説得に活用する「意思決定マトリクス」
2016年4月14日更新
人は日常的に自分の行動をなんらかの基準で選択・決定しています。そのメカニズムが「意思決定マトリクス」です。吉田繁夫氏が解説します。
意思決定のメカニズム
今回は、意思決定のメカニズムという観点からお話します。
他者に何かを依頼したり、提案したしたとき、受け入れられたり、拒否されたりします。このとき相手は、その内容に対する自身のメリットとデメリットを考え、受け入れるか拒否するかを決めているという訳です。このしくみは、相手の考えを変えさせたり、提案を納得させたりする「説得」に活用できます。
論理的な意思決定については、相手が必ずしも論理的に考えるとは限りませんし、論理的な思考ができない相手も少なくないでしょう。そういう人でも、日常的に自分の行動をなんらかの基準で選択・決定しています。そのメカニズムが、次の「意思決定マトリクス」です。
「意思決定マトリクス」
「意思決定マトリクス」の図には4つの領域があります。これは、意思決定しようとする人が、そのために考えようとする情報を分ける枠組みです。表中のYMは、依頼や提案を受け入れたときのメリット、YDは同様に受け入れたときのデメリット、反対に、NMは拒否したときのメリット、NDは同じく拒否した時のデメリットです。
人が意思決定するときは、考えようとするさまざまな4つの領域の情報が、どのようなバランス(情報の数というよりも、情報の重要さ)になっているかで結論を決定しています。つまりYM+ND>NM+YD(受け入れるメリットと拒否するデメリットが、受け入れるデメリットと拒否するメリットよりも大きい)というときに、相手の依頼・提案を受け入れ、反対の場合には拒否します。したがって「説得」とは、YMとNDの情報を強めたり、増やしたりする働きかけといえます。
「説得」とは"得(メリット)を説く(説明する)"
相手が冷静、論理的でなく「思い込み」や「決めつけ」のような判断をしている、というのは、頭の中にわずかな情報しかなかったり、また強引に特定の情報に絞り込んでしまっていたりする状態です。このような不適切な意思決定も、人が行う意思決定の一つのかたちです。
このような状態にある相手を説得するときには、相手が漏らしている情報を指摘したり、情報に対する重要度判断が不適切であることを説明したり、あるいは新たな情報を提供したりすることで、相手の頭の中にある情報のバランスを変えさせます。特に、相手が"受け入れたときのメリット"が重要です。「説得」とは"得(メリット)を説く(説明する)"と書きますが、よく言ったものです。