成果につながる論理的なコーチングの進め方
2016年5月11日更新
成果につながるコーチングには、「論理的に考えさせる思考プロセス」と「部下の話を聞く力(アクティブ・リスニング)」が不可欠です。吉田繁夫氏の解説です。
「聞く」だけでなく「考えさせる」ことが必要
10数年前になるでしょうか、コーチングが部下指導のスキルとして、あたかも流行のように多くの企業に取り上げられたことがありました。しかし最近では、以前のように特筆されることはなくなったように感じられます。コーチングは世界的に認められた人材育成の手法なのですが、研修やトレーニングが不十分なままに実施されて、うまくいかなかったり、成果につながらなかったりというケースもあったようです。
何が不十分だったのかと言うと、コーチング研修では、部下の話を聞くことを強調しますが、それ以外にも大事なこともあるなかで「話を聞けばいい」という誤解が生まれてしまったようです。
たしかに"聞く態度"は人間関係をつくるために重要ですが、それだけでは不十分です。部下指導の目的は"部下の目標達成"ですから、本人の思考を手助けすることが必要です。つまり「聞く」だけではなく、「考えさせる」ことがなくてはなりません。
部下に考えさせる手段は「質問」
考えさせる手段は質問です。本人が適切に思考を展開できるような質問の組み立てには、下記のような問題解決の思考図を使います。
<問題解決手法の思考図に沿った質問のプロセス>
考えさせる質問を円滑に行うためには、図のような問題解決の思考図に沿った質問を予め準備しておくことが必要です。反対に「~すべき」「~が必要」というように、考えの内容そのものを断定してアドバイスや指導を行うことは、それが必要な場面もありますが、少なくとも本人に考えさせようとするときには逆効果です。同調や反発を生みやすく、他責的な発想になりやすいからです。検討のための情報を他人から受け取っても、本人が自ら深く考え、自ら決定することが、自身にとってのより適切な判断や、自発的な行動を生みます。
「考えさせる質問」に対して、スムーズに返答を引き出すスキルが「聞く力」です。この信頼関係をつくる力は、質問する→考えさせる→返答を引き出す、というやり取りをバックアップします。
このように「論理的に考えさせる思考プロセス」と「部下の話を聞く力(アクティブ・リスニング)」が、成果を出すコーチングには不可欠です。