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メンター制度が注目される理由は? 導入の手順や注意点を解説

2022年1月12日更新

メンター制度が注目される理由は? 導入の手順や注意点を解説

転職市場の活性化や少子化の影響で、人材不足が課題となっている企業は少なくありません。このような状況下で、多くの企業から注目を集めているのがメンター制度です。そこで今回は、メンター制度の概要や実施する手順、注意点を解説します。

INDEX

メンター制度の概要

経験豊かな先輩社員が、年齢の近い後輩社員、特に新入社員を支援する制度、これをメンター制度といいます。仕事の知識やスキルを教え、業務の課題解決を支援して個人の成長を促すことに加え、キャリアや職場、会社生活全般について、新入社員のよき相談相手になり、悩みを解消することが目的です。支援する側を「メンター」、支援を受ける側を「メンティ」と呼びます。
メンタリングとは、1990年代にアメリカから日本に入ってきた人材育成方法ですが、その語源は、古代ギリシャの長編叙事詩「オデュッセイア」に登場する、トロイ戦争に出陣したオデュッセウスの息子のよき指導者メントールの名に由来するといわれています。
メンター制度における活動は、定期的に面談を重ねることによって信頼関係を築き、メンティが抱える仕事上の問題を解決していくのが一般的です。そして、メンティが抱える問題を自身で解決できるように促します。メンターには利害関係にある同じ部署の先輩や直属の上司ではなく、異なる部署でメンティと年齢が近い社員が選ばれることが多くなっています。
実は、これまでにもそうしたことを無償の奉仕で行ってきた面倒見のよい先輩はいたのですが、昨今のビジネス事情や職場環境の変化とともに、そのような人は減ってきています。そこで近年、あらためてメンターの重要性が注目されるようになり、多くの企業が全社的に制度化して新入社員育成の一環として導入・活用を始めているのです。

エルダー制度とはどう違うのか

エルダー制度は、先輩社員が新入社員や若手社員を支援することです。このふたつの制度の大きな違いは、支援する範囲です。メンター制度が職場や業務の悩み、人間関係など、仕事上の精神的な悩みに重点を置いていることに対し、エルダー制度は業務に関する支援を行います。メンター制度で異なる部署の社員がメンターに選ばれることが多いというのは、そういった役割によるものです。

OJTとはどう違うのか

OJT(On the Job Training)は、先輩社員が後輩社員に対し、仕事をしながら仕事の知識やスキルを教えることです。メンター制度とOJTは、どちらも先輩社員による後輩社員の支援であることに違いはありませんが、支援する範囲が異なります。メンター制度は精神面を中心に支援しますが、OJTは業務に関する教育や支援が中心であるため、OJT担当者は、同じ部署から選ばれます。

参考記事:PHP人材開発「新入社員の育成計画を立てる5ステップ。教育効果を高めるポイントも紹介」

メンター制度が注目される3つの理由

メンター制度が注目される理由

近年、メンター制度を導入する企業が増加傾向にあります。多くの企業でメンター制度が注目されている理由・背景として、以下の3つが考えられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

・新入社員の離職防止
・先輩社員の成長、良い職場風土の醸成
・女性社員の活躍推進

1.新入社員の離職防止

転職市場が活発化している昨今、より良い条件の会社を求めて転職する社員も少なくありません。厚生労働省の調査(※1)によると、入社3年目以内で早期退職した社員は約3割になります。
退職者が会社を辞めた理由には「職場の人間関係がつらい」、「ストレスが多い」、「社風に馴染めない」、「上司や同僚に相談できない」などがあります。多くの企業は人材不足が課題となっているため、新入社員の離職防止は経営課題の一つともなっています。

また、近年は職場で仕事をするのが当たり前の時代ではなく、テレワークなど個人のライフスタイルに応じた働き方が可能になりました。コロナ禍で導入が一気に進み、東京都による2021年11月時点での調査(※2)では、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は57.2%となっています。
働き方の多様化は社員にとって良い面がある一方、対面で仕事ができないことに対するストレスや悩みを抱える新入社員が多いのも事実です。こうした状態を放置すると、離職に発展するケースも出てきます。
こうしたことから、新入社員の悩みや不安を解消し、早期離職を防止するために、メンター制度を導入する企業が少なくないのです。

※1:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
※2:東京都「テレワーク実施率調査結果」

2. 先輩社員の成長、良い職場風土の醸成

メンターに任命された先輩社員の成長を期待して、メンター制度を導入する企業も少なくありません。メンターが人間的に成長するのは、自分自身が手本として自律的な考え方と行動がとれるようになり、責任感が高まるからです。
会社としては、これからの時代に求められる支援型リーダーとして、将来の管理職候補が育成できるというメリットがあります。さらには、自立型社員が育つ人材育成風土が醸成され、社内のコミュニケーションがよくなり、明るい職場ができるということも期待できるでしょう。

