セブン‐イレブン・ジャパン様 DVDビデオ教材(動画データ)活用事例
2022年9月26日更新
DVD教材の動画データを、自社のLMS(学習管理システム)に組み込んでオリジナルのeラーニングコンテンツを作成し、全社的な人材開発に取り組んでいる株式会社セブン‐イレブン・ジャパン様。動画教材の有効な活用方法や、同社の人材開発の考え方について、加藤裕之様(教育推進部 副総括マネジャー)にお話をうかがいました。
株式会社 セブン‐イレブン・ジャパン
1973年に設立し、コンビニエンスストアチェーンを全国展開。創業以来、「信頼と誠実」を社是とし、企業価値向上における源は「人財」にあるとして、新たなイノベーションに取り組む人財の育成に取り組んでいる。社員数8,930名、店舗数21,327店(2022年2月末時点)。
※部署名・役職名は、取材当時のものです。
INDEX
LMS(学習管理システム)で独自のeラーニングを作成。社員の学習機会が増加
――株式会社セブン‐イレブン・ジャパン様には、DVD『テレワーク時代の社会人、やっていいこと・悪いこと』、『上司のハラスメント3』、『上司と部下がペアで進める1on1』など、弊社のDVD教材を多数ご活用いただき、ありがとうございます。まずは、貴社eラーニングに動画教材を導入されたいきさつをお聞かせください。
加藤様 弊社は3,000名を越える「オペレーション・フィールド・カウンセラー(店舗経営相談員)」が日々、全国の店舗を訪問しています。そのためeラーニングは、社員に貸与している携帯PCでの受講が基本で、過去、通信環境の面で様々な制約があったのが実態です。しかし、現社長の永松が様々な通信環境の整備を進めると同時に、携帯PCに加えiPadを配布するなど、動画も制約なく使用できるようになったことから、eラーニングを積極的に活用する方針に変更しました。
――eラーニングを導入されたことで、社員教育はどのように変化しましたか。
加藤様 ひとつには「学習の体験価値」が高まったと考えています。近年のLMSは非常に進化しており、学習者に「記憶」させることを重視したコンテンツではなく、「理解」を重視したコンテンツをつくることができるようになりました。また、いつでもどこでも学べる体制が整ったことで、学習機会が圧倒的に増加しました。さらに、社員のニーズに応えるコンテンツを用意し、常時刷新していくことで、「自律的に学び続ける社員」の育成につながるようになったと感じています。
共感性の高いドラマ形式の動画教材を評価
――教育コンテンツを作成される際、PHP研究所の動画教材を採用していただいた理由についてお聞かせください。
加藤様 弊社では、動画を組み込んだ教育コンテンツを作成する際、その都度、複数の教材サンプルを視聴し、自社に最適なものを選ぶようにしています。基本的には、学習者にわかりやすいように「ショートドラマ形式」でつくられた動画教材を活用する場合が多い状況です。
動画教材の選定基準としては、「生々しい現場感があるかどうか」「内容に共感できるかどうか」などを重視しています。
その点、貴社の動画教材は、学習者への「動機づけ」の効果が高く、学習意欲が喚起される内容になっていると考えています。また、「1on1」や「フィードバック」に精通された立教大学の中原淳教授など、各界の第一人者が監修したコンテンツが豊富に用意されていることも、採用の大きな要因です。
「現場感」を重視し、自社に最適化した教育コンテンツを作成
――DVD教材の動画データを活用して、eラーニングコンテンツをオリジナルでつくられているとお聞きしていますが、具体的にはどのように作成されているのでしょうか。
加藤様 弊社では、貴社から購入した動画データを、そのままeラーニングに掲載するのではなく、必ず自社で作成するコンテンツと組み合わせて活用しています。なぜなら、「自社の社員に真に響くコンテンツは、自社でしか作成できない」という信念があるからです。教育コンテンツを作成するうえでは、その作成者が、「自社の現場」および「学習者である社員の情報」をよく知っていることが必要不可欠だと考えています。
具体的には、「学習者が何を知っていて、何を知らないのか」「どのようなことに関心(あるいは悩み)があるのか」「この教材を学習者が学ぶことによって、どのような反応を示すと考えられるのか」といったことです。
その意味で、弊社の教育部門のメンバーは、いずれも「オペレーション・フィールド・カウンセラー(店舗経営相談員)」の経験があるため、現場や学習者のことをよく知っています。もちろん教育部門に異動してからも、常に「現場との対話」を積極的に行い、どのような「学び」が学習者に共感してもらえるのかを探求し続けています。この部分が、教育コンテンツ作成のキーポイントといってもいいでしょう。
具体的なコンテンツづくりにおいては、学習者が短時間で集中して学べる「マイクロラーニング化」と、クイズ機能を活用した「情報のパーソナライズ化」を特に重視しています。「学習者が集中力を切らさない」ように工夫するだけでなく、「学習者が学習に没頭できる」工夫が大切だと感じています。
「全社員向け」「各部門向け」「任意視聴」の「3階建て構造」
――eラーニングコンテンツは、どのような形で社員の皆様に提供されていますか?
