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「高度プロフェッショナル制度」とは?

「高度プロフェッショナル制度」とは?

(2018年5月18日更新)

 
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今、話題の「高度プロフェッショナル制度」とはどのような制度なのか、今までの労働時間制度とは何が違うのかについて解説します。

 

現在開会中の通常国会に提出された「働き方改革関連法案」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案)は、時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の制度化などを含むもので、政府が今国会において最重要と位置付ける法案です。

この法案において、特に注目されている改正事項の一つが「高度プロフェッショナル制度」の創設です。「脱時間給制度」、「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」などとも言われ、産業界では制度創設に歓迎の声がある一方、「残業代ゼロ法案」、「過労死促進法案」といった批判もあり、様々な議論を呼んでいます。

 

1.高度プロフェッショナル制度とは

高度プロフェッショナル制度とは、一定額以上の年収があり、時間で働くことがなじまない高度の専門的知識を必要とする業務に従事している労働者について、本人の同意や労使委員会の決議を要件に、労働基準法における労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金等の適用を除外する制度です。つまり、この制度が適用されると、「時間外労働」や「休日労働」といった概念そのものがなくなるため、これらの時間に対する割増賃金も発生しないことになります。労働基準法では、欠勤等働かなかった時間分の賃金を控除し、所定労働時間を超えて働いた時間分の賃金を追加で支払うというように、労働した時間に対して賃金を支払うのが基本ですが、高度プロフェッショナル制度が適用された場合、働いた時間に関係なく、仕事の成果に対して賃金を支払うことになります。

 

2.高度プロフェッショナル制度の対象となる業務

この制度の対象となるのは、次の①、②のいずれにも該当するものとして、厚生労働省令で定める業務です。

 

①高度の専門的知識等を必要とする業務

②業務の性質上、従事した時間と成果との関連性が高くない業務

 

具体的にどのような業務が該当するかは、法案成立後の厚生労働省令を待たなければなりませんが、2017年2月の労働政策審議会の建議によれば、対象業務の例として次の業務が挙げられています。

 

・金融商品の開発業務

・金融商品のディーリング業務

・アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)

・コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)

・研究開発業務

 

3.高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者

この制度を適用できる労働者は、1.の対象業務に就く者で、次の①、②の要件をいずれも満たすものとされています。

 

①書面等による合意に基づき、職務が明確に定められていること

②1年間当たりの賃金額が、基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として、厚生労働省令で定める額以上であること

 

上記②の基準年間平均給与額とは、毎月勤労統計の給与額を基礎として算定した労働者一人当たりの給与の平均額です。具体的な金額は厚生労働省令で定められますが、前述の建議では「1,075万円」、法案提出にあたり概要を説明した厚生労働省作成の資料では「少なくとも1,000万円以上」といった金額が示されており、法案成立後、これらに近い金額が定められるものと考えられます。

 

4.健康管理のための措置

高度プロフェッショナル制度を適用された労働者は、「時間外労働」「休日労働」といった概念がなくなるため、制限なく働くこととなり過重労働を招くおそれもあることから、次の①から④の健康管理のための措置を実施することが義務づけられることとされています。

 

 ①健康管理時間(対象労働者が事業場内にいた時間+事業場外にいた時間との合計)を把握すること

② 1年間を通じ104日以上かつ4週間を通じ4日以上の休日を与えること

③ 次の4つの措置のうち、いずれかを講じること

・始業から24時間以内に一定以上の休息時間を確保する勤務インターバル措置と、深夜労働回数を1ヵ月あたり一定の回数以下とする措置

・健康管理時間を1ヵ月または3ヵ月について一定の時間を超えない範囲とする措置

・1年に1回以上の継続した2週間(労働者が希望するときは継続1週間の休暇を2回)の休日を与える措置

・健康管理の状況その他が厚生労働省令で定める要件に該当する場合に、所定の項目を含む健康診断を実施すること

④健康管理時間の状況に応じた健康および福祉確保措置であって、有給休暇(年次有給休暇を除く)の付与、健康診断の実施等のうち、労使委員会で決議した措置の実施

 

5.労使委員会の決議と本人の同意

制度の導入にあたっては、労使委員会を設置した上で必要事項について決議をし、その内容を行政官庁に届け出るほか、適用される労働者本人の同意を書面等で得る必要があります。労使委員会の決議事項は次の通りです。

 

① 対象業務

② 対象労働者の範囲

③ 健康管理時間を把握すること

④ 1年を通じ104日以上かつ4週間を通じ4日以上の休日を就業規則等の定めにより与えること

⑤ 健康管理に関し、3.の③のうち実施する措置

⑥ 健康および福祉確保措置(3.の④)として実施する措置

⑦ 苦情処理に関する措置

⑧ 適用の同意をしなかった労働者に対して不利益な取扱いをしないこと

⑨ その他厚生労働省令で定める事項

 

6.高度プロフェッショナル制度は新しい働き方

柔軟な働き方を可能にし、生産性を向上させる労働時間制度として、これまでもフレックスタイム制度や裁量労働制などがありましたが、高度プロフェッショナル制度は、労働時間に関する規定そのものを適用除外とし、働くことを労働時間から切り離す初めての制度といってよいでしょう。働き方や仕事の内容が多様化・複雑化している現代において、高度プロフェッショナル制度は時代の要請で生まれた新しい働き方ともいえますが、一方で制度の運用を誤ると過重労働を誘発してしまう懸念もあります。実際の導入に当たっては、労使委員会で決議事項等について十分に議論することが求められるでしょう。

 

 

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藤原伸吾(ふじわら・しんご)

特定社会保険労務士。社会保険労務士法人ヒューマンテック経営研究所 代表社員。東京都社会保険労務士会理事。

M&Aにかかる人事労務面からの総合支援やIPO支援、トータル人事制度の企画・立案、諸規程の制改定など人事労務全般にわたるコンサルティングを手がけている。『基礎から学ぶ賃金・賞与・退職金の法律実務』(経営書院)、『人事労務管理 解決ハンドブック』(日本経済新聞出版社・共著)など著書多数。


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