3.女性社員の活躍推進

2015年の国連サミットで策定されたSDGsには、「ジェンダーの平等を実現しよう」といったジェンダー平等に関する項目があります。男女平等の世界を目指すべく、あらゆる形態の女性差別の撤廃や女性のリーダーシップ確保の実現が求められているのです。
SDGsで掲げられた目標は全17項目あり、日本を含む全世界の国が2030年までに目標の達成を目指さなければいけません。これを受けて、多くの企業はジェンダー平等に向けてメンター制度を活用し、女性社員の活躍推進を進めたいと考えています。

実際、女性社員の育成にメンター制度を導入して、女性社員のキャリアアップを支援している企業の成功事例も生まれてきています。各種の調査によると、女性社員には自分の能力をより厳しく評価する傾向があり、自身のスキルや能力の現状を把握できていないことが多いといわれます。メンター制度では、メンターの支援によって、自分の能力を正確に把握し、キャリアアップの目標をより具体的に設定することができます。また、メンターがロールモデルになるケースも多いでしょう。こうしたことが、女性社員の活躍推進に良い影響を与えるのです。

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メンター制度を導入する5つの手順

メンター制度を導入する手順

メンター制度を導入する手順は以下のとおりです。メンター制度を導入する際は、各部署に配慮して慎重に実施することが求められます。円滑に制度を導入するためのポイントも解説するため、準備を進める際の参考にしてください。

・目的や定量的な目標を明確化する
・制度運用のルールを決定する
・適切なメンターを選定する
・合同で事前研修を実施する
・運用後は問題点を吸い上げる

1.目的や定量的な目標を明確化する

メンター制度を導入する際は、実施する目的を明確に設定する必要があります。なぜなら、新入社員の早期退職や女性社員の活躍推進など企業によって抱える課題は異なるためです。目的を明確にしないままメンター制度を導入しても、期待する成果は得られません。
また、メンター制度を導入する目的を明らかにしたならば、定量的な目標を決めましょう。指標としてよく用いられるのは、新入社員の離職率や女性の就業年数です。この指標をもとにメンター制度導入後、どのように変化するのかを中長期的に確認していきます。

2.制度運用のルールを決定する

目的や目標が決まったならば、制度運用のルールを決めましょう。設定が必須のルールは、守秘義務と相談窓口、実施時間の3点です。守秘義務は、実施期間中に聞いた内容を許可なく第三者に口外しないことをルール化します。
メンター制度は精神面に重点を置いて新入社員や若手社員を支援するものであるため、ときには本人が誰にも知られたくないような個人的な悩みを打ち明けられることもあるでしょう。深い悩みを打ち明けるのはメンターへの信頼があってこそ成り立つものであるため、誰にも口外しないことをルール化することが大切です。
相談窓口は、双方で解決できない問題が発生した場合に相談できる窓口のことです。例えば、メンターとメンティの相性が悪く、精神的な支援をするのは不可能だと感じた場合などに利用されます。メンターとメンティの間で問題が起こったとしても、早期に発見して対応できる相談窓口の設定を行いましょう。
実施期間は、相談を受ける時間を就業時間内に行うのか、それとも就業時間外に行うのかをルール化することです。ただ、就業時間外に行うとメンターの残業が増えてしまうため、就業時間内に設定するのが一般的です。メンターのモチベーションが下がる要因になる場合もあるため注意してください。

3.適切なメンターを選定する

メンター制度を導入するにあたり、慎重に検討すべきなのがメンターの選定です。メンターとメンティの相性が悪いと、うまく問題を解決できずに終わってしまうこともあります。
メンターを選定する方法には、アサインメントとドラフト会議があります。アサインメントは人事担当者が人材の選定を行うことであり、ドラフト会議はメンターをメンティ自身に選んでもらう方法です。新入社員や若手社員の特性を確認し、どのような方法で人材を選定するかを決めましょう。

4.合同で事前研修を実施する

メンターを選定したならば、メンターとメンティの合同で事前研修を行います。事前研修では、メンター制度の概要や目的、実施するうえでのルールや心得を話しましょう。メンターとメンティは立場が異なるため、別々に事前研修を行ったとしても問題はありません。
合同で実施することは、お互いが顔を合わせる良い機会にもなります。ここで、メンターとメンティの相性を確認することもできるでしょう。また合同で事前研修を行えれば、準備をする社員の負担も減らせます。ただし、事前研修を実施する当日までに基本的なガイドラインを整備したり、マニュアルを作成したりすることが必要です。

5.運用開始後は問題点を吸い上げる

事前研修が終了したら、実際に運用を開始します。運用してからはじめのうちは、メンターとメンティの相性を重点的に確認しましょう。この時点でふたりの相性が悪そうならば、メンターをほかの社員に変えることを検討してください。
制度を導入してから3カ月ほど経過した時点で、メンターとメンティをそれぞれ集めて情報交換会を実施し、制度に改善すべき課題はないか意見を吸い上げます。何か課題があるようであれば、改善策を検討して今後に活かしましょう。

