新入社員の成長を止めないための上司の関わり方とは?
2023年6月26日更新
企業人を成長という観点から見ると、「いつまでも成長し続ける人」と「ある時点で成長が止まる人」の2種類に大別されます。どうすれば人は成長し続けることができるのか、特に新入社員の場合、成長に関わるために指導者(上司)は何をすればいいのか、本稿ではその方法論を考察いたします。
新入社員の時のように、成長し続けることの難しさ
入社直後の新入社員は、職場でのふるまい方や仕事の取り組み方等、わからないことばかりなので、日々とまどうことが多いでしょう。必然的に、上司・先輩からの指導に素直に耳を傾けますし、仕事上の「初体験」からたくさんの気づきを得ることができるので、日々の成長は目覚ましいものがあります。
ところが、その素直さを維持して成長し続ける人は意外と多くありません。企業研修の現場に身を置いて得られる肌感覚では、成長し続ける人は全体の1割程度しかいないように感じます。入社2~3年経って一通りの経験を積み、社会人とはどういうものか、仕事をどのようにして進めるか、ある程度理解できるようになると、学ぶことに対する素直さが希薄になってくるようです。その結果、成長が鈍化してしまうのです。
新入社員の成長を阻む「思考の固定化」
新入社員の成長が鈍化する原因として、学ぶことに対する素直さの欠如を指摘しました。学びに対する素直さがなくなると、ものの見方・考え方が固まってしまいます。人の成長を阻む最大の要因が、思考の固定化なのです。
「変化はコントロールできない。できることは、その先頭に立つことだけである」(※1)ということばの通り、世の中は絶えず変化しています。それにも関わらず、過去の成功体験や社会の常識、自身のもつ考えに固執し過ぎてしまうと、保守的なスタンスが強化され、コンフォートゾーン(今の能力で充分に対処できる、居心地のいい場所)にとどまって成長が止まるのです。
※1 出典:『チェンジリーダーの条件』P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社)
ものの見方を変える3つの方法
したがって、人の成長を促進するためには、ものの見方を変える必要があります。ものの見方を変えるとは具体的には、以下の3つを指します。
・視座を上げる
例)現在のポジションより1~2ランク上の立場にたったつもりで仕事を俯瞰してみる
・視野を広げる
例)自社・自部門のことだけでなく、社内外の関係者・組織の状況も想像して行動してみる
・視点を移す
例)自分目線で考えるだけでなく、相手の立場から自身の言動を客観視してみる
同じ景観でも、ビルの低層階から見るのと高層階から見るのとでは、見え方が大きく異なります。同じように、ものの見方が変わると、今まで見えなかったものが見えるようになって、新たな気づきや学習が起動されるのです。
上司が問いかけることの重要性
人の成長を支援するためには、相手の思考が固定化しないよう、適度な刺激を与える必要があります。そして、そのために有効なのが適切な問いかけです。
「もし君が課長だったら、どういう発想で仕事をする?」
「今回のミスが、関係する人たちにどのような影響を与えるだろうか?」
「なぜ提案が通らないのか、お客様の立場から考えると何か見えてこない?」
よき指導者は、「ものの見方を変えさせる人」です。部下や後輩を指導する立場の方には、問いを多用しながら相手の思考にゆさぶりをかけ、成長を後押ししていただきたいと思います。
参考記事:仕事での成長を阻む5つの要因とは?~若手社員へのメッセージ│PHP人材開発
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。