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自己認識のための2つのアプローチ

2023年11月 7日更新

自己認識のための2つのアプローチ

自分を知ることは、自らの成長に多大な影響を与えます。では、どうすれば、自分を知ること(自己認識)ができるのでしょうか。本稿では、自己認識を促進する具体的な取り組みを2つの観点から解説します。

INDEX

自己認識の重要性

昨今、リーダーシップ研究領域において、自己認識(Self -awareness)とリーダーシップ行動の相関性に関する議論が活発になってきました。
よく知られている学説には、コーネル大学の研究者による「能力の低い人が自らを高く評価する傾向がある」という主張(※1)や、「成果を上げる人ほど、自己認知能力が高い」という研究成果(※2)等があります。これらの研究が示唆しているのは、自己認識とその人の成長は密接な関係にあるということです。
こうした議論の高まりを背景に、リーダーシップを開発するためには自己認識力を高めなければならないという主張が喧伝されるようになってきました。

自己認識の難しさ

ところが、自己認識は「言うは易く 行うは難し」の代表例と言えるほど、実践して成果を上げるのが難しい営みです。
広く知られている「ジョハリの窓(※3)」が示すように、「他人は知っているけれど、自分は気づいていない窓」を誰もがもっています。仕事でなかなか成果が上がらないとか、人間関係がこじれがち、といった日常繰り返されるネガティブな事象は、自分で気づいていない自らの欠点が原因になっているのかもしれません。また逆に、自らの強み・長所を、他者はリスペクトしているのに自分が気づいていない、残念な状態にある人も少なくありません。
老子の教えに、「知人者智、自知者明」ということばがあります。このことばが意味しているのは、他人のことがわかる者は「智者」と言えるが、真の自分を知る者はそれよりもレベルの高い「明智の人」であるということです。古来より、自分を知ることは難しいけれど、その境地を追求し続けることが人生の究極の課題であると説かれてきたのです。

自己認識を促進する取り組み

真の自分を完全に理解するのは難しいかもしれませんが、理解度を上げることは可能です。自己認識を促進するには、2つの取り組みが有効です。

1.内省

内省とは、自分自身と向き合い、自分の考えや言動を振り返り、気づくことです。一日の終わりに、その日の自分の言動を振り返ることで、良かった点、反省点が見えてきます。
松下幸之助は、「自己観照」ということばで、自分を客観視することの重要性を説きました。

私は、自分というものを客観的に、いっぺん自分というものから外に出て行って、そして自分を観ると、自己観照をやると。(中略)自分がいっぺん外に出て、松下幸之助のやっていることを、自分が観察すると。だいたい、これだったらよかろうと、これはいかんなと、直さないかんと。そういう自己観照をやらないかんと、私は思っている

内省と自己観照。表現は異なりますが、このような自分と向き合う行為を継続していけば、メタ認知(※4)能力が高まり、自己認識が促進します。

2.フィードバック

前述の、ジョハリの窓の「他人は知っているけれど、自分は気づいていない窓」で言及したように、周囲の人は自分の強み・弱みを案外よく知っているものです。
その前提に立つなら、他者からのフィードバックを受ければ、写し鏡のように自分を客観視することができるようになるでしょう。時には、耳の痛い指摘があるかもしれませんが、自分を知るための必要な取り組みとして極力受け入れるのです。
また、自分から能動的にフィードバックを求めていく姿勢(フィードバックシーキング)も大切です。職場や家庭、知人関係の中に、自分にフィードバックをしてくれる「壁打ち相手」を日ごろから作っておくと、気づきがさらに促進するでしょう。

参考記事:フィードバックを進んで受ける部下は、なぜ成長するのか?│PHP人材開発

素直な心の重要性

自己認識を促進する2つの取り組みをご紹介しましたが、それらの前提は素直な心になることです。
思い込み、決めつけ、とらわれ、等の感情があると、自分を客観視しているつもりでも、都合のいいように見てしまいます。また、感情的な発想や判断が入りこんでしまうと、他者からのフィードバックを受け入れられない、あるいは歪曲してしまうということにつながりかねません。
柔軟で融通性のある心の状態、つまり素直な心になると、決めつけや、とらわれ、感情的な発想にじゃまされることなく、現実を直視できるようになり、自己認識が大きく前進するでしょう。

※1 ダニングクルーガー効果
※2 Church AH (1997) Managerial self-awareness in high-performing individuals in organizations.
※3 自己分析を通じて他者との関係を知り、コミュニケーションを向上させる方法を模索する心理学モデル。心理学者Joseph LuftとHarry Inghamが考案した
※4 自分が認知する物事を客観的に把握し、コントロールすること

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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