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コンセプチュアルスキル(目利き力)の高め方

コンセプチュアルスキル(目利き力)の高め方

(2020年6月22日更新)

 
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変化の激しい時代にあって、組織のリーダーには「コンセプチュアル・スキル」がますます必要になってきました。
 

 

これからのリーダーに求められる「コンセプチュアルスキル」

変化の激しい時代にあって、マネジメントに求められる能力として「コンセプチュアルスキル」の重要性が増してきました。

コンセプチュアルスキルとは、カッツモデル(※1)を構成する3つのビジネススキルの一つですが、何が正しく何が間違っているのかを見極めたり、複数ある選択肢の中から最適なものを見抜いたり、あるいは複雑な問題の中から真の解決策を導き出したりする能力のことを指します。私たち日本人には、「目利き力」と表現したほうが馴染みやすいかもしれません。

カッツモデルにおいては、組織の中で上位階層に上がるほどコンセプチュアルスキルの重要性が増すと説明されています。重要な職責を担っているリーダーが、組織を間違った方向へ導かないためにコンセプチュアルスキルを高める必要に迫られていることは、至極当然のこととも言えるでしょう。

 

カッツモデル

 

※1 ハーバード・ビジネス・スクールのロバート・カッツ教授が提唱している「組織内の職務遂行において重要なビジネススキル」のことで、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルを図式化したもの

 

目利き力を支える「体験」、学びを引き出す「内省」

ではどうすればコンセプチュアルスキル、すなわち目利き力を高めることができるのでしょうか。この問いに対する絶対的な黄金律など存在しませんが、プロと言われる人たちの行動・思考パターンを分析してみると、彼らが豊富な体験から学びを引き出していることがわかります。たとえばベテランの医師は、短時間の問診で患者の状況を把握し、即座に処方箋を出します。こうした離れ業ができるのは、過去に数多くの症例に接してきた体験の積み重ねが、医師としての目利き力を高めているからです。こうした目利き力を高める理屈は医療以外の分野でも通じるものです。

しかし、ここで留意すべきは「体験しっ放し」にしないということです。体験には自分にとっての学びがたくさん埋め込まれていますが、見たり聞いたりするその瞬間には気付かないことが多いもの。従って、学びを引き出すためには「内省」によって体験を振り返る作業が求められるのです。内省とは、自分の考えや行動などを深く省みる行為のことであり、「反省」と同義の概念です。そして、実業界で成功した経営者たちの多くは、異口同音に内省の重要性について言及しています。

 

「今日一日をふりかえり、失敗や成功を見出し、その味をかみしめる。これが体験である。反省することなしにポカンと暮らしてしまえば、これは体験にならない」 松下幸之助(『物の見方 考え方』PHP研究所)

 

「つねに内省せよ。人格を磨くことを忘れるな」 稲盛和夫(『生き方』サンマーク出版)

 

「リーダーの行動を考えるときには、むしろ立ち止まることも重要なことだと思っています。」 元・スターバックスコーヒージャパン株式会社 CEO 岩田松雄氏(『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』サンマーク出版)

 

内省を通じて、自分の取った行動とその結果を振り返り、「なぜ、うまくいったのか(いかなかったのか)?」「そこから何を感じたのか?」などを自分の頭のなかで反芻・整理することで、新たな気づきや学びが引き出され、持論が形成されるのです。

 

問いかけによる人材育成がカギを握る

リーダーは、内省を通じて自身の目利き力やリーダーシップを高めると同時に、部下の内省をサポートする役割を負っていることを理解しなければいけません。内省を促すことはそれほど難しいことではありません。事あるごとに、次のような問いを状況に応じて、相手に投げかければいいのです。

「今回、成果を上げることができた要因は何だろう?」

「この失敗から何を学んだ?」

「この状況に対して、君ならどんな手を打つ?」

「3年後、どんなビジネスパーソンになりたい?」「それに対して現状はどう?」

継続的に問いかけられることによって人は徐々に成長します。なぜならば、内省モードに入って思考が深まり、より多くの学びや気づきを得られるからです。

ただし、他のスキルと違って目利き力の開発には時間がかかります。従って、企業内人材育成においても「持続的な学習」や「計画的なローテーション」、そして「コーチやメンターをつけることによる内省の支援」など、ある程度の長期ビジョンに基づいたスキル開発の機会と環境を整えることが重要でしょう。

 

昨今の経営を取り巻く環境は激しく変化し続け、変化するということ自体が常態化しつつあります。今後一層、過去の成功体験や常識が役立ちにくくなるからこそ、今まで見たことも聞いたこともない出来事に直面した時、その体験からしっかり学びを引き出し、それを他のメンバーと共有したいものです。そう考えるならば、激変する環境は新たな知恵や発想を生み出す源泉であり、目利き力を鍛え高めてくれる絶好の人材育成の機会とも言えるでしょう。

 

 

管理職教育

 



的場正晃 (まとば・まさあき)

PHP研究所人材開発企画部部長

1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。


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