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「働き方改革」で社員が幸せな会社はつくれるのか?

2019年4月26日更新

「働き方改革」で社員が幸せな会社はつくれるのか?

「働き方改革関連法」が2019年4月1日から順次施行されています。今回は、「社員が幸せな会社づくり」の視点から、「働き方改革」について考えてみたいと思います。

あらためて、いまなぜ「働き方改革」なのか?

すでに施行が始まっている「働き方改革関連法」ですが、そもそも「働き方改革」は日本の少子高齢化による「労働人口の減少」という将来的な問題を解消するための取り組みです。

日本の人口は総務省の統計によると、2008年の1億2800万人をピークに減少に転じ、このままでは2040年代の後半には日本の人口は1億人を下回るという推計も出ています。

当然、人口の減少に合わせて労働人口も減少しますし、そうなると国力も落ち、国内のインフラや社会保障、国民が安全安心な生活を送るための環境などを維持していくことが困難になります。

これは何も日本という国に限った話ではなく、少子高齢化が進む国であれば共通して抱える問題です。ではなぜ参考となるような海外の対策や事例が少ないのかというと、それは日本という国が世界的にも少子高齢化の最先進国だからです。

少子高齢化の先進国は日本・ドイツ・イタリアあたりが有名ですが、その3ヵ国の中でも日本はドイツ・イタリアに比べて、人口比率に対して子供の人口比率が最も少なく、労働人口の人口比率も最も少なく、高齢者の人口比率は最も多い、という三冠を達成しており、ドイツ・イタリアよりも頭一つ抜けているといった状態です。

さらに日本は、労働生産性が低いことでも有名です。G7(主要7ヵ国)の中では最下位、OECD(経済協力開発機構)加盟の35ヵ国でも平均以下の20位。少子高齢化によって労働人口が減少を続ける中、生産性まで低い。これは何とかしないと日本の将来が危ういということで、その対応策として考え出されたのが「働き方改革」ということになります。

「働き方改革」を成果につなげるために大切なこと

日本経済を良くして、国民の安全安心な生活を維持していくためには「労働人口の減少」と「低い生産性」という2つの問題を解決しなければなりません。そしてその対応策として考え出されたのが「働き方改革」となるわけですが、いざ法改正がなされ各企業での取り組みとなると、大切なことがスッポリと抜け落ち、やり方・手段ばかりが先行してしまっています。

ではこの「スッポリと抜け落ちてしまう大切なこと」とは何でしょうか。それは各企業が「働き方改革」に取り組む「自分たちなりの理由」です。

DVD働き方改革関連法

たとえば、「残業時間の規制」や「有給休暇の取得義務化」といったいくつかの具体的な取り組み項目が「働き方改革の項目概要」としてあげられていますが、企業の側が「自分たちの組織は、何のためにこれらに取り組むのか?」といったことをしっかりと組織内で考え、自分たちなりの実施理由(目的・動機)をしっかりと持つことが出来なければ、取り組みは形骸化されることでしょう。

取り組みの形骸化、これは何も今回の「働き方改革」に限ったことではなく、これまでにもCS(顧客満足)・ES(従業員満足)活動や、5S活動、QCサークル活動などでも、同じことが起こってきました。最近で言えば「プレミアムフライデー」も同様です。上手に活用し成果を上げている企業もあれば、実施はしたものの形骸化してしまい、いまいち成果に繋がっていない企業もあります。

トヨタ車販売ディーラーで顧客満足度全国№1、ネッツトヨタ南国の事例

成果を上げている企業の例をご紹介しましょう。トヨタ自動車の販売ディーラーで顧客満足度全国№1と言われているネッツトヨタ南国は、CS活動を「働く社員の幸せ(ES)のため」と言い切っています。

普通の企業では、売上アップのためにCSがあり、CSを上げるためにはESが必要、と考えて取り組みます。

しかし、ネッツトヨタ南国は違います。会社は働く社員の幸せのためにある、そのために利益が必要で、CSも社員の幸せのために必要、と考えているのです。お客様からの心からの「ありがとう」は、社員の働き甲斐に繋がっている、だからESのためにもCSが必要になるというのです。

そして、ここで大切なことは、その考えに基づく取り組みが「正しいか間違っているかではない」ということなのです。本当に大切なのは、「周囲ではなく、自分たちが心から『そうだっ!』と思える」か、どうかということです。

大切なのは「自分たちなりの取り組む理由」

経営の神様と言われた松下幸之助さんは、次のような言葉を残しておられます。

私は、何事によらず、それをなし遂げるために最も大切なことは、まずそのことを強く願うというか、心に期することだと思うのです。何としてもこれをなし遂げたい、なし遂げなければならないという強い思い、願いがあれば、事はもう半ば成ったといってもいい。そういうものがあれば、そのための手段、方法は必ず考え出されてくると思います。(『経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』松下幸之助・著 PHP文庫 109~110ページより)

幸之助さんの仰っておられる「強い願い」や「心に期する」ものとは、心から「これだっ!」と自分たちなりの理由(目的・動機)です。

「働き方改革」がスタートし、今後その取り組み方によってうまくいく企業と苦しむ企業が出てくるはずです。うまくいく企業に共通するのはきっと「自分たちなりの取り組む理由」をしっかりと持ち、工夫し続けた企業だけです。そして私は、その理由の最重要キーワードは「働く社員の幸せ」ではないかと考えています。

これから近い将来、「働き方改革」で成果を生み出した企業がクローズアップされ、そのやり方や手段が報道されるかもしれません。しかし、いくらその取り組みを表面的に真似ても、同様の成果が容易に得られることはないでしょう。そのような取り組み姿勢では、きっとうまくいくことはありません。

DVD管理職が知っておくべき働き方改革関連法

延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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