人事部が知っておくべき若手社員が退職するほんとうの理由
2017年5月19日更新
人手不足の時代、やっと採用し教育もした若手社員の早期退職は大きな痛手です。人事部としては、彼らが退職するほんとうの理由をつかんでおきたいものです。
過去の統計では、景気が回復すると早期の離職率はやや高くなっています。終身雇用制が崩壊した今だからこそ、将来展望をもてる定着率の高い会社づくりが求められています。
若者の本当の退職理由は「キャリア成長が望めない」
企業リサーチサイトVorkersの「平成生まれの退職理由ランキング2015年調査(複数回答)」では、新卒3年以内に退職した平成生まれの若手社会人の退職理由を次のように分析しています。
1位 キャリア成長が望めない 25.5%
2位 残業・拘束時間の長さ 24.4%
3位 仕事内容とのミスマッチ 19.8%
夢と希望を抱いて入社した会社で、「成長できない」「夢がない」「上司が尊敬できない」と感じると退職していくのでしょう。上司の姿に自分の将来を重ねているのかもしれません。
入社前と現実のギャップも退職の原因に
会社説明会やホームページでは、「『楽しく働く』がモットー」「技能に磨きがかかる」「プライベートと両立していきいき働けます」など、わくわくする言葉が踊っています。実はこれも現代の離職率を高めている1つの原因なのです。特に新卒者は、職場経験がないのでこれらのPRを見て夢のような職場像を描いて入社します。そして、3か月もすれば入社前に描いた夢の国と目の前の現実とのギャップに悩み始め、やがて失望へと変わり離職してしまうのです。これらのPRはうそではないのですが、どこの会社にも良い面とマイナス面はあります。マイナス面は必ずしも"悪いこと"ではないので、きちんと説明しておく方が離職を防げるといえます。
人材育成計画を整備し、ずっと働きたい会社づくりを
若手社員の早期離職防止のためには、人材育成計画をしっかり立て、社員に説明し、実践することをお勧めしています。初めて計画を立てるときには「面倒」「そんな教育費用は当社にはない」と思われるかもしれません。しかし、定年までの長期にわたる人材育成計画を策定することには、たくさんのメリットがあります。社内でできるものや、比較的安価なものもありますので、自社にあった内容で計画していきましょう。
人材育成計画を策定するメリットとして、次の6点が挙げられます。
1.離職が防止できる
・社員の会社への信頼度が高まる
・社員が安心できる
・離職しようと思っていたときに、留まる機会になる
2.将来への夢が持てる
3.採用時に自社のPRになる
※新卒者が入社を希望する条件の一つに、人材育成制度があることが挙げられている
4.社員のスキルアップが促進され、仕事の質や効率が向上する
5.尊敬される上司が増える
6.モチベーションアップになる
入社時、入社半年後、2年目、3年目、5年目、その後は各役職への昇格時などに様々な教育を受けられる機会を設けます。役職が付かなかった社員については、役職昇格者と同様か近い頻度で専門的な技能などの内容で、何か教育を受けられる機会を設けます。
セミナーに不定期に参加させる会社を多く見かけますが、きちんとした計画に基づく体制で実施する方が、社員が公平感を持つことができ、それぞれの目標もうまれてきます。私自身も、関係先の1年目の社員から「辞めたいと思っていましたが、まもなく研修があるのでそれまで我慢してみようと思いました」という話を聞いたことがあります。彼は数年を経た今でも同社に勤務しています。
人材育成の方法は一つではない
育成計画は、会社として「理念」や「求める社員像」を明確にし、社員の希望を考案しながら策定していきましょう。下に、人材育成・キャリアアップの方法を列記してみました。費用が高いと思われる順です。
1.外部講師に依頼する研修
2.外部セミナーへの参加
3.通信教育
4.検定試験の受講 ※勉学に使用する参考書と検定受講料を補助することも考える。
5.DVDの視聴 ※感想文を提出してもらう。
6.自社の社員が講師を務める研修や交流会
7.先輩の体験談の発表と先輩との交流会
8.自社全体の見学会や他部署の仕事体験
特に7.の先輩の体験談や交流会は好評です。新入社員が最初に悩む時期の入社3~10か月くらいの間に実施するのがよいでしょう。先輩のモチベーションやスキルアップにもなります。社歴、年齢も近いので、大いに励まされますし新入社員の良い目標になります。
人材育成の方法は一つではありません。上記を参考にして、自社の実情に合った方法をさがしてみるといいでしょう。
阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。