セクハラのボーダーラインを説明できますか?
2018年4月22日更新
職場のセクハラのボーダーラインは、今と昔では大きく変わってきています。どのような言動がセクハラになるのでしょうか。なぜ職場からなくならないのでしょうか。事例から学んでいきます。
依然として職場からなくならないセクハラ
職場で当たり前のように使われるようになった「セクハラ」という言葉。今や、意味を知らないという人はいないはずです。「セクハラは悪だ!」「職場にセクハラはあってはならない」と誰もが知っていますし、自分が当事者にならないように気を付けていることでしょう。
しかし、セクハラは依然として私たちの職場に存在しています。気をつけなければいけないという意識が高まっているにもかかわらず、減らないのです。その理由を考えていきましょう。
人によって違うセクハラの基準
厚生労働省では、セクハラを"職場において行なわれる労働者の意に反する行為"と説明しています。そして、行為によって被害者が労働条件などの不利益を受けたり、職場環境が害されることがあれば、セクハラと判断されます。
ここで注目すべきは、"労働者の意に反する行為"という表現です。何が意に反して、何が意に沿うのか......難しいですね。セクハラかどうかの判断基準は人の感覚によるところが大きいということがわかります。つまり、セクハラははっきりとしたボーダーラインがないのです。
もちろん、本人が嫌だと感じたからといって即セクハラになることはありません。実際には、客観的な視点やその他の周辺情報を集めて総合的に判断をします。しかし、ひとたび「セクハラだ」と思われてしまうと、真偽にかかわらず、仕事や人間関係に影響を及ぼしてしまうのです。
事例に学ぶ現代のセクハラ
ここで、いくつかの事例を見ていきましょう。
・職場で異性の若い社員に対し「〇〇ちゃん」「○○くん」と呼んだ
・未婚の女性に対し「結婚はまだ?」と質問した
・異性の部下に、社用携帯を使って仕事に関係ない内容で休日に連絡をした
・宴席で「女性なんだから、お酌をしたり、料理をとりわけてよ」と発言した
・男性の社員に対し「男のくせに根性がないなんて情けない」と発言した
・「今度、食事でもどう?」と異性の部下を誘った
・「彼氏いるの?」「彼女とはうまくいっている?」という発言をした
・「隣の部署の○○さん、スタイルが良くていい」と職場で発言をした
・「育児は女性がすること。男性は仕事をしていればいい」と育休取得希望の男性に言った
これらの例は、いずれも即セクハラになるものではありません。しかし、セクハラの芽になるものばかりです。繰り返し行なうなどの条件がそろえば、セクハラに発展してしまう可能性が高いのです。
この事例を見て、「こんなことで騒がなくても...」と感じた人もいるかもしれません。実際、一昔前なら職場のコミュニケーションの範疇ですませられたこともあるでしょう。しかし、現代ではこういった言動は、少なくとも"セクハラ疑惑"と受け取られてしまいます。
つまり、冒頭にも述べましたが、セクハラが私たちの職場に浸透した結果、良くも悪くもセクハラへの理解が進み、"セクハラと言ってもいいハードル"がグンと下がったのです。職場に無用なトラブルを生まないためには、疑惑と思われる言動も避けるようにするべきだと言えるでしょう。
改正セクハラ指針は、LGBTへの対応を明記
また、昨今、注目が高まっているLGBTについても理解を深めていきたいものです。平成29年1月に施行された改正指針では、LGBTなど性的マイノリティへの職場での性的言動や嫌がらせも、従来のセクハラ防止措置の枠組みの中で対応をするように企業に求めています。それにともない、就業規則の変更や、研修内容の見直しが必須となっているのです。つまりLGBTについての理解を深めていくことも、これからの時代のセクハラ対策の重要なポイントのひとつになります。
事例に学ぶDVD教材
PHP研究所では、社員教育用DVD『ケースで学ぶ セクシュアルハラスメント』を発刊しました。このDVDには、実際に職場で起こったセクハラ事例の再現ドラマが5ケース収録されています。実際の事例を見ることで、少なくとも同じ行為をしてはいけないと理解できるため、セクハラのボーダーラインの理解、ひいてはセクハラ教育において非常に効果があります。
セクハラをなくし、お互いを思いやる職場をつくるための社員教育教材として、ぜひご活用ください。
PHP研究所 企画制作部