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メンターに求められる資質とスキル

先述のように、メンター制度の運用では、メンター選定が重要な要素になります。メンターに必要な資質やスキルにはさまざまなものがありますので、ここで主なものをご紹介します。

メンターに求められる主な資質

□面倒見がよく、親身になって相談にのることができる
□相手を受け入れることができる
□社会人として、企業人として自立している
□業務をスムーズに遂行できる
□会社の規律を守り、模範行動を示せる
□向上心があり、自己啓発にも積極的である
□コミュニケーション力に長けている
□指導力がある
□変化に気づく観察力がある
□将来へのビジョンをもっている

メンターに求められる主なスキル

□「聞き上手」になる傾聴力をもつ
□相手が話しやすくなる効果的な相づちを打つ
□「明確化」と「質問」を通じて相手の思いをくみとる
□相手が自分で考え、答えを出すように導く
□相手の心を開く質問をする
□相手から「引き出す」質問をする
□相手が自ら行動を修正するようにフィードバックする
□相手の意欲を引き出す「ほめ方」と「叱り方」を行う

上記のすべてを、最初から備えている人はいません。実際にメンタリングを行うなかで、一つひとつ身につけてもらうといいでしょう。

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メンター制度を導入する際の4つの注意点

メンター制度を導入する際の注意点

メンター制度は、効果が期待できる部分が大きい反面、注意すべき点もあります。導入する際には、次のようなことに気をつけるといいでしょう。

・メンター選定は慎重に行う
・双方のサポートを怠らない
・メンターを適切に評価する
・社員に制度の理解を深めてもらう

1.メンター選定は慎重に行う

メンター制度を成功させるには、メンターとメンティをうまくマッチングさせることが重要です。メンター制度は精神的な部分をサポートするものであるため、信頼関係が良好なものでなければ、面談を重ねたとしても意味のあるものにはなりません。
新人社員や若手社員にとって相談しやすい相手といった基準を設けてメンターを選定するのであれば、より当該社員と近い年齢の社員が適している可能性があります。少しがんばればメンターに近づけると思うことから、キャリア形成の手助けにもなるでしょう。逆に、直属の上司や10歳以上年齢が離れた先輩社員は、メンターの役割を担うのが難しいこともあります。一般的には、入社3~5年目の先輩が理想的といえるでしょう。とはいえ、人の相性は年齢だけでは図れないため、各人の適性を考慮して選ぶことが大切です。

2.双方のサポートを怠らない

メンター制度を実施したあとには、有効的に機能させるためにも、人事部門としてメンターとメンティのサポートを継続的に行いましょう。
メンターは通常業務に加え、新入社員や若手社員の支援を行う必要があります。精神的な部分をサポートするのは決して簡単なことではないため、うまく行かないこともあるはずです。真面目に取り組む社員であれば自分を責めてしまう場合もあるでしょう。一方、メンティは「この人とは相性が合わない」と、メンターに対する不信感などをいえずに悩んでいる可能性もあります。
制度を継続的かつ有効的に機能させるために、人事部門として、メンターとメンティ双方のサポートを継続的に行うことが大切です。

3.メンターを適切に評価する

メンターを評価する際は、通常業務だけではなく、メンターとしての貢献度も適切に評価しましょう。メンターに任命された社員に別途手当てを支給する方法もありますが、給与や賞与に反映させることでもモチベーションを上げることができます。また、メンターを経験することを、昇進の要件に加味することや、優秀なメンターを表彰する制度があるとさらによいでしょう。

4.社員に制度への理解を深めてもらう

メンター制度を導入した初年度は、役職者への説明会や管理職(上司)への説明会を開催しておくといいでしょう。また、メンター研修を実施する場合、メンター制度の説明・役割などの部分は、所属長も一緒に受講することをお勧めします。企業によっては、制度運用のルールを就業規則に明記しているという例もあります。こうした取り組みによって、社員の理解が深まり、会社全体で新入社員の成長を支援する雰囲気を醸成することにもつながります。
こうした職場風土があれば、メンターに任命された場合に、企業の成長に必要不可欠な業務であることを理解しつつメンティに接することができます。メンター制度の導入が企業にとって意味のあるものに変わるでしょう。

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まとめ

メンター制度は、経験豊富な先輩社員が、年齢の近い新入社員や若手社員に寄り添って、職場で働きやすいように支援する制度です。業務の支援をするエルダー制度やOJT制度と異なるのは、精神面に重点をおいてサポートする点であるといえます。
メンター制度の導入には、マニュアル作成やガイドラインの設定など事前準備に多くの時間と手間がかかるでしょう。しかしながら、メンター制度の導入によって、離職率の改善、若手社員の育成、職場風土の改善など、人材育成上のさまざまな課題解決につながります。
メンター制度の導入を検討している企業は、ここで紹介したポイントを参考にして、メンター制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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