若手社員のやりがいと誇りを引き出すには?
2017年6月 9日更新
入社して2~3年目、職場や仕事に慣れてきた若手社員には、さらに仕事力を高めてレベルアップを目指してほしいものです。ところが、マンネリに陥って成長が止まってしまう人も見られ、それを放置すると、その後の成長に大きな差が出てしまうことがあります。どうしたら彼らのやりがいと誇りを引き出せるでしょうか。
最近の若手は気がきかない?
「最近の若手は気がきかない」。上司やベテラン社員から、そんな声を聞くことがあります。この「気がきく人」とは、心に余裕がある人、相手の立場に立てる人、周りの空気を読める人と言い換えることができるでしょう。また、「気がきく人」は、感情をコントロールし、思考をプラスに切り替えることも上手です。そして、若手社員が「気がきく行動」をとれるようになると、周りに信頼感を与え、上司や同僚からの支援を得ることにつながり、若手社員の成長は促進されていくのです。
それでは、若手社員に、どのようなことを意識させると「気がきく」ようになるのでしょうか。
その有効な方法の一つとして、「仕事の定義」について考えさせることをお勧めいたします。
仕事を定義する
私たちは日々、お客様に商品を通じて価値を提供するために仕事をしています。そして仕事には、一人ひとりの生き方や考え方が反映されます。
人は、自分が定義づけた通りの仕事をしています。ただし、同じ仕事であっても、人によってその定義の仕方は異なります。自分の仕事をどのように定義づけるかで、仕事への取り組み方、提供する価値が大きく変わるのです。
仕事の定義は、自分で決めることができます。もし今の仕事にやりがいが持てなければ、やりがいのある仕事の定義を考えさせる取り組みが有効です。私たち先輩社員も、自分の仕事をどのように定義づけて取り組んでいるか、再点検したいものです。
タクシーの運転手の事例
タクシーの運転手の事例を参考にして「仕事の定義」について考えてみましょう。皆さんはタクシーを利用したときに、運転手の応対の善し悪しに差があると感じませんか? その対応によって気分をよくしたり、反対に気分を害したりします。
タクシーに乗って行先を伝えると、無表情・無言で発進する、返事をしない、降りるときにお礼も言わない不愛想な運転手がいます。
その反対に「ご乗車ありがとうございます」とさわやかな挨拶をし、行先を伝えると「はい、かしこまりました」と笑顔で応えてくれる運転手もいます。
お客様の様子を見ながら、退屈そうだと察すると、さりげなく話しかけてくれる運転手もいます。そっとしてほしいオーラを放っているお客様には、静かな空間を提供します。降りるときは笑顔で目を合わせて「ありがとうございます。お忘れ物のございませんように。お気をつけていってらっしゃいませ」と、言葉を添えて送り出してくれます。
これらの応対の違いが何によるものかと考えたとき、それは運転手の「仕事の定義」の仕方に本質的な原因があると思うのです。
前者の運転手は、きっと「お客様を安全に目的地にお送りする」ことが自分の仕事だと考えているのでしょう。そこには感じよくお客様に接して、快適さを提供しようという意識はありません。そもそもお客様を「快適に送り届ける」ことが自分の仕事だという認識がないから、それが応対の仕方に出ているのでしょう。
一方、後者の運転手は、「お客様を安全に快適に目的地にお連れし、その後も穏やかな気持ちで過ごしていただく」ことを考えながらお客様と接しているのだろうと推察できます。そのためには、運転手自身が感情をコントロールして楽しく仕事に向き合い、お客様に乗車時間を快適に過ごしていただこうという意識が働きます。それが快適に過ごしていただく工夫につながり、気がきく行動に近づいていきます。
事務職の事例
もうひとつ事例を挙げます。事務職の仕事では、決められたことを決められたとおりにすることは大切です。しかし、ルーティンワークをこなすだけの人は、笑顔も出ないし、創意工夫もできないでしょう。
「事務の仕事を通して周りの役に立ち、生産性を上げてお客様や働く仲間に貢献し、関わる人を幸せにする」ことを自分の仕事の定義として取り組んでいる人は、笑顔が出て、どんどん仕事の質も高まっていくでしょう。
若手社員に、やりがいや誇りを持たせるために
仕事は、人を幸せにするためにするのです。人の役に立つことで、やりがいや誇りを感じることができます。これを、自分の仕事の定義にすることが重要です。
ですから、若手社員には「どのようにすれば周りの役に立てるのか」「どのようなことを期待されているのか」「期待に応えるために何ができるのか」「誇りを持って取り組むために何が必要なのか」といったことを、自分自身で、しっかりと考えるように促したいものです。
自分自身で考え、仕事を定義づけることができたら、自立的に成長していくはずです。若手の時期には、仕事の知識やスキル、テクニックを身に付けてもらうことも、もちろん大切ですが、それ以上に、仕事に対する考え方や、取り組む姿勢を自ら確立させることが欠かせません。人材育成において、その土台となるところをしっかり根づかせることで、若手社員の成長を促していきたいものです。
増谷淳子 (ますたに・じゅんこ)
株式会社ソフィアパートナーズ 代表取締役。日本航空(株)の客室乗務員として培ってきたおもてなしの心とコミュニケーション力を活かし、企業の人材教育企画、指導、育成に従事。2006年、株式会社ソフィアパートナーズ設立。「人間力教育」により「使命感」「気配り」「感謝の心」を育み、組織に貢献できる社員に導くことを使命とする。教育に関する問題解決のため、「ひと」のマインド&スキルアッププログラム提案、カスタマイズされた誠実な教育には定評があり、リピート依頼も多数。