加藤様 弊社では現在、eラーニングコンテンツを内容によって分類し、「3階建て」の構造としています。「1階」は、「全社員が理解しておくべきコンテンツ」という位置づけです。次に「2階」には部門別の専門的な教材を集めており、「各部門の社員が理解しておくべきコンテンツ」としています。「3階」には、「社員や会社のニーズを踏まえたうえで作成したコンテンツ」を掲載しており、こちらは必須ではなく「任意」で学習すればよいことにしています。この「3階建て構造」により、計画的かつ体系的に学習機会を提供できるようになりました。
学習者にとっては、「自分が何をどういう順番で学べばいいのか」が把握しやすくなり、学習意欲が刺激されて「やらされ感」が薄れるなど、eラーニングに対する社員の印象は大きく変わりました。
また、「2階」の「部門別コンテンツ」をつくった際には、各部門の専門知識やノウハウが「見える化」しました。そのため、われわれ教育部門が、弊社の「知的資産」や「人的資産」の豊富さに改めて気づかされた面もあります。「3階」の「任意視聴コンテンツ」は、個人的な利用のほか、管理職が部下の育成のために一緒に視聴するなど、さまざまな使い方が社内で広がっているようです。
人財教育の役割は、社員の成長のきっかけをつくること
――自社オリジナルの教育コンテンツをつくるうえで、特に重視されているポイントがあればお聞かせください。
加藤様 弊社は、社員が、与えられた仕事をこなすだけの受け身の姿勢ではなく、仕事そのものに面白みを感じ、自ら能動的に考え、行動するようになることが非常に重要だと考えています。そうした社員が多くなればなるほど、組織が大きく成長していくことにつながるはずです。
その意味で、人財教育の役割は、社員の成長のきっかけをつくることだといえます。言い換えれば、「外発的な動機」によって消極的に働くのではなく、「内発的な動機」によっていきいきと働く人財を育てるということです。
そのために教育部門としては、さまざまな教育コンテンツに「思考的な面白さ」を感じてもらうことを大切にしています。「面白い」と感じることで、「もっと知りたい」「もっと成長したい」という気持ちが生まれ、成長すればするほど日々の業務がより面白くなり、ひいては自分の仕事や会社へのエンゲージメントも向上していくことでしょう。
リアリティのあるドラマで高い学習効果が得られた
――eラーニングコンテンツに関して、社員の皆様からはどのような反響がありましたか。
加藤様 貴社の動画教材については「臨場感のあるショートドラマがわかりやすい」という感想が多く寄せられています。場面設定や、登場人物の心の声などに非常にリアリティがあり、よい例と悪い例とを比較した映像を見ることで、自分たちが何をどう改善したらいいのかが理解しやすいのだと思います。
基礎的なビジネスマナーを学び直せるコンテンツも好評です。顧客と接していなかった部署から、顧客対応が必要となる部署に異動したときなど、個人の状況に応じてビジネスマナーが適宜復習できるようになりました。
管理職からは、部下育成のための「1on1」や「フィードバック」のコンテンツが特に喜ばれています。「ショートドラマでよい例と悪い例を学んだことで、実践のイメージをもつことができた」という声もありました。
――最後に、今後の社員教育の展開についてお聞かせください。
加藤様 「企業価値向上における源は人財にある」という当社の考え方は不変であり、今後も、社是である「信頼と誠実」を礎に、社員の育成・教育に取り組んでいくつもりです。
――本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
聞き手:PHP研究所 産業教育普及部