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なぜ組織の方針が浸透しないのか。その原因と対策

2024年6月 3日更新

なぜ組織の方針が浸透しないのか。その原因と対策

会社の大事にしている価値観や基本方針が社内で共有されていないという声をよく耳にします。なぜ、大切なメッセージが組織に浸透しないのか、その原因と対策を考察します。

INDEX

お題目化する経営方針

昨今の産業界におけるコンプライアンス意識の高まりや、金融市場におけるESG投資の動きなどを背景にして、経営理念やミッション、パーパス、ビジョンなどに再び注目が集まるようになりました。多くの企業で、経営理念の見直しやパーパスの制定などの取り組みがなされていますが、それらが組織に浸透しているケースは少ないようです。

ある企業では、役員会での数カ月の議論を経て新たな中期ビジョンを制定し、社長直々に全社員に説明する機会をもちました。ところが、それから1年近く経ってもなお、現場に浸透していないことが判明、社長は「あれだけの時間とエネルギーを投入してビジョンを作り、社員に直接説明したのに、どうして組織に浸透しないのか」と落胆してしまいました。

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伝える≠伝わる

ここで言及しておきたいのは、「伝える」と「伝わる」の違いです。「伝える」とは、情報を発信する側の行為を指しますが、「伝わる」は、その情報を受け止める側の状態を指します。

前述の企業の事例で言うと、社長は伝える行為をしたけれど、残念ながら社員の側には伝わる状態ができなかったということです。伝えているのに、伝わらない。こうしたパラドックスの状態は、多くの企業・組織で現実に起きているのではないでしょうか。

ストーリーからナラティブへ

なぜ、伝えているのに伝わらないのでしょうか。その問いに対するヒントを提供してくれるのが、昨今注目を集める「ナラティブ」(narrative)という概念です

ナラティブとは、「物語」「語り」という意味を持つことばで、相手視点の物語を重視することで課題達成を目指す概念です。一方、同じような意味を表わすことばに「ストーリー」(story)があります。ストーリーは、物語の内容や筋書きを指しますが、登場人物を中心に起承転結が展開され、そこには読み手・聞き手の存在は考慮されません。このように、ナラティブとストーリーは一見するとよく似ていますが、相手視点の発想があるか、否かという点が根本的な違いなのです。

議論の焦点を「なぜ、伝わらないのか」という命題に戻しましょう。ここまでの議論から垣間見えるように、大切なメッセージが伝わらない原因の多くが、相手視点の欠如にあると思われます。つまり、組織において、経営者やリーダーがストーリーを語ってはいるけれど、「このメッセージは、社員にどのように受け止められるだろうか」という相手視点に立ったナラティブが語られていないのです。

経営者に求められるLet'sのスタンス

相手の視点に立つには、「上意下達」の一方通行の関係だけでは限界があります。時には経営者の方から従業員の側に歩み寄り、じっくり話を聴いて相手が何を望んでいるかを理解する必要があるでしょう。このように、「上意下達」と「下意上達」のバランスを取りながら双方向の対話を繰り返すことで、経営者が伝えたいメッセージが人びとの心に伝わっていくのです。

これからの経営は、経営者がぐいぐい引っ張るというよりも、従業員とともに前進するというLet'sのスタンスに立ったほうが一体感が高まり、大切なメッセージも共有されやすくなるのではないでしょうか。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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