社員にとってもさまざまなメリットがあります。
「会社側」「社員側」それぞれの視点で見ていきましょう。

(1)会社にとってのメリット
・社員の人数分のデスクを用意する必要がないので、オフィスの縮小が可能となり、賃料や電力等のコストが削減できる
・子育てや介護などを理由に退職する社員が少なくなる
・遠隔地に住む人の雇用も可能となり、広く優秀な人材を集めやすくなる

(2)社員にとってのメリット
・仕事をする時間を自分で調整できるので、子育てや介護との両立がしやすくなる
・新型コロナウイルスなど、感染症の感染拡大リスクを軽減できる
・通勤時間が削減されるため、自己啓発・勉強などにより多くの時間を使えるようになる
(例:片道の通勤時間が1時間で、年間所定労働日数が246日の場合、1年間で492時間を有効活用することができる)
・通勤にともなう肉体的疲労が軽減できる

そのほか社会的に見れば、満員電車や交通渋滞を減らすことにもつながるでしょう。

テレワーク時代の課題と、求められる考え方とは

テレワークは様々なメリットがある一方で、課題を指摘されることもあります。テレワークを「使いこなす」ために必要な考え方を解説していきます。

テレワークのキーワードは「自立」

テレワークでよく指摘される課題点として、新入社員や若手社員にとっては、そばに同僚も先輩も上司もいないため、「何かわからないことがあったとき、すぐに誰かに尋ねることができない」ということがあります。お客様との電話対応においても、答えられない質問をされたとき、保留にして先輩や上司に相談できないため、一度電話を切って調べてから折り返さなければならなくなります。
しかしこれをデメリットだと考えるのではなく、「可能な限り自分の力で仕事を進める」という意識をもち、社員一人ひとりが「自立」する機会だと受け取るべきではないでしょうか。仕事における自立とは、「自分で自分の仕事の成果に責任を持つ」ということ。そしてそのために必要な知識やスキルを習得してもらうことが社員の成長につながるのです。

自分を成長させられる人が成果を出し続けられる

テレアポや訪問を中心とした「プッシュ型営業」で成果を出していた営業社員が、会社の方針でインターネット広告などを使って顧客からの問い合わせを待つ「プル型営業」に変わったとたんに成果があがらなくなることがあります。あるいは「プレーヤー」として成果を出していた社員が、「マネジャー」に昇格したとたんに評価を下げてしまうこともあります。これはその人たちが変化に対応できなかったために、成果があげられなくなってしまったともいえるでしょう。
変化が激しい現代において常に「成果が出せる人」とは、変化に対応して自分を変え、自分を成長させられる人です。テレワーク時代に入り、テレワークがもたらした変化に対応し、新しい知識やスキルを習得して成長できる人が、今後も成果を出し続けられるのです。

成果をあげるためには「土台」となるマインドが大切

ビジネスで成果をあげていくには、能力やスキルを伸ばすことも重要ですが、それ以上にメンタル・人間性・ものの見方・考え方といった人としての「土台」が大切であるといわれます。下の図をご覧ください。

アイスバーグモデル

これは「氷山」をモチーフにした「アイスバーグモデル」といわれるもので、「成果」という目に見えやすいものの下に、たくさんの重要な要素が隠れていることを表しています。この考え方によれば、「成果」の大きさは、潜在的な「能力・スキル」「振る舞い・習慣・行動」「意識・想い・人生哲学」という3つの土台の大きさに左右されるということです。なかでもカギとなるのがいちばん下の「意識・想い・人生哲学」(=マインド)です。マインドを豊かにしていくことが、ビジネスで成果を出していくうえで最も重要なポイントであるといっていいでしょう。

他責から自責へ

仕事がうまくいかない原因を自分の外に求める考え方を「他責」といい、成果が出ない原因は自分自身にあるとする考え方を「自責」といいますが、仕事で成果を出していくうえで欠かせないのは、他者のせいにせず、自分で反省し工夫する「自責」であるといえます。
特にテレワーク時代においては、周囲に上司も同僚もいない環境のもと、自分からアクションを起こさなければ仕事は前に進みません。テレワークを導入した会社の社員教育においては、自分で考え、自分で行動し、自分に原因を求め、自分で改善する意識を育てていく必要があります。そうして自分を律し、自分で行動を管理する「セルフマネジメント」ができる社員が、やがては成果をあげられるようになるのです。

