論理思考力はすべてのビジネス・コンピテンシーの原点
2016年5月20日更新
論理思考力はすべてのビジネス・コンピテンシーの原点です。成果を出す人は、論理思考力の高い人といえるでしょう。では思考力はどうすれば身につけることができるのでしょうか。吉田繁夫氏のコラムです。
求められるコミュニケーション力
人材育成の目的は、自社の経営目標を達成するための能力確保です。経団連が2014年に発表した「新卒採用に関するアンケート」によれば、企業が選考にあたって重視した点(複数回答)としてトップにあがったのが、87%の企業があげた「コミュニケーション力」で、次いで65%の「主体性」でした。
ビジネスの成功は『自分が何をやるか』と『他者をどう巻き込むか』の二つの要素から成り立つものであることから、アンケートの結果は当然のものと思われます。
コミュニケーションによって周囲との連絡を図り、他者を巻き込んでいく力は、仕事の成果拡大に重要です。また主体性は、他者との関係において発揮されるという面を持つことから、これらは広義のコミュニケーション力といえます。
論理思考は、すべてのビジネス・パーソンに必要な能力
コミュニケーション力は、言語的能力と非言語的能力に分けられます。言語的能力とは話す力と聞く力、非言語的能力は、態度や表情、口調などです。ビジネスにおいては、情報や考えを正確に伝えていくための言語的能力が基本となり、非言語能力はそれをバックアップする位置づけとなります。
言語的能力の「話す」という行為は、自身の思考内容を伝えるということであり、「聞く」は、相手の思考内容を理解するということです。つまり、思考力が言語的能力の水準、さらにはビジネス・コミュニケーション力を決めてしてしまうといっても過言ではないでしょう。そのため、ビジネスにおける思考法のグローバル・スタンダードといえる論理思考は、すべてのビジネス・パーソンに必要な能力といえます。
論理的思考力を鍛えるには
では、論理思考力を鍛えるにはどうしたらいいのでしょうか?
いまや、論理思考研修を行っていない大企業は無いといっても過言ではないでしょう。しかし、なかなか社員の身につかないという状況も少なくないようです。それには、いくつかの原因があります。
原因の一つは、上司の非論理的な言動です。本人がせっかく論理的な思考で物事に対処しようとしても、上司が感覚的・情緒的な非論理的言動に終始すれば、部下はそれに順応してしまいます。
また、論理的な思考を高等数学のように難しく考えようとすることも障害になります。こうしたがる者は、思考本来の目的である「成果実現」を忘れてしまいがちです。思考は、成果を出すための手段なのです。
つまり「成果を出す人」というのは、思考力の高い人です。では、思考力の高さはどうやって手に入れられるのでしょうか。ケンカでも戦争でも、優れた武器を持つ方が有利です。思考の武器は、思考法です。
思考法で大事なのは、日常的に使えるよう、できるだけ単純化して、簡単に考えられることです。そのための道具が、本編で紹介してきた「思考図」です。論理思考を単純化した「思考図」という道具を持つか持たないかが、思考力の高さにつながり、ビジネスの成功に大きな影響を及ぼすわけです。
本編では、目的に応じていくつかの思考図を紹介してきました。当初は多少の研修も必要かと思いますが、日常的に使う図を決め組織内で共有することが、論理思考の共有につながり、それによって相互に思考力を高め合い、コミュニケーションの質も高め、仕事の成功確率を高めます。
思考力こそ、すべてのビジネス・コンピテンシーの原点なのです。