新入社員・若手社員の指導に悩む上司が増えている?
2017年4月28日更新
新入社員や若手社員の指導担当になったものの、ジェネレーションギャップを感じたり、離職やパワハラになるのを怖れるあまりに指導ができない。深刻に悩んで、ついにはうつ病を発症する上司が増えています。人材開発部門として、どのような対策を打てばいいでしょうか。
新入社員・若手社員を指導する上司の悲痛な叫び
「パワハラにあたるのではないかと思うと、指導しにくい」
「セクハラと言われそうで、異性への接し方が難しい。黙っているのが一番だと思う」
「少し厳しくすると、すぐ辞める」
「若手社員が辞めて、私のせいだと悩んだ」
新入社員、若手社員の指導にあたる上司が、深刻に悩み、うつ病を発症してしまうという問題が増えています。ゆとり教育世代の若手社員に対する指導に対応策を講じる企業は増えてきてはいますが、その陰で、実際に指導をしている上司が悩み苦しんでいる状況は見過ごされがちなのではないでしょうか。私自身も関与先企業の皆様から相談が増え、対策の必要性をひしひしと感じています。
一方、人事担当者や経営者からは、「新入社員の指導係になった上司がうつ病を発症したり、休職するケースが毎年起きています。会社としての対応に何か問題があるのでしょうか」「自分の部署に配属された新入社員を指導しない上司がいて困っています」という声を聞きます。
このように、実際に指導をしている上司は、若手社員の価値観や資質の変化に気づき、コミュニケーションや指導の難しさをひしひしと感じています。自分が若手社員だった時の経験も通用しません。ところが、直接指導をしないトップ(経営者層)は認識していないことが多いものです。そこで板挟みになって苦しんでいるのは、指導担当の上司です。
メンタリングで若手社員を指導
それでは、人材開発部門から、指導係となる上司に、どのような指導方法を伝えていけばいいでしょうか。
まず、知っておいてもらいたいのは、ゆとり教育世代の若手社員は精神的に弱く、まずは、よき相談相手、支援者となり寄り添いながら育成し、キャリアも一緒に考えてあげるという方法が必要だということ。このような指導法をメンタリングと言いますが、キャリアも一緒に考えることで、若手社員の定着率は高まりますので、会社にとってもメリットがあります。上司にとっても、指導力が高まる、自分もキャリアを改めて考える機会になる、コミュニケーション能力が高まるなど、よいことがたくさんあります。メンタリングの教育方法としては、研修の実施、セミナー参加、通信教育等があります。
指導係の上司を孤立させないためのアプローチ
また、指導係の上司を孤立させないためのアプローチとして、下のような方法があげられます。
上司に対するサポート体制を整える
人事担当者が若手社員に対して面談制度やアンケート、座談会等を設ける会社は増えていますが、上司に対しても同様の制度を設けるとよいでしょう。
ハラスメントの教育をする
パワハラ、セクハラ等ハラスメントを怖れて、何も言えない状態に陥っている上司が増えています。少しくらい厳しめであっても通常の指導でパワハラになることはありません。DVD視聴や研修で正しい知識を伝え、相談窓口も設けることが大切です。
部下が離職した際のフォロー
これが上司にとって最もショックなできごとです。部下が早期に離職した場合、自分のせいだと思い込んだり、「会社や周囲からそう思われているのではないだろうか」という恐れからいたたまれなくなるのです。今世の中で言われている"クラッシャー上司"も中にはいるでしょうが、多くの上司は精神的にまいってしまいます。このような上司にはカウンセリングをし、メンタルの回復をしてあげなければなりません。
カウンセリングは、外部のカウンセラーに頼る方が良いでしょう。人事担当者、上司のさらに上司、経営者など社内の人でもかまいませんが、その場合はカウンセリングの正しい知識と考え方とスキルを身につけなければなりません。身につけていない人がカウンセリングをすると、逆効果になり、メンタルが崩壊することもありえるからです。
正しい教育と安心感があってこそ、上司は業務の推進と部下指導に存分に能力を発揮できます。若手社員以上に、指導にあたる上司を貴重な人材として考えて教育し、会社としてサポートしていきましょう。
阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。