「仕事の効率」を厳しく追求する

テレワークで働くうえでは、「仕事の効率を高めていくこと」が非常に重要です。かつて日本の多くの企業では、夜遅くまで残業をする人が高く評価される傾向がありました。これに対して近年は「働き方改革」が叫ばれるようになり、「何時間働いたか」ではなく、「限られた時間で成果を出す」ことが求められています。例えば自宅でテレワークをするのであれば、残業の概念すらなく、基本的には「成果」のみが評価の対象となるため、これまで以上に効率よく成果をあげなければならなくなったともいえます。
効率をアップするには、仕事における動作を「付加価値を生み出す『正味作業』」、「付加価値は生まないが必要な『付随作業』」、「仕事に不必要な『ムダ』」の3つに分ける方法が有効です。「付随作業」を減らすよう工夫し、「ムダ」が排除できれば、「正味作業」に集中してより成果をあげることにつながります。テレワークへの移行で働き方がガラリと変わったおかげで、それまで惰性や習慣でつい行っていたムダな動作をなくすチャンスが訪れたといえるでしょう。

変化するのが当たり前

トヨタ自動車には、「変化を日常にする」という合言葉があります。また、「3年間何も変えなければ企業は潰れる」という考え方もあるように、企業が進化・継続していくためには常に「変わり続けること」が不可欠です。コロナ禍によるテレワークの導入増加は、望んで始まったことではないかもしれません。しかし変化の重要性を考えれば、「変化を日常にする好機が来た」と前向きにとらえるべきではないでしょうか。猛スピードで発展し続けるデジタル技術を例に挙げるまでもなく、仕事のスキルやノウハウは常にアップデートし続けなければなりません。私たちが日々変化するのは当たり前であり、むしろ変化そのものがチャンスの拡大につながるのです。

「思い込み」を捨てて成果をあげる

古い「思い込み」が仕事の効率を低下させ、成果があがらない原因になっている可能性があります。例えば「飛び込み営業をした件数が多ければ多いほど売り上げがあがる」という思い込みがあったとします。かつての飛び込み営業には、訪問先の人に商品を知っていただいたり、顧客から新たな情報を得たりする意味合いがありました。しかし現在では、たいていの情報はインターネットで調べられますし、予定外の訪問で時間を使わされる飛び込み営業は敬遠される傾向があります。オフィスワークからテレワークへという大きな変化の中で、それまで気づかなかった種々の「思い込み」に気づき、より成果があがる方法に切り替えていきましょう。

(1)「期日前」に「自主的な期日」を設ける

ありがちな「思い込み」のひとつに、「仕事は期日に間に合えばいい」というものがあります。テレワークで時間の使い方の自由度が増した今、この考え方をアップデートしていくことが大切です。
例えば本当の締め切り日の前に「自主的な期日」を設定し、少し早めに仕上げる方法があります。例えば「本当の締め切りは●月●日だけれど、その数日前の●月▲日に仕上げよう」といった具合に自主的に期日を決めるのです。そうしていったん完成させたあと、じっくりと全体を見直す時間を確保すれば、仕事の完成度を大幅に高められるはずです。こうして毎回完成度の高い仕事を続ければ、必然的に成果も評価もあがっていきます。

(2)「対面」と「オンライン」の両方のメリットを生かす

仕事をするうえで、人と人が直接会うことはとても大切です。ある会社では、本社の間接部門の社員と地方の工場の現地社員をお互いに出張させ、直接会って話をするように仕向けたことがあります。すると、それまで電話やメールだけでは難しかったコミュニケーションが次第にスムーズになっていたとのことです。
だからといって、「直接会わなければ仕事の成果はあがらない」という「思い込み」は、一度考え直してみることをお勧めします。確かにオンラインのやり取りでは、対面と比べて非言語のコミュニケーションが取りにくくなる面があります。その一方で、「ビデオ通話」などを活用して商談を行えば、「往復の移動時間」がなくなるため、他の仕事や商談の時間が確保できます。それまで難しかった遠方の顧客開拓も可能になります。
「対面」にこだわりすぎず、「対面」と「オンライン」の両方のメリットを生かしながら、具体的な成果を出すことに力を注いでいきたいものです。

テレワーク時代に成果を生み出す仕事術

決められた時間の中で成果をあげるためには効率的な働き方をすることが不可欠です。ここでは実践的な働き方のコツをご紹介します。

ダンドリを徹底する

「仕事はダンドリで決まる」と昔からよくいわれます。ともすると時間管理が難しく、一人であたふたしてしまいがちなテレワークにおいて、ダンドリの重要性はさらに増しているといえます。テレワークを行う社員に対して、次のステップを踏んでダンドリを整えるよう指導すれば、より成果があがりやすくなるはずです。

<ステップ1>
複数の仕事を抱えている場合、ダンドリを頭の中だけで考えず、まずは「担当業務の名称」「所要時間」「締切り」「優先順位」などを一覧表に書き出します。これだけで、自分がどれだけの仕事を抱えているかが一目でわかるようになります。

<ステップ2>
ステップ1で書き出した一つひとつの仕事について、作業内容をさらに細分化し、それぞれ「所要時間」「締切り」「進める順番」をリストにまとめます。ひとつの仕事で、チームのメンバーへの依頼事項や外部発注などを含めたさまざまな作業を行う場合、リストを見ながら進めれば間違いが起こりにくくなります。

