部下が報連相をしないとき、チェックしたい3つのポイント
2017年3月16日更新
「最近の若手社員は報告・連絡・相談ができない」ということが、上司の大きな悩みになっています。報連相を徹底させるには、上司が3つのハードルを乗り越えさせることが必要です。
若手社員が報連相をしない理由
企業の人材育成ご担当者から、あるいは現場の管理職の方から「最近の若手社員は報連相(報告・連絡・相談)ができない」という悩みをよくおうかがいします。なぜ報連相ができない、またはしないのでしょう。研修で若手社員の方と話をしてみると、次のような理由が浮かび上がってきます。
1)報連相が重要という認識がない
2)報連相は仕事と思っていない
3)話の途中で上司から次々とダメ出しをされた経験があり、自分の報連相は意味がないと思ってしまっている
4)報連相のやり方がわからない
5)タイミングがつかめない
6)上司に対する苦手意識がある
・眉間に皺を寄せる等、気難しい表情をしていて近づきにくい
・何かしながら聞く。忙しくて面倒だというような空気を出している
7)上司との人間関係ができていないので話しにくい
8)マイナス(ミス・失敗・仕事の遅れ等)の報告をしたら怒られるので怖い
これらの理由を分析してみると、若手社員に報連相をさせるには「意識」「スキル」「人間関係」の3つのハードルを乗り越えさせる必要があることがわかります。では、どう乗り越えさせるか、順に解説していきましょう。
意識のハードル
まず、若手社員に報連相が重要な仕事だと認識させることが必要です。営業活動や書類作り等の仕事と比較して報連相は大切な仕事だと思っていないから、若手社員は実行しないのです。
会社の仕事は自分一人で完結するものではありません。チームワークが必要です。また部下からの報告や連絡を受けてはじめて上司は次の判断ができますし、上司の報告をうけて経営者は会社全体の判断をします。ですから、現場からの若手社員の報告は、とても有益な情報です。このことを、若手社員にじっくりと話して聴かせましょう。そうすることで、若手社員は自分の存在価値を感じ、モチベーションも上がるでしょう。
また、上司や先輩に相談をすることは、自分自身のスキルアップにつながります。上司や先輩は豊富な経験を積んでいるので、問題解決のための的確なノウハウやスキルを若手社員に提供してくれます。自分のためにもなるということもあわせて理解させるといいでしょう。
スキルのハードル
若手社員が報連相をしない理由には、やり方そのものがわからないという理由があります。報連相の仕方を具体的に指導する機会を設けるとともに、上司のほうでも「報連相は部下から上司にするものだ」という固定観念を捨て、上司から部下への報連相を実践します。お手本を示すのです。これが若手社員にスキルを身につけさせる近道になります。正しい報連相は、上司と部下がお互いに実行し情報を共有することです。
人間関係のハードル
若手社員の報連相を聞いているうちに改善点や答えが浮かび、口をはさんでしまうという上司はいませんか? 上司と若手社員では知識や経験に差があるので、イライラする場面もあるでしょう。しかし、きちんと話を聞かない上司のもとでは、若手社員は育ちにくいものです。上司は部下を育成しなければなりません。そのために、「傾聴」は大切なスキルです。
また、若手社員が報告に来た時に、忙しいので聞くのが面倒だというような空気を出したり、眉間に皺を寄せたりといったことはありませんか? 報連相をしやすい上司は、部下の信頼を得る上司です。部下の方を向いてきちんと聴く。自然な表情で話しやすい雰囲気をつくり、心理的安心感を与える。日頃から話しやすい人間関係づくりをする。上司の立場である人は日頃からこうした努力を怠らないようにしましょう。
また、ミスに対して感情的にならずに冷静な対応をすることも大切です。たとえば、何か失敗をした時、若手社員は落ち込んでいるかもしれません。そこへ上司に叱責されると、さらに精神的に追い詰めてしまうことになります。その時には、恐怖心から気をつけて仕事をするかもしれませんが、上司を信頼できなくなり、退職を考えるといった事態になることもあります。課題をいかに解決するか、部下をどのように育成するか、成果をどのように出すかということを考え、結果を出すのが管理職の役割です。失敗した時よりも、むしろ、問題点やミスをしたことを報告しない時に厳しく注意するように心がけたいものです。
報連相は「ヒヤリ・ハット」発見の有効な手段
「ヒヤリ・ハットの法則」という言葉は聞いたことがある人も多いでしょう。ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ(1886年-1962年)が研究したもので、その名から「ハインリッヒの法則」ともいいます。ある工場で発生した労働災害5000件以上を統計学的に調査した結果、導き出されたものです。1件の大きな事故や災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件のヒヤリとしたりハッとしたりした事があるというものです。
この法則からおわかりでしょうが、「ヒヤリ・ハット」の時点で対応すれば、トラブルや軽妙な事故、そして重大な事故を防ぐことができます。正しくスムーズな報連相は、この「ヒヤリ・ハット」を見つけ出すために大変有効な手段です。
報連相を若手社員に徹底して指導する。上司も部下に率先して報連相を行なう。そうすることによって、報連相を大切にするという企業風土ができてしまうと、役立つことは多いはずです。
阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。