<ステップ3>
進め方をまとめたすべての担当案件について、重要度と緊急度を考え、優先順位をつけます。「重要で緊急の仕事」「重要だが緊急ではない仕事」「重要ではないが緊急の仕事」「重要でも緊急でもない仕事」の4種類に分ければ、まず何から手をつければいいのかがわかりやすくなります。

コミュニケーションツールを使い分ける

テレワークをスムーズに行い、しっかりと成果を出していくためには、同僚・顧客・種々の取引先等と、状況に適した様々なツールを使い、うまくコミュニケーションを取っていくことが肝要です。新入・若手社員対しては、各コミュニケーションツールのメリット・デメリットを以下のように伝え、「重要度・緊急度・情報量・情報の質・手間・スピード・履歴が残るかどうか」などを考慮し、最適なものを選んで用いてもらうように指導しましょう。

(1)オンラインミーティング(ビデオ通話)

[メリット]
・リアルタイムでやり取りできる
・相手の声や顔の表情がわかる
・遠隔地ともやり取りできる
・録画機能で履歴が残せる

[デメリット]
・日時の調整に手間がかかる
・動作や雰囲気など言葉以外の情報が読み取りにくい
・ネット環境やデバイスの準備が必要
・操作に慣れない人もいる

(2)メール

[メリット]
・過不足なく情報が伝えられる
・相手が好きなタイミングで読める
・オフィシャルな文章として履歴が残せる

[デメリット]
・相手がいつ読んだのかわからない
・送る側の文章力や相手の読解力によって誤解が生じる可能性がある
・感情などの細かいニュアンスが伝わりにくい

(3)ビジネスチャット・ショートメール

[メリット]
・メールよりも手軽にやり取りできる
・アイデアを出し合ったり報連相を行ったりするのに向いている

[デメリット]
・短いやり取りの連続になりやすく、履歴が探しにくい
・手軽なツールであるためオフィシャルなやり取りには不向き

事前準備でオンラインコミュニケーションを効率化

オンラインミーティングやオンラインでの商談を行う際には、事前の準備が非常に重要になります。例えばオンラインミーティングで報告する資料類は、先にメール等でメンバーに送信し、あらかじめ全員が目を通しておくようにすれば、話し合いを短時間で効率よく終わらせることができます。商談の場合も、商品紹介等の情報を先にお客様に送っておけば、限られた時間で商品の説明や質疑応答がしっかりと行えるはずです。

チームの力で成果をあげる

社員が自宅やシェアオフィスなどで一人でテレワークをしていると、朝から晩まで誰とも会わないことがよくあります。この状態が長く続くことで、だんだん「個人で仕事をしている」という感覚をもつ人も少なくないようです。こうなると、人によっては「自分さえ頑張ればいい」とか「自分の役割だけ果たせばいい」といった独りよがりの考え方に陥る場合があります。
しかし、実際には誰もが企業に所属し、働き方の一つの形としてテレワークを選択しているのであって、完全に個人で仕事をしているわけではありません。その場にいるのは一人でも、あくまでも「チームの一員としての個人」という立ち位置を忘れず、チームとして成果をあげていく意識を社員に浸透させることが大切です。

多様な働き方を尊重する

テレワークは「多様な働き方」を実現する方法でもあります。かつては女性社員の多くが結婚・出産・親の介護などのために退職していました。あるいは実家が遠方にあって、親の介護などのために地元に戻る場合も、その社員は退職を余儀なくされました。共働き夫婦の場合、どちらか一方が転勤すると、もう一方が退職せざるを得ないケースもありました。
しかし近年テレワークが普及したことで、そうした人たちも会社を辞めずに働ける可能性が高くなったのです。大事なのは、会社の側も、働く個人の意識としても、さまざまな事情を考慮して「多様な働き方」を受け入れる姿勢をもつことだといえるでしょう。

まとめ

繰り返しますが、テレワークは多様な働き方を実現するための「手段」に過ぎません。ところがややもすると、テレワークのツールの導入、働く環境の整備、テクニックの習得といった技術面が「目的化」し、いったい何のためにテレワークを活用しているのかという視点がずれてしまうことがあります。
新しい働き方であるテレワークには、「社員のマネジメントが機能しない」「評価制度がテレワークに適していない」といった課題もありますが、「人材の確保」や「オフィスのスリム化」などのメリットもあります。何より「通勤に費やしていた時間と体力」を「生産的に用いる」ことで、これまで以上に「大きな成果をあげていく」ことが期待されています。この「成果を生み出す」という真の目的達成を目指し、会社全体でテレワークを上手に使いこなしていきたいものです。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『テレワーク時代の「成果を生み出す仕事術」』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

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森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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